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超古代の古文法


August.17.2004





かおる
今回も、アヤシイ題目ですね〜。

つづき
かおる君は、文法について、どの程度知っておるかね?
動詞の活用形とかは、どうじゃ?
かおる
ええ、だいたい、大雑把ですが、こんな感じで。




古典動詞活用表

未然連用終止連体已然命令
四段活用書く・漕ぐ・知る・待つ・呼ぶ・読む
上二段活用u+るu+れi+よ起く・落つ・悔ゆ・懲る・過ぐ・延ぶ
下二段活用u+るu+れe+よ出(い)づ・越ゆ・捨つ・攻む・寄す
カ行変格活用くるくれこ(よ)来る
サ行変格活用するすれせよ
ナ行変格活用ぬるぬれ死ぬ・往(い)ぬ
ラ行変格活用あり
上一段活用i+るi+るi+れi+よ着(き)・煮(に)・干(ひ)・見(み)・射(い)・居(ゐ)
下一段活用けるけるけれけよ蹴る
〜繋がる語句む・ずて・けり・たりべしとき・ことば・ども



かおる
活用形の他、言い回しや音韻が変わる場合がありますね。
法則性はあるようですが、例外もあります。

書く」が、「書きたり→書いた」に変わるなら、
行く」も、「行きたり→行いた」になるはずが、「行った」になるのも、その一つですね。




音便変化例

音便なし押す→押したり→押した
貸す→貸したり→貸した
成す→成したり→成した
変化せず
イ音便書く→書きたり→書いた
聞く→聞きたり→聞いた
浮く→浮きたり→浮いた
変化前 
変化後 
ウ音便問ふ→問ひたり→問うた
請ふ→請ひたり→請うた
言ふ→言ひたり→言うた(促音にもなる)
変化前 
変化後 
促音便勝つ→勝ちたり→勝った
有る→有りたり→有った
食ふ→食ひたり→食った
変化前 ち・り・ひ
変化後 
撥音便死ぬ→死にたり→死んだ
呼ぶ→呼びたり→呼んだ
読む→読みたり→読んだ
変化前 に・び・み
変化後 
例外?ゆく(行く)→ゆきたり→ゆいた?→いった(行った)


「行く」が「行った」と音便変化する理由は知られていない



つづき
ふむ。 かおる君は、「行く」が「行った」と変化するのが、なぜか、解らぬというのじゃな?

かおる
ええ、まあ。 でも、言い回しは、方言や生活習慣で変わるものだと思いますけど。

つづき
話は変わるのじゃが、「ゆ行」の音便変化は無いのかの?
「消ゆ」は、「消ゆ→消( ゆ行の「い」 )たり→消えた」となって、「エ音便」のように思えるのじゃが。
かおる
「消ゆ」は、「ヤ行下二段活用」です。 「消ゆ→消えたり→消えた」で正しいのです。
 「エ音便」というものはありませんよ?
つづき
「ヤ行下二段活用」という文法があるから、「音便変化」ではないという、
けったいなルールを持ち出して説明するというのはいかがなものか?
かおる
持ち出すもなにも、昔から、そう決まってますよ。
ルールには従ってください!
つづき
さきの表のように、動詞の活用形は、細かく分類されておるわけじゃが、
所詮、記録に残された文書から、動詞の変化を類型的にまとめただけで、
古代人が言霊として込めた、ヤマトコトバの本当の意味を表しておらぬのではないか? と、わしは思う。
動詞の、状況によって変化する音には、どのような意味が込められておったのじゃろうか?
同じ「か」を語幹とする動詞でも、語尾に「つ・む・る」と助動詞が付くことで、
「勝つ」「噛む」「狩る」と意味が変わるのは何故じゃろうか? 
なぜ、「勝つ」は「勝る」とか「勝ぬ」と、変化して言わないのじゃろうか?
「勝つ」の連用形は、何故「勝ち」なのか? 「勝め」ではないのか?
不思議に思わぬか?

かおる
さあ? そういう習い方はしませんでしたねえ。
語幹や活用語尾の変化の仕方に、何か意味がありそうだと、推量で憶測しても学問とは呼べませんし。
つづき
国語の文法を探る方法論は、これでよいのじゃろうか?

かおる
何がですか?

つづき
動詞は、活用にともない、助動詞の語尾の音が変わったり、音便変化をおこすというが、
それなぜか? 活用形がなぜあるのか? それは、語幹に続く単語が影響しているのではないか?
「勝つ」の連用形が「勝ち」ならば、その後に続く「ぬ」や「たり」といった語句に、
何か秘密があるに違いない!

