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超古代の古文法(助動詞編)


August.21.2004





つづき
ここまできたら、助動詞も攻略せねばならぬて。

かおる
助動詞は、種類がありすぎて大変ですね〜。

つづき
とりあえず、適当にまとめてみたぞよ。



助動詞
(注:分類は適当ですので正しくは古語辞典を参照のこと)

系統種類備考
らる系れ・れ・る・るる・るれ・れよ
え・え・ゆ・ゆる・ゆれ
られ・られ・らる・らるる・らるれ・られよ
らえ・らえ
受身
尊敬
可能
自発
「るる系」は「四段・ナ変・ラ変」の未然形に接続
「らるる・らえ系」は、それ以外の未然形に接続

「ゆ系」は上代まで使用
しむ系せ・せ・す・する・すれ・せよ
させ・させ・さす・さする・さすれ・させよ
しめ・しめ・しむ・しむる・しむれ・しめよ
使役・尊敬未然形に接続
「する系」は「四段・ナ変・ラ変」のみ
「さす系」はそれ以外

「する・さす系」は、中古から使用
ざり系じ・ず・ぬ・ね
ざら・ざり・ざる・ざれ・ざれ
なは・なふ・なへ
打ち消し未然形に接続

「なふ系」は上代まで
まじ系ましじ・ましじき
まじく・まじ・まじき
まじから・まじかり・まじ・まじかる・まじけれ
打ち消し
推量
終止形に接続
「ラ変」は、連体形に接続

「まじかり系」は、中古から
むず系む(ん)・め
むず・むずる・むずれ
ませ(ましか)・まし・まし・ましか
推量未然形に接続

「む・まし」は上代から
けむ系けむ・けむ・けめ・けん推量連用形に接続

上代から
らむ系らむ・らむ・らめ・らん
らし・らしき
推量終止形に接続

上代から
べし系べく・べき・べし推量終止形に接続

上代から
べら系べから・べかり・べかる・べけれ
べらに・べらなり・べらなる・べらなれ
めり・めり・める・めれ
推量連体形に接続

「べらに・めり系」は中古から
けり系けら・けり・ける・けれ
せ・き・し・しか
過去連用形に接続
「しか系」は、「カ変・サ変」に特殊な接続

上代から
たり系たら・たり・たり・たる・たれ・たれ
て・て・つ・つる・つれ・てよ
な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね
ら・り・り・る・れ・れ
完了連用形に接続
「ら系」は、四段の已然形・サ変の未然形に接続

上代から
たし系まほしく・まほし・まほしき
まほしから・まほしかり・まほしかる・まほしけれ
まうく・まうし・まうき・まうけれ
たく・たし・たき
たから・たかり・たし・たかる・たけれ
希望「まほし系」は、未然形に接続
「たし系」は、連用形に接続

中古から
なり系なら・なり(に)・なり・なる・なれ・なれ
たら・たり(と)・たり・たる・たれ・たれ
伝聞
推定
断定
終止・連体・体言に接続

上代から
ごとし系ごとく・ごとし・ごとき比況連体形に接続

上代から
さしす系さ・し・す・す・せ・せ尊敬四段・サ変の未然形に接続

上代まで
はひふ系は・ひ・ふ・ふ・へ・へ継続四段の未然形に接続

上代まで




かおる
本当に分類が適当ですね〜。 良い子は、参考にしちゃだめですよ〜。
それにしても、種類の多いこと多いこと。 こんなに多くて、整理できるのかなあ?
つづき
おもに、上代から多用されている語句にだけ注目してみればよい。
「らる・しむ・ざり・むず・けむ・らむ・べし・なり・ごとし・さしす・はひふ系」とかじゃな。
「ゆ・ゆる・ゆれ系」は、上代までで、「る・るる・るれ」に吸収されておるようじゃ。
もとは、同じような「りゅ・りゅりゅ・りゅりぇ」とか、微妙な音だったと思われよう。

かおる
まあ、そんな感じはしますね。
ところで、「たり系」「けり系」は、この前のような解釈でいいんですかね〜?
つづき
あ〜……いいんじゃないの?

