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h音がk音に変わった時
Feb.13.2004
つづき
身体語を解剖せよ!で、日本語の身体語の語源をさぐってみたわけじゃが、
「f音」は、いつ頃、「k音」に変わっていったのであろうか?
かおる
あの表が本当なら、「ふぃみ(耳)」が、「きき(聞き)」に転じたことになってますね?
つづき
「耳」は、昔は、「ふぃみ」と、言っておったという仮説を立てた。
そうすることで、「ひびく(響く)・きく(聞く)」が、「ふぃみ(耳)」からの転じゃったことが容易にわかるわけじゃ。
かおる
日本人が昔、「ふぁ、ふぃ、ふ、ふぇ、ふぉ」と発音していたのが、「はひふへほ」に、転じたように、
「k音」の、「かきくけこ」に転じることもあったということですね。
つづき
例えば、「上海」の「ハイ(海)」が、日本では、「カイ」に、変わったという話は有名じゃな。
「ふぁ」についても、「くぁ」を介して、「か」へ、転じていったのじゃろう。
身体語に見られる、音韻変化の様子
Fa→Wa→a
ふぁ→わ→あ
Fa→Kwa→Ka
ふぁ→くぁ→か
Fi→Mi→Ki→Wi
ふぃ→み→き→ゐ
Fu→Ku→u
ふ→く→う
Fe→Me→Ke→We
ふぇ→め→け→ゑ
Fo→Wo
ふぉ→を
Fo→Ko
ふぉ→こ
「Ha・Hi・Hu・He・Ho」は、近代になって「Fa・Fi・Fu・Fe・Fo」から転じた。
かおる
では、「ふぁ」が、「か」へ、発音が変わっていったのは、いつ頃でしょうかねえ?
つづき
身体語を解剖せよ!の表を、いまいちど整理してみようぞ。
「かをる」は、匂いではなく、顔が美しいことを称える意味じゃったようじゃ。
「ほほ(頬)」は、もともとは、「こころ」と同じく内面を意味していたのかも知れぬ。
「おも(面)」は、「思い」を表していたのじゃろうな。
身体語 | 古語 | 派生語 | k音変化 | 備考 |
おかぶ | ふぉかぶ | をがむ | こがる | 「こがる(焦がる)」は、頭で激しく思うこと |
かお | かふぉ | かをる | かこむ | 「かをる」は、顔が美しいという意味 |
ほほ | ふぉふぉ | ほほえむ | をこ | 「こころ」は、「をこ」の転か? |
おも | ふぉも | をめく | こもる | 「こもる」は、思いつめる意味 |
めめ | ふぇめ | めめし | けけし | 「めめし・けけし」は目つきを表現した語句 |
はな | ふぁな | あな | かぐ | 「かぐ」は、「ふぁぐ=くぁぐ」の転か? |
くち | ふち | ふふむ | ふくむ | 「ふふむ」は、「口に含む」の意味 |
みみ | ふぃみ | ひびく | ききいる | 耳に感じる音 |
て | ふて | うで | くだく | 「くだく」は、「くで・く」からの転か? |
あし | ふぁし | はしる | かける | 「かち」は、「歩く」の意味 |
はら | ふぁら | わらう | から | 「から」は空洞の意味 |
かおる
う〜ん。 これを見ると、「f音」から「k音」に発音が転じたというより、
子音を変えて語彙を増やしたように見えますね?
つづき
うむ。 わしも、古代のある時期から、「f音」が規則的に「k音」に転じたのでは?
と、考えておったが、身体語から観察すると、そういうわけでもなさそうなんじゃな。
身体語で、古語の「f音」から「k音」に変わったのは、「くち」だけで、
他の音韻変化は、語彙を増やしただけなのじゃ。
古代の日本人は、音韻を変化させることを、語彙を増やすことに用いておったということじゃな。
かおる
ふむふむ。
つづき
中国語の「h音」の音韻が、日本では「k音」として受けとられたという話も、
もしかしたら、思い込みじゃったのかも知れぬなあ。
かおる
思い込み?