かおる
「たり」でしたら、「て」(接続助詞)または完了の助動詞「つ」の連用形+「あり」(動詞)の転ですね。
「けり」は、「く(来)」(カ変動詞)の連用形「き」または過去の助動詞「き」+「あり」(ラ変動詞)の転です。
「てあり→たり」「きあり→けり」というふうに、変化したんですよ。 何か?

つづき
では、古代の人々は、どういうつもりで、
「て」(接続助詞)または完了の助動詞「つ」の連用形+「あり」(動詞)の「てあり」が転じた「たり」や、
「く(来)」(カ変動詞)の連用形「き」または過去の助動詞「き」+「あり」(ラ変動詞)の「きあり」が転じた「けり」を、
文章の語尾に付けたのじゃろうの?

かおる
そんなの知りませんよ。

つづき
その理由を吟味せずして、活用形をいくら暗記をしても、言葉の真の意味には迫れぬじゃろう。
例えば、「すぎていった」という語句。
これに注目し、語源を探ってゆくと、実に巧妙なヤマトコトバの仕組みや、
古代人の言葉に込めた意味がありありと見えてくるのじゃ。




「すぎていった」の語源を探る表
(語句に母音が連続した場合は、後の母音が優勢となり、語尾が変化する)

動作時間備考
すぐ
(過ぎている)
いつ
(何時)
古代基本語句
すぐ
(過ぐ)
おる
(降る)
いつ
(何時)
ある
(生る)
「おる」「ある」が付随
「す・く・つ・る」は基本動詞
「a・e・o」は補助母音
すぐ+o+る

すごる

すごす
いつ+a+る

いたる(至る)

いたす
すごす+いたす+i

すごしたし

「すごる」は「すごろく」の語源か?
すぐいつある「すぐ・ある」に「i」が付随
すぐいる
(入る・移動する)
いつあり
(有り)
「i」は、「いる」「あり」と造語し、
存在の語彙になる

「すぐ+i」=「すぎ(杉)」か?
すぐ+いる=すぎる(過ぎる)
いつ+ある=いたる(至る)
すぐ+いつ=すぎつ
すぎつ+ある=すぎたる
すぎり
いたり
すぎち
すぎたり
語尾の「i」は、
文脈を過去形にする
すぐいついる
おる
いつe+hある動作に「いつ(何時)」の概念が付随
「e」「h」が付随
「h」は、「ふ」と同義で、
「命あるもの」を意味する
いていてはるi+つ+e+ふ+a+る=
「いてはる」は、京都方言
「て」=語句をつなぐ
(接続助詞)
「e」「h」が逆並びになると、
「へ」=方向性を示す
(格助詞)
すぎていてはり「すぎていて」の語源に要注意!
(過ぎる時間を強調)
「はり」は京都方言
すぐ+いて+いる=過ぎている
すぐ+いて+おる=過ぎておる

(過ぐ+時間+移動)
いたる
すぎたる
すぐ+いてはる
(すぎてはる)

(過ぐ+時間+有る)
いたり
すぎたり
すぎてはり
現代東日本語進行形
「すぎてはり」は京都方言
「は」は、人への尊称
「過ぎる」の意味は、
「(行為に)入り過ぎること」
(時間ではない)

「過ぎている」の意味は、
「動作+時間が経つこと」
「いたる・いてはる」の意味は、
「時間の経つこと」
(動作ではない)

「すぎたる・すぎてはる」の意味は、
「動作+時間の経つこと」
ここまでのまとめ

「いて」=時間の意味
(「居て」ではない)
す+くi+つi+る
o+る
i+つa+る「す・く・つ・る」は基本動詞
「a・i・e・o」は補助母音

する
(行為)

くる
(暗る)

しつ
(失敗)

きつ
(狐)
して

きて
いる
(入る)

おる
(降る)
して〜いて

きて〜いて
して〜いたり

きて〜いたり
「すぐ」の語幹の「す」「く」は、
「する」「くる」の語幹でもある

「すぐ」は、暗くなる前にすること。
行為をしていて、暗くなるほど、
(時間が)過ぎること。

「している」は、失敗すること
実現するまで「している人」を
揶揄する言葉か?