かおる
じゃ、そういうことで……。

つづき
「さしす・はひふ系」は、上代までの語句のようじゃが、すでに四段活用として完成しておる。
ここから、他の複雑な助動詞に発展していったのじゃろう。
中古より「せ・せ・す・する・すれ・せよ」「させ・させ・さす・さする・さすれ・させよ」という、
下二段活用の助動詞が登場するのが興味深い。
完了の助動詞「ら・り・り・る・れ・れ系」も、「ラ変」として、「四段」終止形の語尾に「」母音が付いた形じゃな。
これも、中古より、「られ・られ・らる・らるる・らるれ・らるれ・られよ」という、
下二段活用の助動詞が登場するのじゃ。
むしろ、これら助動詞が、ヤマトコトバにおける動詞の正体ではないじゃろうか?

かおる
下二段活用と四段活用の違いは、未然形・連体形が「a・i」ではなく、「」で終わる所ですが、
すでに上代から四段活用があったのに、どうして中古の時代から生まれたのでしょう?
つづき
あわてずとも、真理は、すぐそこにあろう。




助動詞今昔物語

未然連用終止連体已然命令種類備考


ラ行変格活用
完了・存続

上代まで
四段の已然形に接続
サ変の未然形に接続


下二段活用
るるるれれよ
受身・尊敬

上代から近世
四段・ナ変・ラ変の
未然形に接続
らる

下二段活用
られられらるらるるらるれられよ
可能・自発
受身・尊敬
(「られよ」は、受身・尊敬)

中古から
四段・ナ変・ラ変以外の
未然形に接続
未然連用終止連体已然命令種類


四段活用
尊敬

上代まで
四段の未然形に接続
サ変の未然形に接続


下二段活用
するすれせよ
使役・尊敬

中古から
四段・ナ変・ラ変の
未然形に接続
さす

下二段活用
させさせさすさするさすれせよ
使役・尊敬

中古から
四段・ナ変・ラ変以外の
未然形に接続



つづき
おお! そこはかとなく、法則性が見えてきたではないか!
実際の使われ方を見てみようぞ。


 ラ行変格活用(完了・存続・上代まで)

四段の已然形に接続
サ変の未然形に接続
動詞+「」+「」+〜

已然・未然形に接続するのではなく、
「e」が、動詞の活用形式をつくる
動詞活用形助動詞〜分解
四段活用

書く
書か(未然)
書き(連用)
書く(終止)
書く(連体)
書け(已然)
書け(命令)
ら(未然)+ず
り(連用)+たり
り(終止)
る(連体)+なり
れ(已然)+ども
れ(命令)
書けらず
書けりたり
書けり
書けるなり
書けれども
書けれ
かく+e+る+a+ず
かく+e+る+i+つ+a+る+i
かく+e+る+i
かく+e+る+u+ぬ+a+る+i
かく+e+る+e+ども
かく+e+る+e
サ行変格活用

為(す)
せ(未然)
し(連用)
す(終止)
する(連体)
すれ(已然)
せよ(命令)
ら(未然)+ず
り(連用)+たり
り(終止)
る(連体)+なり
れ(已然)+ども
れ(命令)
せらず
せりたり
せり
せるなり
せれども
せれ
す+e+る+a+ず
す+e+る+i+つ+a+る+i
す+e+る+i
す+e+る+u+ぬ+a+る+i
す+e+る+e+ども
す+e+る+e
 四段活用(尊敬・上代まで)

四段の未然形に接続
サ変の未然形に接続
動詞+「e(a)」+「」+〜

未然形に接続するのではなく、
「e(a)」が、動詞の活用形式をつくる
動詞活用形助動詞〜分解
四段活用

書く
書か(未然)
書き(連用)
書く(終止)
書く(連体)
書け(已然)
書け(命令)
さ(未然)+ず
し(連用)+たり
す(終止)+らむ
す(連体)+なり
せ(已然)+ども
せ(命令)
書かさず
書かしたり
書かすらむ
書かすなり
書かせども
書かせ
かく+a+す+a+ず
かく+a+す+i+つ+a+り+i
かく+a+す+i+る+a+む
かく+a+す+u+ぬ+a+る+i
かく+a+す+e+ども
かく+a+す+e
サ行変格活用

為(す)
せ(未然)
し(連用)
す(終止)
する(連体)
すれ(已然)
せよ(命令)
さ(未然)+ず
し(連用)+たり
す(終止)+らむ
す(連体)+なり
せ(已然)+ども
せ(命令)
せさず
せしたり
せすらむ
せすなり
せせども
せせ
す+e+す+a+ず
す+e+す+i+つ+a+る+i
す+e+す+i+る+a+む
す+e+す+u+ぬ+a+る+i
す+e+す+e+ども
す+e+す+e

語句と語句を接続するとき、「e」を使う
未然の状態を表すときに「a」で接続する
どこで、用法が分かれたか?

