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超古代の古文法(その3)


August.20.2004





つづき
今宵も、貴殿を摩訶不思議なヤマトコトバの真理へと導かん。

かおる
てゆ〜か、誰なんですかそれ。

つづき
前回前々回と、動詞の活用の真実に迫ってきたわけじゃが……。

かおる
まだ、「カ行変格活用」の説明がされてませんよ?
どうして「来る」は、複雑な活用をするんでしょう?
つづき
うむ。 これも、「来る」の活用形だけ見ていても答えは出ぬじゃろう。
表にして考えてみようぞ。



謎のカ行変格活用

未然連用終止連体已然命令
上一段活用i+るi+るi+れi+よ着(き)・煮(に)
干(ひ)・見(み)
射(い)・居(ゐ)
上二段活用u+るu+れi+よ起く・落つ
悔ゆ・懲る
過ぐ・延ぶ
カ行変格活用く+

く+

く()

く()+

くる
く()+

くれ
く+(+)

こ(よ)
来る
下一段活用

下二段活用
くぇ()

くぇ()

く()ぇ(+る)

け(る)
く()ぇ+る

ける
く()ぇ+れ

けれ
くぇ()+よ

けよ
蹴(くぇ)
下二段活用u+るu+れe+よ出(い)づ・越ゆ
捨つ・攻む
寄す
四段活用書く・漕ぐ
知る・待つ
呼ぶ・読む

「来る」の活用形は、上二段活用、下一段活用の間にあり、
未然形、命令形が「o」母音に活用する




つづき
「来る」の連用形語尾は、「i」母音であるが、四段活用に近いと考えるよりも、上二段活用に近いはずじゃ。
なぜなら、言葉の語彙は古いものじゃし、已然形語尾「く」の前の母音「u」じゃからな。
ちょうど「蹴る」の活用も不規則になっていた時期と一致するじゃろう。
後は、未然形と、命令形語尾母音が「o」になっているだけなのじゃな。

かおる
やっぱり、「着る」「来る」「蹴る」が活用すると、言葉が紛らわしいので、
それぞれ、言い方を変えたんでしょうかね?


「着る」「来る」「蹴る」の活用

未然連用終止連体已然命令
上一段活用



i+る

きる
i+る

きる
i+れ

きれ
i+よ

きよ
着(き)・煮(に)
干(ひ)・見(み)
射(い)・居(ゐ)
カ行変格活用く+

く+

く()

く()+

くる
く()+

くれ
く+(+)

こ(よ)
来る
下一段活用

下二段活用
くぇ()

くぇ()

く()ぇ(+る)

け(る)
く()ぇ+る

ける
く()ぇ+れ

けれ
くぇ()+よ

けよ
蹴(くぇ)


つづき
それよりも、前回の「蹴る」のように、
「来る」の元の発音は、実は「」という発音じゃったとしたら、どうじゃね?
かおる
ほほぅ?



「来(こ)る」の活用

未然連用終止連体已然命令
上二段活用u+るu+れi+よ起く・落つ
悔ゆ・懲る
過ぐ・延ぶ
カ行変格活用こ+

こ+

こ+

こ+

くる
こ+

くれ
こ+(+)

こ(よ)
来(こ)る
〜繋がる語句む・ずて・けり・たりべしとき・ことば・ども


かおる
なるほど、そうすると、上二段活用に近い活用をしているように見えますね?
「?」の接続用母音が消失しているようですが、「こ」の音韻を保つために、そうしたのかも?
「o」という母音が、「来る」のためだけに湧いて出たと考えるよりも、
母音が省略されたと考えたほうが、説得力ありそうな。

つづき
うむ。 では、「来(こ)る」が上二段活用をしたとしよう。



「来(こ)る」が上二段活用をしたとき

未然連用終止連体已然命令
上二段活用u+るu+れi+よ起く・落つ
悔ゆ・懲る
過ぐ・延ぶ
上二段活用?こ+

こ+

こ+

こ+

くる
こ+

くれ
こ+

きよ
来(こ)る
カ行変格活用くるくれこ(よ)来る
〜繋がる語句む・ずて・けり・たりべしとき・ことば・ども


かおる
うわ〜。 「」の、上二段活用にすると、かなりしっくり来ますね?
命令形をゆっくり「こいよ」と読めば、「こよ」にも、「こい」にも、自然に繋がるわけか。
つづき
そうじゃとも。 後は、未然形の「こ+i」が余分じゃが、
」の語感を大事にしようと、未然形の状態で「」と言うことにしたのじゃろう。
き(来)ず」とも、「き(来)よ」とも、言ったりしなかったりしないこともないじゃろう。



真の「カ行変格活用」

未然連用終止連体已然命令
上二段活用u+るu+れi+よ起く・落つ・悔ゆ
懲る・過ぐ・延ぶ
カ行変格活用

(上二段活用の
未然・命令形の
」が薄れた)
こ+i?