「きておる」は、闇の降りること
宵闇に狐の気配を感じることか?
すぐi+つ

いつ
いる
おる
i+つ

いつ
a+る

ある
ある+i

あり
「i」は時の概念
「いつ」は、時の集まり(時間)
「a」を動詞化して「存在」の意味
「あり」は、存在していたもの

動詞(いる・おる・ある)と、
(いつ)時間を
「e」で、接続している
すぐいつ+e

i+て
いる
おる
いつ+e

i+て
ある「つ」が「e」を吸収
「て」の語感が強くなる
「て」が、接続助詞となる
すぐ+i+て

すぎ〜て
いる
おる
i+て+a+る

い〜たる(至る)

すぐ+いたる=すぎたる
語句の活用する様子
動詞の語尾に「i」を含み、
「連用形」となる

連用形に繋がる語句は、
元は語頭に「い音」を持っていた

「いて+ある」で動詞の「至る」
語尾に「i」が含まれると
過去形になる
すぎ〜て〜いる

すぎ〜て〜おる
いて+ある+i

i+てあり

いたり(至り)

〜i+タリ
いたる(至る)は、語尾に「i」を含み、
〜タリ形になる
前の語句を連用形にする
(「至り」も連用形)

いく+i+ある+i

いきあり

i+きあり

〜i+ケリ=(行けり)
すぎて+いたり

すぎていたり

すぎていた
「すぎて」と「いたり」が、
接続したとき、
「り」が脱落
すぎ×いた「すぎていた」の構造
「いた」は、「いる」の
変化した語句ではない
すぎいる×「すぎている」の構造
「いる」は、「いた」の
変化した語句ではない
すぎている+いた=いりたいった

おる+いた=おりた→おった
「いる+いた」で、
「る」に「い」が吸収され「り」となる
「いりた」の「り」が脱落
「っ」に変わる
(促音変化)

過去形」と呼ばれる

「いた」「いった」の違いに注意!
いつ+ある=いたる→いた
いる+いた=いりた→いった
すぎていった「いった」は、「行く」の
過去形ではないことに注意!
「いく」という語句は語源に無い

○いる+いた→いりた→いった
×行く→いった
すぎている

すぎてる

すぎる
すぎていた

すぎてた

すぎた
語句の省略
現在形過去形現代語解釈
すぎ
動詞
「すぎる」
連用形

接続助詞

補助動詞
「いる」
連用形

助動詞

助動詞
現代国語文法
「すぐ」

(過ぐ)
「いる」は、「入る」
現在の状態に入ること

「辛い食べ物を食べて、
辛すぎる。」
「た」は、「至る」
現在の状態に至ったこと

「辛い食べ物を食べて、
辛すぎた。」
言葉の真の意味






補助母音表

補助母音形現代国語解釈
四段活用
本当の意味活用した動詞
動詞の語尾が、
この音に活用すると、
未然形になる
感嘆音
「ある(有る)」「あふ(逢ふ)」という動詞を作る

未然形=〜a+む・ず
まだ起こり得ない状況を示唆し、
動詞の語尾に付いて、他の動詞と接続する
書か(未然)
漕が(未然)
知ら(未然)
待た(未然)
呼ば(未然)
読ま(未然)

あら(未然)
動詞の語尾が、
この音に活用すると、
連用形になる
明示音
「いつ(何時)」という時間の概念を示す
「し」と、語句の語尾に付いて、形容を示す
「いる(入る)」「いふ(言ふ)」という動詞を作る

連用形=〜i+タリ(←至るの連用形)
動詞の語尾に付いて、他の動詞と接続する
(上二段活用の未然・命令形動詞の語尾に付く)
(上一段活用の動詞の語尾に付く)
(ら行変格活用の終止形動詞の語尾に付く)
書き(連用)
知り(連用)

起き(未・連・命)
落ち(未・連・命)
懲り(未・連・命)

着(未然・連用)
煮(未然・連用)
動詞の基本形
終止形・連体形
行為音
子音に付いて語句を動詞化する
「る」「うる」という助動詞を作る

連体形=〜u+る
他の終止・連体形動詞の語尾について行為を強調する
知る
落つ+れ(已)
出づ+れ(已)
来る・来れ(已)
する・すれ(已)
死ぬ+れ(已)
ある
着る
蹴る
動詞の語尾が、
この音に活用すると、
已然形・命令形になる
要求音
語句の間に入り接続する
「て」という接続助詞を作る
「へ」という方向性の格助詞を作る
「え(得る)」「えぬ(得ぬ)」という動詞を作る