 下二段活用(受身・尊敬・上代から近世)

四段の未然形に接続
ナ変の未然形に接続
ラ変の未然形に接続
動詞+「」+「」+〜

未然形に接続するのではなく、
「a」が、動詞の活用形式をつくる
動詞活用形助動詞〜分解
四段活用

書く
書か(未然)
書き(連用)
書く(終止)
書く(連体)
書け(已然)
書け(命令)
れ(未然)+ず
れ(連用)+たり
る(終止)
るる(連体)+なり
るれ(已然)+ども
れよ(命令)
書かれず
書かれたり
書かる
書かるるなり
書かるれども
書かれよ
かく+a+る+e+ず
かく+a+る+e+つ+a+る+i
かく+a+る+u
かく+a+る+u+る+u+ぬ+a+る+i
かく+a+る+u+る+e+ども
かく+a+る+e+よ
ナ行変格活用

死ぬ
しな(未然)
しに(連用)
しぬ(終止)
しぬる(連体)
しぬれ(已然)
しね(命令)
れ(未然)+ず
れ(連用)+たり
る(終止)
るる(連体)+なり
るれ(已然)+ども
れよ(命令)
しなれず
しなれたり
しなる
しなるるなり
しなるれども
しなれよ
しぬ+a+る+e+ず
しぬ+a+る+e+つ+a+る+i
しぬ+a+る+u
しぬ+a+る+u+る+u+ぬ+a+る+i
しぬ+a+る+u+る+e+ども
しぬ+a+る+e+よ
ラ行変格活用

有り
あら(未然)
あり(連用)
あり(終止)
ある(連体)
あれ(已然)
あれ(命令)
れ(未然)+ず
れ(連用)+たり
る(終止)
るる(連体)+なり
るれ(已然)+ども
れよ(命令)
あられず
あられたり
あらる
あらるるなり
あらるれども
あられよ
ある+a+る+e+ず
ある+a+る+e+つ+a+る+i
ある+a+る+u
ある+a+る+u+る+u+ぬ+a+る+i
ある+a+る+u+る+e+ども
ある+a+る+e+よ
 下二段活用(使役・尊敬・中古から)

四段の未然形に接続
ナ変の未然形に接続
ラ変の未然形に接続
動詞+「」+「」+〜

未然形に接続するのではなく、
「a」が、動詞の活用形式をつくる
動詞活用形助動詞〜分解
四段活用

書く
書か(未然)
書き(連用)
書く(終止)
書く(連体)
書け(已然)
書け(命令)
せ(未然)+ず
せ(連用)+たり
す(終止)+らむ
する(連体)+なり
すれ(已然)+ども
せよ(命令)
書かせず
書かせたり
書かすらむ
書かするなり
書かすれども
書かせよ
かく+a+す+e+ず
かく+a+す+e+つ+a+る+i
かく+a+す+u
かく+a+す+u+る+u+ぬ+a+る+i
かく+a+す+u+る+e+ども
かく+a+す+e+よ
ナ行変格活用

死ぬ
しな(未然)
しに(連用)
しぬ(終止)
しぬる(連体)
しぬれ(已然)
しね(命令)
せ(未然)+ず
せ(連用)+たり
す(終止)+らむ
する(連体)+なり
すれ(已然)+ども
せよ(命令)
しなせず
しなせたり
しなす
しなするなり
しなすれども
しなせよ
しぬ+a+す+e+ず
しぬ+a+す+e+つ+a+る+i
しぬ+a+す+u
しぬ+a+す+u+る+u+ぬ+a+る+i
しぬ+a+す+u+る+e+ども
しぬ+a+す+e+よ
ラ行変格活用

