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超古代の古文法(応用編)


August.27.2004





かおる
今回は、応用編ってことですか?

つづき
うむ、せっかく古代語句の姿が、一応ながらも明らかになったのじゃから、
古代日本の古文法についても、しっかり検証せねばとおもってな。
かおる
そ〜いえば、タイトルは「古文法」なのに、語源の話ばっかりでしたね?

つづき
このへんで明らかにしたように、古代では、「そ・と・の・も・よ・を」「て・へ」が、助詞として機能し、
か・さ・た・な・は・ま・や」が、代名詞として使われたのではないかと、推測しておるのじゃが。
かおる
代名詞、というのは、おかしくないですか?
たとえば、「私は〜」とか、「私が〜」と、言いますが、「は・がはどう考えても助詞でしょう?
つづき
では、そのあたりから、解説してゆこうぞ。
は・が」の例でもって、他の語句も、いかように、現代文法の助詞に変わっていったか、推測できるじゃろう。
かおる
」は、係助詞で、「」は、格助詞と呼ばれてますね。
種類は違いますが、どちらも主語に付いて、使われ方は似ています。


、います。
、います。



かおる
英語になおすと、どちらも「There is a cat.」となって、「は・が」の区別はできません。
でも、日本人の感覚からは、微妙にニュアンスが違うのを感じるでしょう。


、います。
、います。

There is a cat (英語にすると、同じ意味)




かおる
別の例にするなら、こんな感じです。


「昔々、おじいさんと、おばあさん、いました。
おじいさん、山へ柴刈りに行き、おばあさん、川へ洗濯に行きました。」


」は、未知の状態から既知の状況を説明すること。
」は、既知の状態から未知の状況を説明すること。

と、説明されることもあります。また、

「私、劇で主役をやります。」
「私、劇で主役をやります。」

と、言ったとすると、

」は、劇で、自分が主役をすることを強調すること。
」は、劇の中で主役という役割を演じることを述べただけ。

と、なり、明らかに「」は、強い意志を表しているようです。
」は、私に「主格」を与えるので、格助詞と呼ばれる由縁ですね。
」は、私を主語として、「係り」を説明しているだけです。

ほかに、場面によって意味あいが多少違ってくるようなのですが、
文法的に、意味合いを簡単に説明しようと研究が長くされていたようですが、
私は」「私が」の用法の違いについて、
はっきりした結論は、まだ出てないようですね?

つづき
いかん、いかんのお、そんな小難しいことを考えているようでは。

かおる
何がですか? 国語学者が、長年研究してきた文法的解釈に、間違いでも?

つづき
もっと、コトバが出来た頃の、古代人の気持ちで、コトバを紡ぎ、
無我の境地でコトバを感じとらねば、真理へは到達できぬぞ?

たとえば、こうじゃ。







はるか昔、弥生も終わろうとしていた騒乱の頃じゃった。
ある男が、ある村へとやってきた。
男は、西方より興りし大和の国の使いの者であった。
この村を、大和の支配下におくために、話し合いに来たのじゃった。
男は、村人に尋ねた。

「ムラオサ?」

すると、村人の中から一人の屈強な男が歩み出て、言った。

「わし、そう!」

使いの男は、尋ねた。

「おぬしムラオサ?」

「そう! わし、ムラオサ!」





さあ、ここで、「」と、「」の意味を考えてみよう。








かおる
なんだか、またネタに誘導しようとしてませんかあ?

つづき
何を言うか!
これは、実際に古代でおきたであろう、とっても解り易い模擬問答じゃぞ!
かおる
ん〜。 最初の「」は、係助詞で、誰がムラオサかを、探してるんですよね?
次の「」は、格助詞で、自分が、ムラオサであると強調して言ってるんですよね?
次の「」は、格助詞で、相手をムラオサだと、決定づけていて、
最後の「」は、係助詞で、自分をムラオサだと、単純に認めているだけだと、いうことですか?

つづき
ん〜。 おしい、おしいのお。 大事な事を忘れとりゃせんかね?