已然形=〜e(+る+e)=〜れ・〜せ・〜け・〜ね・〜め
動詞の語尾に付いて、行為・目的を強調する
(下二段活用の未然・連用形動詞の語尾に付く)
(下一段活用の動詞の語尾に付く)
(サ行変格活用の未然形動詞の語尾に付く)
書け(已・命)

出で(未・連・命)

せ(未)+よ(命)
死ね(命令)
あれ(已・命)

蹴れ(已然)
上代では活用しない畏怖音
「おる(降る)」「おゆ(老ゆ)」という動詞を作る

別の動詞を作る=起く+o+す=起こす
他の語句と接続して語彙を増やす
(カ行変格活用の未然・命令形動詞の語尾に付く)
来(こ)(未然)
来(こ)よ(命令)






つづき
どうじゃね?
このように子音と母音を分解して見れば、言葉の意味と成り立ちや変遷、
「いった」という語句の語源が、なんの無理も疑問もなく「ふ」に落ちるというものじゃろうて?
ヤマトコトバには、「す・く・つ・る……」などの基本語句に、補助母音が組み合わさり、
動詞や助動詞、名詞、形容詞を作っているのじゃ。
四段活用の語尾の変化が、なぜ起きるのか、その必然性もわかるというもの。
「〜タリ」も、実は「至る」の連用形じゃったというわけなのじゃ。
動詞自身の語尾が活用して、「タリ」と接続すると考えていては、この真理には到達できぬぞ。

かおる
そうですか〜? なんだか、怪しさ満載の表だと思いますけどね〜。
「行った」は、「入る」の過去形した語句なんですか? 良い子が本気にしたらどうするんですか〜?
つづき
かおる君がそう思うのは、「漢字」に惑わされておるからじゃ。

かおる
漢字?

つづき
漢字が輸入され、ヤマトコトバに当てはめる前は、「いった」は、「行った」という意味ではなかったのじゃ。
古語の「いる」「いた」が複合して変化していった結果が「いった」ということなのである。
「行く」の意味はもともと無い。「行く」は、古語では「ゆく」じゃ。

行く」は、「いく」ではなく「ゆく」。
ゆく」の変化形は「ゆきけり・ゆきたり」。
やがて、「行く」の漢字が当てられると、
ゆく」の発音は廃れ、「いく」と言うようになる。

その頃、「過ぎている」の過去形の概念が生まれ、
「過ぎているいた→過ぎていりた→過ぎていった」となる。
やがて、「いった」が「行った」の語彙を持つようになる。

一方、「いった」の語源である「いる」「いたる」には、
居る」「至る」の漢字が当てられた。
行く」とは無関係の言葉であるが、
後世、「いく」と「いった」が関連付けられて、考えられてしまった。


つづき
というわけで、後世の我々は、ヤマトコトバの構造を知らぬために混乱しているにすぎないのじゃ。
いった」は「行く」の真の過去形ではない。
ゆく」という発音が廃れ、「いく」になったたのが混乱の原因じゃ。
していた」の「いた」も、「そこに、いた」の「いた」のように、「居る」の過去形ではない。
して〜いた」は、「いたり(至り)」が語源なのじゃからな。
して〜いる」は、「入る」なのじゃ。
ちなみに、「居る」は「ゐる」であり、「わ行上一段活用」なのである。 わかったかね? かおる君。



まとめ

語句本来の漢字の意味
過ぎている過ぎて入る
過ぎていた過ぎて至(り)
過ぎていった過ぎて入る至(り)→すぎていりた→過ぎていった
ゆく行く
ゆきたり行きたり
「行く」の近世口語過去形は存在せず
「過ぎていった」の、「いった」で代用
本来の意味から離れて
行った」と、漢字が当てられる
いった」から派生した「いってる」が、独立した動詞となる
「いった+e+る」=「いってる」(た行下一段活用)
そこにいるそこに居る
そこにいたそこに居た
そこにいったそこにいった(行った)
そこにいってるそこにいってる(行ってる)
そこにいってたそこにいってた(行ってた)
しているして入る
していたして至(り)
していったしていった(行った)
していってるしていってる(行ってる)
していってたしていってた(行ってた)


かおる
本当ですか〜???
それ以前に「過ぎていりた」ってなんですか? 聞いたことも無いですよ?

つづき
促音変化のルールで、一瞬に「→っ
」となり、「過ぎていった」に、言い回されたのじゃ。

何もおかしくは無いぞ?

かおる
ギャフン。(死語)










付録・年表




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