有り
あら(未然)
あり(連用)
あり(終止)
ある(連体)
あれ(已然)
あれ(命令)
せ(未然)+ず
せ(連用)+たり
す(終止)+らむ
する(連体)+なり
すれ(已然)+ども
せよ(命令)
あらせず
あらせたり
あらす
あらするなり
あらすれども
あらせよ
ある+a+す+e+ず
ある+a+す+e+つ+a+る+i
ある+a+す+u
ある+a+す+u+る+u+ぬ+a+る+i
ある+a+す+u+る+e+ども
ある+a+す+e+よ

上代の助動詞「る(完了)・す(尊敬)」が、中古から、それぞれ下二段活用になり、
「り(受身・尊敬)・す(使役・尊敬)」の意味になる
つまり、それまでの「る・す」の未然形語尾に、「a」が接続しなくなり「e」に変わった

上代の助動詞「る・す」が、中古から、サ変動詞の未然形「せ」に接続しなくなる
つまり、以下の「らる・さす」が使われるようになった

らる 下二段活用(可能・自発・受身・尊敬・中古から)
(「られよ」は、受身・尊敬)

四段・ナ変・ラ変以外の未然形に接続
動詞+「e?i」+「」+「」+「」+〜

未然形に接続するのではなく、
「e?i」が、動詞の活用形式をつくる
動詞活用形助動詞〜分解
サ行変格活用

為(す)
せ(未然)
し(連用)
す(終止)
する(連体)
すれ(已然)
せよ(命令)
られ(未然)+ず
られ(連用)+たり
らる(終止)
らるる(連体)+なり
らるれ(已然)+ども
られよ(命令)
せられず
せられたり
せらる
せらるるなり
せらるれども
せられよ
す+e+る+a+る+e+ず
す+e+る+a+る+e+つ+a+る+i
す+e+る+a+る+u
す+e+る+a+る+u+ぬ+a+る+i
す+e+る+a+る+u+る+e+ども
す+e+る+a+る+e+よ
上一段活用

着る
き(未然)
き(連用)
きる(終止)
きる(連体)
きれ(已然)
きよ(命令)
られ(未然)+ず
られ(連用)+たり
らる(終止)
らるる(連体)+なり
らるれ(已然)+ども
られよ(命令)
きられず
きられたり
きらる
きらるるなり
きらるれども
きられよ
き+?+る+a+る+e+ず
き+?+る+a+る+e+つ+a+る+i
き+?+る+a+る+u
き+?+る+a+る+u+ぬ+a+る+i
き+?+る+a+る+u+る+e+ども
き+?+る+a+る+e+よ
上二段活用

老ゆ
おい(未然)
おい(連用)
おゆ(終止)
おゆる(連体)
おゆれ(已然)
おいよ(命令)
られ(未然)+ず
られ(連用)+たり
らる(終止)
らるる(連体)+なり
らるれ(已然)+ども
られよ(命令)
おいられず
おいられたり
おいらる
おいらるるなり
おいらるれども
おいられよ
おゆ+i+る+a+る+e+ず
おゆ+i+る+a+る+e+つ+a+る+i
おゆ+i+る+a+る+u
おゆ+i+る+a+る+u+ぬ+a+る+i
おゆ+i+る+a+る+u+る+e+ども
おゆ+i+る+a+る+e+よ
下二段活用

寝(ね)
ね(未然)
ね(連用)
ねる(終止)
ねる(連体)
ねれ(已然)
ねよ(命令)
られ(未然)+ず
られ(連用)+たり
らる(終止)
らるる(連体)+なり
らるれ(已然)+ども
られよ(命令)
ねられず
ねられたり
ねらる
ねらるるなり
ねらるれども
ねられよ
ぬ+e+る+a+る+e+ず
ぬ+e+る+a+る+e+つ+a+る+i
ぬ+e+る+a+る+u
ぬ+e+る+a+る+u+ぬ+a+る+i
ぬ+e+る+a+る+u+る+e+ども
ぬ+e+る+a+る+e+よ
さす 下二段活用(使役・尊敬・中古から)

