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神聖なる「みは」


October.28.2004





つづき
前回前回のコラムで、「みか」が特別な言葉であったことがわかったじゃろう。

かおる
日本古代の神聖な言葉が「か・き・こ・ひ・ま・み・め」の組み合わせで、
出来てるということはありえそうですけど、
甕棺(カメ棺)」に結び付けて邪馬台国が九州にあったかのように決め付けるのは強引でしょう〜?

つづき
いやいや、わしは、一つの可能性を示したまでじゃ。

ヤマトコトバを話していた古代人のいた土地が、
北九州じゃったのではないか?という、その程度に受け止めるがよい。

かおる
じゃあ、畿内には、ヤマトコトバを話していた古代人は居なかったのでしょうか?

つづき
居なくも無いじゃろうな。 部族は違えど、ある程度、共通語は話されていたであろう。
畿内は、東西の物資の流通でも弥生時代から盛んでおったからのお。

しかし、ヤマトコトバの発祥は、九州なのじゃ。
すでにわしは、
畿内にヤマトコトバが持ち込まれたという証拠を掴んでおる。

かおる
やはり、何かネタ……いえ、情報をお持ちのようですね? ぜひ教えてください!

つづき
うむ。 かおる君は、古代のヤマトコトバにおいて、「」と、「」が、対になるという話は、
もう腑に落ちたかな?
かおる
ええまあ、そのネタ……いえ、説には、こことかこことか
耳にタコが出来るくらい聞かされましたよ。
つづき
ならば、神聖で輝かしい「みか」に対応する語句が、
みは」であることは、説明するまでもなかろうな?
かおる
みは」? 「みは」から連想できる神聖な言葉なんてありましたっけ?

つづき
それは、ズバリ、


三輪山(みわやま)」じゃ。



かおる
ええ? 「みは」と、「みわ」じゃ、発音が違うじゃないですか?

つづき
現在でも、「」は、「」と、発音するじゃろう。
7世紀頃すでに一部の「」が、「」と発音が転じていてもおかしくない。


はつ(泊つ)
はて(果て)
わたる(渡る)
わた(海)

これらは、海を船で渡る言葉として関係しておる。


かおる
そうかな〜?
音韻変化って、そんなに単純ですか?
つづき
では、他にも例を出して、表にして吟味しようぞ。



「か」は、「は・わ」と関係しあう言葉


「か」=特別に神聖な語句
は・わ
「は」=一般的に気高い語句
意味

特別な意味を持たせる格助詞
は・わ
一般的な意味を持たせる係助詞
主語に付く助詞
みか
みき

「みか」=輝くもの・みかづき・みかぼし
「みか」=酒を入れる甕(かめ)
「みき」=お神酒
みは・みわ
みゐ

「みわ」=神酒
「みわもり」=酒盛り
「みゐ」は、寺の名前(三井寺)
輝かしいもの
酒を表すことば
みかやま
「みかやま」=三ヶ山・三箇山〜三笠山
みはやま・みわやま
「みはやま」=三輪山(みわやま)の古語
神々しいもの
みかはす
見交わす
みはる・みわたす
高みから、見張る・見渡す
目を使った動作
みかき
皇居・神社の御垣