かおる
僕、何か、忘れてますか?

つづき
は・が(か)」は、古代では、もともとの意味は、代名詞なのじゃと言うたじゃろう!

かおる
それは、師匠が、勝手にそう決めてるだけじゃないですか〜?

つづき
よいから、黙って聞くがよい。
」は、一般的な人やモノを表す代名詞、「」は、特別なモノを表す代名詞なのじゃ。





「ムラオサ?」 (「」=普通の人・ものを示す通常の代名詞=村人の誰か?)

「わし、そう!」 (「」=尊称・格調高い代名詞・自分の身分を念押し=「ムラオサ」)

「おぬしムラオサ?」 (「」=ムラオサに対する念押し・尊称・格調高い代名詞)

「そう! わしムラオサ!」 (「」=素性が知れたので、通常の代名詞)






つづき
は・が」は、代名詞じゃから、次のようにも、言い換えられるぞよ。
というか、「は・が」が、使われる以前は、下のように言っていたはずじゃ。




「ムラオサ、?」 (「」=村人の誰か・一般的代名詞=「」)

「わし、ムラオサ(以下省略可能)!」 (「ムラオサ」=一番偉い人を表す尊称の代名詞=「」)

「おぬしムラオサ(以下省略可能)?」 (「ムラオサ」=念押しをする特別な代名詞=「」)

「そう! わし権座衛門(以下省略可能)!」 (「自分のこと」=通常の代名詞=)






つづき
ちょっと、言い回しが複雑になると、下のようになるわけじゃ。





「ムラオサ誰か?」 (「誰?」=「は?」同じ代名詞・どちらかを省略可能)

「わしムラオサなり!」 (「」=「ムラオサ」念押しした言い方)

「おぬしと申すか?」 (「」=「ムラオサ」に、言い換えられる)

「そう! わし、権座衛門!」 (尊称でない固有名前=「」に、言い換えられる)

「そう、?」 (「」敬意を配りつつ、疑りのある弱い言い方 <「」強い断定の言い方)

「そう! わし、!」 (「だ(誰)」>「」より、ちょっと限定的な近世の言い方)



「そう」=形容詞(沿う・話の流れに乗る)
「わし・ムラオサ・権座衛門・誰(だ)」=名詞・代名詞
「申す・なり」=動詞
「と」=格助詞(前後の文脈を、のように仲良く、に結びつける)
」=一般的なモノを表す代名詞
」=特別なモノを表す代名詞・疑問を含む
」=特別なモノを表す代名詞・断定的

これだけで、文章はできてしまう。








かおる
えええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜?????
な、なにがどうなってるんですか〜〜〜〜〜〜〜〜〜????????
つづき
たとえば、最初の猫の例で言うとじゃな。



、います。
、います。

猫、います。 (「は・が」は、猫の状態の代名詞なので省略可能)

There is a cat (英語にすると、同じ意味)



かおる
だ、だめですよ! 日本語で「は・が」は、意味が違うんだから、省略できませんよ!

つづき
では、コトバを言い換えればよい。 代名詞じゃから、どんな風にも言い換えられるのじゃぞ。
代名詞といっても、状態を代弁するゆえ、現代文法では「形容詞・副詞」と言ったほうが近いやも知れぬ。


、います。
、います。

普通に、います。
気高く、います。

There is a normal cat.
There is a noble cat.
(「は・が」を、形容詞として具体化させると、翻訳できる)



かおる
う、嘘だ嘘だ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!
助詞に関するハイレベルな問題を、へんてこな頓知で誤魔化してるだけなんだ〜〜〜〜!!!!
そうでしょ???
本気じゃないでしょ?????
ギャグですよね???ネタですよね?????ねっ??ねっ????

つづき
現実を受け入れられぬとは、不憫よのう。
じゃから、古代では、最初から複雑な文法など、ありゃせんと言うておろうが。


「私、劇で主役をやります。」
「私、劇で主役をやります。」

「私頑張って、劇で主役をやります。」
「私それなりに、劇で主役をやります。」


は・が」を、形容詞のように、語句の持つ意味に言い換えても、同じ文脈になるじゃろうて?