四段・ナ変・ラ変以外の未然形に接続
動詞+「e?i」+「」+「」+「」+〜

未然形に接続するのではなく、
「e?i」が、動詞の活用形式をつくる
動詞活用形助動詞〜分解
サ行変格活用

為(す)
せ(未然)
し(連用)
す(終止)
する(連体)
すれ(已然)
せよ(命令)
させ(未然)+ず
させ(連用)+たり
さす(終止)+らむ
さする(連体)+なり
さすれ(已然)+ども
させよ(命令)
せさせず
せさせたり
せさすらむ
せさするなり
せさすれども
せさせよ
す+e+す+a+す+e+ず
す+e+す+a+す+e+つ+a+る+i
す+e+す+a+す+u
す+e+す+a+す+u+ぬ+a+る+i
す+e+す+a+す+u+る+e+ども
す+e+す+a+す+e+よ
上一段活用

着る
き(未然)
き(連用)
きる(終止)
きる(連体)
きれ(已然)
きよ(命令)
させ(未然)+ず
させ(連用)+たり
さす(終止)+らむ
さする(連体)+なり
さすれ(已然)+ども
させよ(命令)
きさせず
きさせたり
きさすらむ
きさするなり
きさすれども
きさせよ
き+?+す+a+す+e+ず
き+?+す+a+す+e+つ+a+る+i
き+?+す+a+す+u
き+?+す+a+す+u+ぬ+a+る+i
き+?+す+a+す+u+る+e+ども
き+?+す+a+す+e+よ
上二段活用

老ゆ
おい(未然)
おい(連用)
おゆ(終止)
おゆる(連体)
おゆれ(已然)
おいよ(命令)
させ(未然)+ず
させ(連用)+たり
さす(終止)+らむ
さする(連体)+なり
さすれ(已然)+ども
させよ(命令)
おいさせず
おいさせたり
おいさすらむ
おいさするなり
おいさすれども
おいさせよ
おゆ+i+す+a+す+e+ず
おゆ+i+す+a+す+e+つ+a+る+i
おゆ+i+す+a+す+u
おゆ+i+す+a+す+u+ぬ+a+る+i
おゆ+i+す+a+す+u+る+e+ども
おゆ+i+す+a+す+e+よ
下二段活用

寝(ね)
ね(未然)
ね(連用)
ねる(終止)
ねる(連体)
ねれ(已然)
ねよ(命令)
させ(未然)+ず
させ(連用)+たり
さす(終止)+らむ
さする(連体)+なり
さすれ(已然)+ども
させよ(命令)
ねさせず
ねさせたり
ねさすらむ
ねさするなり
ねさすれども
ねさせよ
ぬ+e+す+a+す+e+ず
ぬ+e+す+a+す+e+つ+a+る+i
ぬ+e+す+a+す+u
ぬ+e+す+a+す+u+ぬ+a+る+i
ぬ+e+す+a+す+u+る+e+ども
ぬ+e+す+a+す+e+よ



かおる
表がスゴすぎて読んでいられませんが、結局何がわかったんですか?

つづき
まず、古代から上代の時代において、もっぱら助動詞には、
完了の助動詞「」、尊敬の助動詞「」、が、使われておったのじゃな。
古代の言葉では、語尾に「」母音がつくのは、
現代と違って、動作の区切り、動作の完了、終止形の意味を持っていたのかも知れぬ。
動作を実行中の場合は、語尾に「」母音を付けていたのじゃろう。

かおる
そうかな〜?

つづき
完了の助動詞「」は、四段活用の已然形・サ行変格活用の未然形動詞に接続しておった。
ややこしそうで、なんのことはない、単純に、動詞と「」母音で接続していたということじゃ。

「書く」(四段活用)
書けり=書け(已然形)+り=かく++り=かけり
「為(す)」(サ行変格活用)
為(せ)り=せ(未然形)+り=す++り=せり



つづき
四段活用で言えば、未然形と接続するには「」母音が理想なのじゃが、
この当時は、文法的に未然形という概念が発達しておらず、単純に「」母音で接続したのじゃろう。
そもそも、未然形とか已然形とかの概念は、後世の学者が思いついた文法であるからの。
言葉が出来たころは、しっかりとした文法が決められていたわけではあるまいて。

かおる
でも、尊敬の助動詞「」は、四段・サ変の同じ未然形に接続していますが、
接続母音は違いますよ?

「書く」(四段活用)
書かす=書か(未然形)+す=かく++す=かかす
「為(す)」(サ行変格活用)
為(せ)す=せ(未然形)+す=す++す=せす



つづき
あれ?