「み・かき」という解釈は間違い
「みか・き(城)」
みはかし・みわく
腰に吊るす御佩刀

「み・はかし」という解釈は間違い
「みは・き」の転
「みはき」という語句が失われたのは、
後に「みわく(魅惑)」という言葉に置き換わったため
威厳を示すもの
やかす・やかた
「やか」は家のこと
やはす・やはた
「やはす」=和らげる
「やはた」=八幡
家があることで、
気持ちが和らぐ
かがし
「かかる・かがやく」=勢いの良いこと
やまかがし=襲い「かかる」蛇
はかばかし・わかわかし
「はかばかし・わかわかし」=しっかりしている様
「はかなし」=若(わか)くないこと
威勢の良い事
かぐ
「かぐやま」=香具山
芳しい、森の山
はぐ・わく
「はげやま」=禿山・森の無い山
「はく」=掃く・身に着ける
「はぐ」=剥がす
「わける」=草木を分けて開墾すること
「わけ」=若い
姿の様子
かくむ
「かくむ」=「囲む」の上代語
隠れる・籠
はぐむ・わぐむ
「はぐむ」=育てる
「わぐむ」=曲げて輪にする
形を整える
かざす
「かざす」=見せること
はさす・わしす
「はさす」=走らせること〜しはす(師走)
「わしす・わしる」=走ること
「わざ」=影響を与える出来事
動作をひけらかす
かづく
「かづく」=褒美をもらうこと
はづらふ・わづらふ
「はづらふ」=心が萎縮すること
「わづらふ」=困った気持ち
威勢の良くない事
かな
「奏でる」=演奏すること
「かなし(悲し)」は、「か・なし」
(威厳が無いこと)
はな・わな
「はな」=跳ねる・華やぐ・踊り出したいこと
「わな」=体が震えること
高揚した気持ち
かぶる
「被る」=責任を負うこと
はぶる・わびる
「葬る」=死ぬこと
「詫びる・侘しい」=思いわずらうこと
命を失うこと
かむ
「かむ」=噛む
はむ・わむ
「はむ」=食む
「わむ」=わめく
口を使った動作
かや
「かや」=茅
はや・わや
「はや」=生やし・林
「わや」=藁(わら)に転じた?
植物のこと
から
「から」=殻・空・体
はら・わら
「はら」=腹
「わら」=笑う
体のこと
かれ
「かれ」=彼
はれ・われ
「はれ」=人前で晴ればれしいこと
「わる(悪)」は相手を罵る言葉
人を指す言葉







つづき
いかがかな? どの語句も古い時代の語句ばかりじゃろう。
全体的に、「」から「」に言葉が転じていった様子がわかるのではないか?
かおる
すると、「みわやま(三輪山)」の対になる語句が「みかやま」と?
でも、「みかやま」って、あんまり聞いたことない山ですねえ……?
つづき
みかやま」は、現在では、あまりポピュラーな山ではなさそうじゃな。
埼玉の山奥や大阪府岸和田に「三ヶ山」があるのじゃが、もう一箇所、注目すべき「みかやま」がある。

その、「みかやま」は、九州・福岡県、三輪町の北、夜須町の一角にそびえておる「三箇山」じゃ。

かおる
あれ? その「三箇山」は、「さんがやま」と読むみたいですけど?

つづき
人の目はごまかせても、わしの目は、フシ穴ではないぞ!
三輪(みわ)町」とセットになっておる山なら、古代では「みかやま」と呼ばれていたはず!

三箇山」の漢字が当てられた後で、読みが変わってしまったのじゃろう。
そういう例はよくあることじゃ。
今でこそ、古い由緒も忘れられておるようじゃが、
三輪(みわ)の地にあり、「みか」と冠する三箇山は、
古代より神山と崇められておったことじゃろう!

三箇山(みかやま) には、
古代史の謎を解く重要な鍵が眠っておるぞよ!



かおる
ほほぅ?

つづき
古代に、大物主大神(大国主神)を祀った三輪山に「みわ」と名付けた人々は、
それ以前に「みかやま」を知っており、一段格を下げた意味で「みわやま」と名付けたのじゃろう。

九州でヤマトコトバを話していた民が、
畿内へ地名を持ち込んだに違いない。


かおる
つうか、結局、「九州→畿内」に地名が移ったと言う説を支持したいわけですね?
邪馬台国も九州にあったと?
つづき
いや、そこまで断言は出来ぬぞ?
地名を付けた人の移動があったのではないかという、あくまでも仮説じゃ!

けして、わしは、邪馬台国が九州にあったとは決め付けてはおらぬ!

かおる
でも、太字になってますよ?

つづき
おや?









付録・年表




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