」は、一般的なモノを表す代名詞
」は、特別なモノを表す代名詞




かおる
ぜ、絶対に何かが、間違っている……。
あ、そうだ!! そもそも、「は・が」が代名詞だって前提がでっちあげの嘘っぱちじゃないですか!!
つづき
なぜ、嘘じゃと言えるのじゃ?

かおる
は・が」が代名詞だとか、教科書にも無いし、使われた例も知りません!

つづき
では、別の例を挙げておこうかの?
かしこ」という語句を知っておろうな?
かおる
か……かしこ、? ああ、ええ、「かしこ」ですね? 知ってますよ。
手紙のお終いに書いて、かしこまったりする言葉ですね。
つづき
かしこ」は、遠称代名詞でもある。 また、「かし」は、強く念を押す、という意味もある。
当然、「か(彼)」も、代名詞じゃ。 「」は、濁音化したものじゃな。
かおる
そこまでは、認めるとしても、じゃあ、「」は、なんですか?

つづき
」は、「はし(端)」の「」じゃ。
」とは言っても、末端(普通)を意味する、広い意味の代名詞なのじゃ。
かおる
はし(端)」? それが、代名詞ですか?

つづき
」のことを、「はしっこ」と、言うじゃろう? 「はしっこ」は、「下っ端の代名詞」じゃ。
かしこ」は、「かしこどころ」というように、「高貴な代名詞」なのじゃ。
もっと、語彙をしらべれば、以下の様な意味が見えてくるじゃろう。


」=一般的
」=特別
」=もっと特別






る」=張る・一面に水を張る(広範囲)
る」=離る・一定方向に離れる(限定)

た」=端・脇の方(はためいわく=従業員が迷惑)
た」=方・敬意を表す(親方=偉い人)

ねる」=上前をはねる(不定期)
ねる」=かねてから徴収する(定期的)

はは」=一般的な母親
かか」=自分の母親

む」=食む・一般的な食べ方
む」=噛む・特別なものを噛む/醸む・酒を作る

やる」=流行・一般的な店で流行る
よう」=通う・特定の店に通う

ば」=幅・一般的な幅
は」=川・特定の川幅

く」=掃く・大雑把に掃く
く」=書く・丁寧に書く

し」=話を端折ると言う
し」=話の念を押す

しっこ」=(端・普通・下っ端の代名詞)
しこ」=(かしこどころ・高貴な場所の代名詞)

う」=「方・方向・方角」(「あっちの、ほうだ」と言う)
」=「彼・処・代名詞」(「こうだ、こうしろ」と言う)



やっぱり「」は、通常の人やモノの状態の代名詞
やっぱり「」は、念押し・尊称・格調高い状態の代名詞



つづき
というわけで、「は・が」は、代名詞の意味合いで使われ始めたのが興りなのじゃ。
その後、文法がこなれ、現在の助詞の位置に落ち着いたというわけじゃな。
」は、「かみ」というように、「尊称」を意味するが、「すごい」という意味もあるのじゃ。
じゃから、「尊称」とは逆の意味でも、用いられることもあるのじゃぞ。
とても酷い」ということも表すことが出来るのじゃな。





会社員のAさんが、仕事にミスして、
上司に謝りにいきました。
上司は、怒って、こう嘆きました。

「おまえ…。」 「おまえ〜また、ミスした訳ね。」(いつものことさ、という感じ)
「おまえ?」 「おまえ〜ミスしたの?」(疑りながら念押し)
「おまえ!」 「おまえ〜ミスしたんだな!」(興奮して念押し)