かおる
あれ、って、あんた。

つづき
あ〜〜〜〜。

かおる
もしもし?(苦笑)

つづき
あ〜。 当時は、じゃから、文法がよく定まっておらなんだということじゃな。

かおる
だから、その謎を解いてくださいよ。

つづき
「すいません、その件はちょっと待ってもらえませんか?」

かおる
じゃ、そういうことで……。
って、ごまかされませんよ!
つづき
とりあえず、未然形のときに、きちんと「」母音で助動詞と接続しておるのは、
四段と、ラ変、ナ変の動詞だけなのじゃ。
かおる
それが何か?

つづき
昔の人も、そのへん、いろいろ思うところがあったのじゃろう。
文法に未然形という用法が必要になってきた頃、
」母音を動詞の語尾に接続することが流行したわけじゃな。
中古の時代に、流行に応じて作られたのが、
受身・尊敬の助動詞「」と、使役・尊敬の助動詞「」なのじゃ。
この二つは、きちんと動詞を未然にしたいとき、「」母音を介して接続することになっておる。
つまり、四段と、ラ変、ナ変の動詞に接続することを受け持っておるのじゃな。


「書く」(四段活用)
書かる=書か(未然形)+る=かく++る=かかる
「死ぬ」(ナ行変格活用)
死なる=死な(未然形)+る=しぬ++る=しなる
「有り」(ラ行変格活用)
有らる=あら(未然形)+る=ある++る=あらる


つづき
しかし、それ以前の時代に作られた語句は、一語じゃったりしたものも多く、
うかつに「」母音を使うと、単語が変化してしまう恐れがあったのじゃ。
例えば、「為(す)」は、一語の動詞じゃが、未然にしたいとき「」母音を加えて「」とは、
言いたく無かった事情があったのじゃろう。
古代人の頑固なまでの言霊に対するコダワリが、ついに、「」を「」と言わせず、
サ行変格活用」という文法まで生み出されてしまったわけじゃ。
着る」もまた「着(き)」という「」母音で終止する一語の言葉で、
動詞とか未然形とかという概念も無い時代に出来た語句じゃったろう。
」母音を接続して「」というわけにはいかなかったのじゃ。

しかし、「」母音は、使いたい、という要求には抗しきれず、
これまた中古の時代に、新しい助動詞が誕生したのじゃ。
それこそが、文体をを未然形にしたいとき「」母音を使えない動詞相手でも接続できるという、
スーパー助動詞「らる」「さす」じゃったのじゃ。
ら・さ」という「」母音を含む補助動詞をバイパスにしたわけじゃ。
うまいこと考えたのお。


「為(す)」(サ行変格活用)「さる」とは、言いたくなかった
せらる=せ(未然形)+らる=す+e+る++る=せらる
「着る」(上一段活用)「かる」とは、言いたくなかった
着らる=き(未然形)+らる=き+る++る=きらる
「老ゆ」(上二段活用)「おやる」とは、言いたくなかった
老いらる=おい(未然形)+らる=おゆ+i+る++る=おいらる



らるさす」の助動詞は、前の動詞と接続して未然にする
自分自身がすでに未然形の「」母音を含むので、
後ろの語句とは「」母音で接続すればよい
下二段活用なのは、そのためである







つづき
どうじゃね? 「らる・さす」を付ければ、どんな語句も、四段活用として利用できるのじゃ。
この助動詞ができたとき、ヤマトコトバは、文法を手に入れ、日本語となったわけじゃ。
かおる
接続母音が「」だったり「」だったり中途半端だった、尊敬の助動詞「」は、上代で廃れて、
汎用性のある、使役・尊敬の助動詞「さす」に受け継がれたわけですね?
つづき
一方、完了の助動詞「」は、「るる・らるる」などと巧みな進化を遂げ、
受身・尊敬・可能・自発の意味を持ち、助動詞「」となったわけじゃ。
かおる
サ行変格活用」の未然形が「」じゃないのは、
サ行変格活用」と呼ばれる動詞の未然形の後に、「」母音を置きたくなかった、ということですね?
つづき
例えば、「〜せり」が「〜さり」になるのを、嫌がったのじゃろう。

かおる
でも、そもそも、どうして未然形にしたいときに、動詞の語尾に「」母音を置くようになったんでしょう?
未然というのは、これからどうしたいか、決定があいまいな時の言葉使いですよね?
つづき
あ〜〜〜〜〜〜〜〜。











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