つづき
「ハイ(海)」が、日本では、「カイ」に、変わったという話は、古代の倭人が、
「ハイ」を発音できなかったから、というより、実際は、「ファイ」と、受けていたのではないか?
しかし、「ファイ」は、当時から、「はい(了解)」の意味じゃったろうから、
同じ音韻を避けて、「カイ」という言葉へと、作り変えて行ったのではないじゃろうか?
「k」という子音にも、特別な意味があってのことかも知れぬ。
かおる
ということは?
中国語の「ハイ(海)」が、日本語では「カイ」になったのは……。
つづき
音韻変化ではなく、意図的な造語だったのじゃ。
かおる
いや〜。 でも、そうじゃなくて、中国人の発音の「ハイ(海)」を聞いた、古代の倭人が、
「h音」の発音が出来なかったので、「カイ」という発音に転じた、というのが言語学の定説なんですよ。
つづき
だったら、「ファイ」でも良かったのでは、ないのか?
わざわざ、「カイ」にせずとも、そのほうが、音が近いであろう。
かおる
いや、だから、当時の倭人の発音には、「h音・f音」が無く、「p音」しか無かったということなんです。
だから中国人の「ハイ」の発音を、「k音」で受けるしか無かった。 だから「カイ」になったんです!
つづき
そのように、ありもせぬ仮定の上に仮定を重ねるのは、よくないぞよ?
かおる
それは、師匠でしょ〜!
古代の日本人には「f音」の発音すら存在せず、すべて「p音」で代用してたんです。
「ふぁふぃふふぇふぉ」も、「ぱぴぷぺぽ」だったんです。 これ常識!
つづき
しかし、確かな証拠は、なにも無いのじゃ。
「p音」で発音していたという文献なども、残っておらぬ。
かおる
昔は、文字が無かったので、仕方ありませんが、
沖縄の方言に、なごりがあるとされています。
沖縄の人は、実際に、「はな」を「ぱな」と言っていますよ?
つづき
むしろ、「ふぁな」からの、訛りではないのかの?
かおる
それは、こじつけと、言うものです。 決定的なのは、カタカナです。
カタカナの元になった漢字は、中国語で「パピプペポ」と読めたりしますよ?
つづき
日本人の発音に漢字を当てたのは、渡来人じゃから、訛っていても当然じゃな。
かおる
なんでもかんでも、渡来人の訛りで片付けるのはよくないです〜。
つづき
もっと、よく考えてみたまえ。 古代の倭人が「h音・f音」を発音できなかったということが、
常識的に考えられるじゃろうか?
かおる
もちろん、ありえますよ。 ここで、師匠もおっしゃってたでしょう?
現代の韓国人も、英語の「IF」が発音できずに「イプ」になってしまうって。
つづき
すると、こういうことなのじゃな?
韓国人は、「f音」を発音できず、「p音」に置き換えた。
古代の倭人は、「h音」を発音できず、「k音」に、置き換えた。
かおる
そうですが、何か?
つづき
言語学というのは、ものすごく頓知を働かせねば、理解できぬものなのじゃなあ?
かおる
そう思えるのは、師匠が、きちんと言語学を勉強してないからですよ〜。
つづき
おかしいのお? 古代の倭人は、「p音」の発音を持っていたのじゃから、
今の韓国人のように、「p音」で受けても良かったのではあるまいか?
「ハイ(海)」を、「パイ」と、置き換えず、
なぜ、わざわざ、「カイ」を選んだのか?
かおる
それは、詭弁というものでしょ〜。
「f音」と、「h音」は、違うものなんじゃないですか?
それに、韓国語と日本語は、別系統の言語なので、比較にはなりません。
古代の倭人は「f音・h音」を発音できず、「p音」で話していました。
そして、「p音」は使わず、「k音」で置き換えたということです。
つづき
…………。
かおる
…………。
付録・年表
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