」は、状況を示唆する代名詞でもあるので、
そこで文章が途切れても意味が通じる。
状況を説明する言葉が続くならば、「」を省略できる。



つづき
ちなみに、係助詞の「」も、他の助詞も、もとは、同じような用法じゃったと思われよう。
もともと、主語に付く助詞という意味合いも無く、
ひとつの単語の意味として文章の中に組み込まれていたものが、
後の時代になり、言い回しが固定され、やがて本来の意味が失われ、
文法上の決まり、助詞として機能しているように錯覚しているのじゃ。




」は、接頭語や接尾語にもなる
(言い回しが違うだけで、実際は、状態を表す代名詞・副詞)



なり」=「すごく、そうなってる」
よわし」=「すごく、よわい」
「さや」=「はっきり明瞭で、すごい」
(さ=醒める) (や=多い・たくさんの)
「しづ」=「おとなしくて、すごい」
(しつ=失敗・しつけ) (しづ・しづしづ=身分が低い・謙虚)



古代のヤマトコトバは、現在の文法に関係なく、
フレキシブルに語句が接続できるということ

つまり






「おぬし、ムラオサ?」 

「そう! わし、ムラオサ!」 





」「」は、
後ろの語句(ムラオサ)を装飾する、
接頭語」でもある

」=すごい・特別な・尊称の意味を添える
」=普通の・一般的な・特別ではない意味を添える




真の現代語訳



「おぬし、この村一番の「格」のあるムラオサ?」 
」は、相手に敬意を払い、尊重した言い方になる
」は、敬意を払いつつも、疑問を表している
」は、自分と相手を同格にして一般的な言い方になる

「そう! わし、村を統率する「係り」のムラオサ!」 
」は、自分の資格について、強く主張する言い方になる
」は、自信なさげな言い方になる
」は、一般化して、へりくだった言い方になる。










かおる
が・は」は、「接頭語」ですって〜〜〜??? そんなわけ、ないでしょ〜〜〜〜〜!!!

つづき
接頭語だの、接尾語だの、助詞だのという区別は、
古代には無かったということじゃ。
思い出してみよ。
日本語の最古の文献というのは、ただ、漢字が並んでいるだけであり、
助詞が前に付くか、後ろに付くか、繋がり方などは後世の人間が読みやすく決めたものじゃ。

かおる
そ、そんなこと……ないと、思います……けど……。

つづき
古文法を理解し、言葉の意味を静かに見つめ、ひとつひとつ紡いでいけば、
このように、さやかに古代人の心に触れることができるのじゃよ。
かおる
ち、違う……何かが違う……絶対に……。

つづき
ならば、これで、どうじゃ?





家の中で、猫の鳴き声がしました
そこで一言、なんと言いますか?


「猫、います」 

「猫、います」 


直感で、お答えください。









かおる
な、何を、おっしゃりたいのか、よくわかりません。

つづき
わからぬか? つまり、こういうことじゃ。
古代では、家の中に猫を見つけた時、このように言っていたじゃろう。





(猫が一般的だと思ったなら)
「猫、ふ」 
(は=一般的な) (ふ=からだ)
(はふ=這う・動物がうろつく)

「猫、いる」

(は・いる=はひる=這入る=普通に、猫はいる)

「猫、います」

(這い回って、うろついてる猫を示唆)


猫「」と言う時、あなたは、「猫、這い回る」と思った。






(猫が特別だと思ったなら)
「猫、ふ」
(か=特別な) (ふ=からだ)
(かふ=飼う・自分の動物を飼育する)

「猫、います」

(か・います=特別に、猫がいます)

「猫、います」

(猫がいます=飼い猫を示唆)


猫「」と言う時、あなたは、「猫、飼いたい」と思った。



あなたは、日本語を自分で話せていますか?
言霊に、操られてはいませんか?




かおる
こ、……こ、こんなの、ただの語呂合わせでしょ〜〜!!??

つづき
そうかな? 言葉というのは、誰も知らぬうちに人の心に根を張り、
2000年間、あらゆる日本人の生き様を支配してきたのじゃ。


これが、言霊の恐ろしさよ。






かおる
………………………………。

つづき
………………………………………………………。





















付録・年表




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