その日、東京は不可解な出来事に見舞われた。上空に忽然と黒い十字架が現れたのだ。

「イーグルの諸君!今すぐ降伏せよ。さもなくばゴレンジャーの一人がこの十字架に磔になる。
無駄な抵抗はもうやめるのだ!!ハッハッハ…」
総統の笑い声が上空に響き渡った。

イーグルはゴレンジャーの海城・新命・大岩の3名を出動させた。
ペギーと明日香はイーグル基地の護衛につく。

海城たちが出動すると同時に、基地に資材を運ぶトラックに偽装した車両からゾルダー兵たちが現れた。

「黒十字軍!どこからでもいらっしゃい!!私は逃げも隠れもしないわ!」

ペギーはゾルダーたちに応戦する。





応戦するペギーを、やや離れた場所からスーパーゾルダーが見守っていた。

「思ったほどの相手ではないな。待っていろよ、これからじっくりといたぶってやる…。
ゾルダー兵どもよ、ペギー1人を我らがアジトにおびき出すのだ!」

指令を受けたゾルダー兵たちはペギーに気おされたかのような素振りを見せて退却を始めた。

「待ちなさい!逃がさないわ!!」ペギーはバイクにまたがりトラックを追おうとする。

「ペギー!待て!!深追いは禁物だぞ!」明日香が必死に呼び止める。
しかしその声はペギーには届かなかった。


トラックはペギーの追跡に気づいたらしく必死で振り払おうとする。

「この近くに黒十字軍のアジトがあるんだわ」

トラックの様子から、ペギーはイーグル基地から遠くない場所に
黒十字軍が拠点を築いていることに慄然とした。

「絶対に場所をつきとめなくては…」

ペギーは一度尾行を撒かれたように見せかけ、密かに追跡を続けた。


やがてゾルダーたちを乗せたトラックは人気のない工場跡地に入り、空き地の中央で停車する。

「さあ、観念して降りてらっしゃい!」
ペギーはトラックに歩み寄ると後部のドアを開け放つ。
しかしその中にゾルダーの影はなかった。

「これはどういうこと…?」ペギーは周りを見渡した。

すると工場の廃屋の中から見る間に数十体のスーパーゾルダーが現れてペギーを取り囲んだ。

「ようこそ、モモレンジャー!待っていたぞ!!」

「黒十字軍ね!ゴー!!」ペギーはモモレンジャーに転換した。

「いくぞ!!」スーパーゾルダーが次々とモモレンジャーに襲いかかるが、
モモレンジャーのキックとパンチを受けてはあっさりと退いていく。

いつものように難なく戦闘員たちを撃退するモモレンジャー。
だが油断するモモレンジャーの背後から忍び寄った1人が彼女を羽交い絞めにした。

それはこれまでのゾルダーとは較べ物にならない強い力だった。
「いや!離して!!」
モモレンジャーは強烈な締め付けに苦しみながらも何とかスーパーゾルダーの腕を振りほどいた。

これをきっかけに、彼女の力量を見切ったかのよう一転して攻勢に出るスーパーゾルダーの群れ。
攻撃は簡単にかわされ、モモレンジャーは戦闘員の円陣に囲まれて翻弄され始めた。

焦りを募らせたモモレンジャーが円陣からの脱出を図ってイヤリング爆弾を投げつける。

イヤリングはスーパーゾルダーたちの円弧の上で爆発した。

「やった…?」

しかし爆煙の中からスーパーゾルダーが一体、また一体と立ち上がってくる。
モモレンジャーのイヤリング爆弾にもまったく損傷していないようだ。

「そ、そんな…」

「モモレンジャー!お前の武器はすでに研究済みだ。無駄な抵抗はやめて十字架に磔にされるがよい!!」

「モモ・カード!!」モモレンジャーは不適に笑うスーパーゾルダーにモモカードを投げつけた。
しかしスーパーゾルダーは動じることなくモモカードを指で挟んで受け止める。

「無駄だといっただろう。おとなしく捕らえられれば苦しまずに済むものを。覚悟はいいな!!」
数十のスーパーゾルダーが再びモモレンジャーの周りを囲んだ。

「これを受けてみろ!」

スーパーゾルダーたちはその指先から、髪の毛よりも細い特殊合金製の針を
モモレンジャーに向けて発射し始めた。

全方位からの一斉攻撃にモモレンジャーは為す術がない。
針は次々と強化スーツを突き抜けてペギーの体に突き刺さっていく。

「あっ…ああっ!」
通信機で応援を呼ぼうとした時には遅かった。
1本1本の針がペギーの神経に刺さって彼女の自由を奪っていたのだ。
モモレンジャーは棒立ちのままスーパーゾルダーの攻撃を受け続けた。

「やめて!助けて!!」
だがペギーを囲むスーパーゾルダーは無表情に針を発射し続ける。

「ああーっ!!」
絶え間なく襲いかかる苦痛にペギーは思わず悲鳴を上げた。

ペギーの悲鳴を待っていたかのように、大型の銃器を手にしたスーパーゾルダーの1人が
モモレンジャーを囲む輪の中に歩み出た。
「モモレンジャーよ、とどめだ!」

銃身部分の先がパラボラ状になった電磁兵器がブゥゥンという低い唸りを上げ始める。
やがてその音は耳を塞ぎたくなるような不快な熱を帯びていった。

「ゴレンジャーの強化スーツはいかなる電磁波攻撃も防ぐそうだな。
だがスーツを貫いた針は人間の神経を狂わせる波動を内部に誘導するのだ。
身動きできないままたっぷりと苦しむがいい!」

「きゃあああーっ!!あっ・・・ああっ・・・・・あっ・・・」
電磁兵器が発する唸りがひときわ高くなり、モモレンジャーの声が廃工場に響きわたった。
彼女の体に突き刺さった無数の針の間を青い焔が飛び交う。

痙攣するような声が途切れた後も、スーパーゾルダーはパラボラの射線で
モモレンジャーの体を舐めるように電磁波を浴びせ続けた。


電磁兵器がその唸りを止めスーパーゾルダーがパラボラを地面に向けると、モモレンジャーはその動きに合わせて膝から崩れ落ちた。

スーパーゾルダーが近づいて足先で彼女の体を仰向けにする。
すでにモモレンジャーの変身は解けてペギー松山の姿に戻っていた。