こ+

こ+

こ+

くる
こ+

くれ
こ+i?(+)

こ(よ)
来(こ)
〜繋がる語句む・ずて・けり・たりべしとき・ことば・ども



つづき
これまでの、おさらいじゃ。
まずは、一般的な古典動詞活用表を元にしてみようぞ。


一般古典動詞活用表

未然連用終止連体已然命令
上一段活用i+るi+るi+れi+よ着(き)・煮(に)・干(ひ)・見(み)・射(い)・居(ゐ)
上二段活用u+るu+れi+よ起く・落つ・悔ゆ・懲る・過ぐ・延ぶ
カ行変格活用くるくれこ(よ)来(く)る
下一段活用けるけるけれけよ蹴(け)る
下二段活用u+るu+れe+よ出(い)づ・越ゆ・捨つ・攻む・寄す
サ行変格活用するすれせよ
ラ行変格活用あり
ナ行変格活用ぬるぬれ死ぬ・往(い)ぬ
四段活用書く・漕ぐ・知る・待つ・呼ぶ・読む
〜繋がる語句む・ずて・けり・たりべしとき・ことば・ども



続・真の活用表
(動詞の語尾に、母音が接続して活用変化を起こす)

未然連用終止連体已然命令
上一段活用+る+る+れ+よ着(き)・煮(に)
干(ひ)・見(み)
射(い)・居(ゐ)
上二段活用+る+れ+よ起く・落つ
悔ゆ・懲る
過ぐ・延ぶ
カ行変格活用

上二段活用
こ+i?

こ+

こ+

こ++る

くる
こ++れ

くれ
こ+i?(+よ)

こ(よ)
来(こ)
サ行変格活用す+

す+

す()

す()+る

する
す()+れ

すれ
す()+よ

せよ
下一段活用

下二段活用
くぇ()

くぇ()

く()ぇ(+る)

け(る)
く()ぇ+る

ける
く()ぇ+れ

けれ
くぇ()+よ

けよ
蹴(くぇ)
下二段活用+る+れ+よ出(い)づ・越ゆ
捨つ・攻む
寄す
ナ行変格活用ぬ+

ぬ+

ぬ()

ぬ()+る

ぬる
ぬ()+れ

ぬれ
ぬ+

死ぬ・往(い)ぬ
ラ行変格活用る+

る+

る+

る()

る+

る+

あり
四段活用書く・漕ぐ
知る・待つ
呼ぶ・読む
〜繋がる語句む・ずて・けり・たりべしとき・ことば・ども



つづき
語尾の母音変化の、注目する位置を変えれば、なお、解りやすいじゃろう。
大別して、3度の文法の変化があったようじゃな。


続々・真の活用表
(動詞の語尾に、母音が接続して活用変化を起こす)

古代基本活用形

一語の語句に「る」を付けて動詞化した
二語の語句は、「く・つ・ふ・む・ゆ」等、
「u」音で終わる語句を使って動詞とした
「i」音を加えて未然形とし、連用形との区別は薄かった
「e」音で、文を接続した
「す・る」は、助動詞として用法が発展し、「サ変・ラ変」の活用形を生む
「来(こ)」は、未然形を変化させる以前に作られた、古い言葉の名残
未然連用終止連体已然命令
古代接続用
補助母音
上一段活用i+る()i+る()i+れ()i+着(き)・煮(に)
干(ひ)・見(み)
射(い)・居(ゐ)
上二段活用u+る()u+れ()起く・落つ
悔ゆ・懲る
過ぐ・延ぶ
カ行変格活用

上二段活用
こ+i?

こ+

こ+

こ++る()

くる
こ++れ()

くれ
こ+i?(+)

こ(よ)
来(こ)
未然形と他の語句を「e」で接続した活用

語彙が増えたため、多様な語句を「e」で、接続する必要があった
「i」は、連用形として接続する時のみに使用した
それに伴い、命令形も「e」で接続するようになった
下二段活用の、連用形語尾の「e」は、一時的な変化か?
サ行変格活用す+

す+

す()

す+る()

する
す+れ()

すれ
す+

せよ
下一段活用

下二段活用
くぇ()

くぇ()

くぇ(+る())

け(る)
くぇ+る()

ける
くぇ+れ()

けれ
くぇ()+

けよ
蹴(くぇ)
下二段活用u+る()u+れ()出(い)づ・越ゆ
捨つ・攻む
寄す
未然形語尾を「a」母音とした活用

助動詞として「ラ変」の活用形が発達し、
未然形を「a」母音とした活用が一般化して四段活用に発展した
四段活用形式をもとに、動詞が自在に作られるようになり語彙が増えた
ラ変の終止形の「i」は接尾語(近代口語では取れる)
已然形の「れ」が取れ、命令形の「よ」が取れた
「ナ変」は、連体形に「る」が付いただけ
ナ行変格活用ぬ+

ぬ+

ぬ()

ぬ+る()

ぬる
ぬ+れ()

ぬれ
ぬ+

死ぬ・往(い)ぬ
ラ行変格活用る+

る+

る()+

る()

る+

る+

あり
四段活用書く・漕ぐ
知る・待つ
呼ぶ・読む
〜繋がる語句む・ずて・けり・たりべしとき・ことば・ども
意味母音は
未然にする
母音は接続
母音は古形
母音を
語頭に持つ
語句と接続
母音は、
一時的な
接続助詞?
母音は、
文を終止
母音を
使わずに
文を継続する
言い回し
母音は、
文を接続
」または、
動詞が母音で
文が終われば
命令の意味



かおる
へ〜。 だいぶ、活用形がスッキリしたようなしないような?

つづき
うぉっほん。 今宵も、むちゃんこ勉強になったじゃろう?

かおる
それで、この活用形の話は、続々……と続くのですか?

つづき
ぞくぞくするじゃろう?

かおる
突っ込む気にもなれません。






付録・年表




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