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「あっ……あぁ……んぁ……あぁ……手ぇ……はなし……てぇぅん! んっ! んっ!」
「駄目だよ……。斗貴子さんの甲……傷だらけになっちゃう……」
俺は斗貴子さんの両手首を掴んでいる。万歳に喩えるには肘の曲がった格好で、愛しい人の両手を絨毯に押し付け、封じていた。
こうしないと、斗貴子さんは……手の甲を噛むから。喘ぐ声を漏らしたくないと、噛むことで防ごうとするから。
「美女の手に……傷は似合わないよ……」
「んんっ! そっ、そんなこと……キミが……カズキがっ……ヒドイ事……するからっああっ……やめぇ……っ! もっ、もう嬲らないでぇ!」
「っえ、あのっ、その……わざとでは……」
M字型に大きく開いた脚の間に身を置き、俺はいよいよ、斗貴子さんの中に入ろうとしていた。
話す間も腰を動かし、ガチガチに硬くなった肉槍の先っちょで、熱を帯びる姫花の入口付近を内側から擦り回している。決して、楽な動作ではない。少しでも動きが大き過ぎると、折角あてがった穂先が外れてしまうのだ!
――あくまで根気良く、ねちっこく動かなくては!
「うっ! くっ! あっ! あふっ! ふぁああっ! ひどっ! ひどいぃいいっ!」
「くぅ……後ちょっとだけ……。斗貴子さん……ちょっとだけ我慢して」
言い訳になるが、俺としても今の状況は非常に辛い……。
――ここまで来たら一刻も早く、いきり立つ本能の根元まで斗貴子さんに包まれたいのにっ!
指で、姫花を左右から隠す柔丘を、押し広げたまでは良かったんだ。
羞恥で顔を鮮紅に染め、目を瞑って横を向く斗貴子さん。その、あまりの可愛らしさに喜色を隠しもせず、俺は前人未到の姫秘境へ肉槍を以って分け入ろうとした。
「あっ、あっ……カズキの熱いのが……触って……」
「斗貴子さんも……すごく熱いよ……」
ストロベリーな遣り取りをしつつ、俺は数ミリ腰を進めた。我が猛々しき肉槍は、姫蜜をたっぷりと浴びる歓迎を受け、喜び勇んで更に前進を図り……そこで止まってしまった。
何たる事か! 如何に霊薬の効果で濡れそぼっていようとも、斗貴子さんの青き姫花は、未だ充分にほぐれてはいなかったのだ。
――けれど……そうこれは、斗貴子さんが高潔なる……真に気高き乙女として生きてきた証!
「……カズキ……?」
「大丈夫♪」
唐突な"動作停止"に、薄目を開けた斗貴子さん。俺の百万倍は不安を抱えている筈の彼女に向ける笑顔が、強張らないように気を付けつつ、脳内でなけなしの知識を必死に検索した。
感触から……強引に押し入ることも可能ではあると知れた。でも……。
――やだ、絶対!
霊薬の効果で、している最中なら痛みは抑えられるかもしれない。しかし、効果が切れたらどうなってしまうだろ……。
破瓜の傷みは、場合によっては一週間も女性を苛むそうだ。強引にしてしまったら、まさにそうなるだろう。斗貴子さんに、余計な痛い思いなど与えたくない。
――ここは焦っちゃいけない。この状態のまま……ゆっくり動いて、ほぐれるのを待つしかない。
獰猛な肉槍を微かに残る理性で制し、作戦活動を始めた。
「えっ……あっ、やっ、やだっ! もう……だいっ……じょうぶっ……いっ! んっ! んんっ!」
予想外だったのだろう。破瓜の痛みに耐える準備だけをしていた斗貴子さんは、大きく首を振った。悩ましい響き帯びる声を、咄嗟に手で抑える。それでも、背が弓なりに反ってしまうのは止められなかった。
――柔らかい……。
俺の胸板に当たったのは、斗貴子さんの胸。
ほっそりした躰の上で、小振りながらも抜群に形良い魅惑の双丘が、存在を主張する。服越しでも、その弾力を感じるのに、何ら障害はなかった。
「んっんっんんんーーーっ!!」
思わず体を浮かせた俺が、両手で二つの膨らみを包むと、斗貴子さんの喉から高い悲鳴が洩れた。
「ひどっ……かずきぃ……の、ばかものぉ……っ! こっ、こんなのぉ……やぅ、やるならひとおもいにっ」
あくまで優しくマッタリと、俺の肉槍は先端で、愛しい人の姫花をなぞっている。ひょっとすると、不知ゆえに夢で見ようにも見られなかった"姫の肉真珠"も、なぞってるかもしれないが……よく分からない……。
たとえ速度はカタツムリより遅くとも、少しずつは入口から分け入る距離を増している……筈だ。
「やっ……なぁっ。かず……きあっ、ぁああ……」
俺が繰り出すこの刺激は、緩々としたものだ。だが、途絶えることのないものだ。続ける事で、挿入前に青き処女花を出来るだけ解きほぐすしておく。
すべては、唯一無二なる斗貴子さんの為に!
でも斗貴子さんは、もう止めろと言う……。
恥ずかしいからと……。充分に受け入れられるからと……。辛いからと……。
「そうは言われても……」
俺の目には、斗貴子さんが辛そうには見えない。
上品な朱色に染まった顔のみならず、ときおり肩まで振り乱れる斗貴子さんの表情といったら!
眉を顰めるようでありながら……微笑むようで……。
拒絶の言葉を紡ぐ唇の端から、愉悦の液体を零しそうなほど嬉しそうで……。
――悩ましい吐息の斗貴子さんも……なんて素敵なんだ♪
「あと……ちょっとだけ……辛抱して、かなり……グショグショになってきてるから……」
「ばっ、ばかぁ! だっ、誰のせいで……誰のせいで……ぁ!」
ひょっとして貴女は、意地張りが過ぎるのではアリマセンカ。
――俺だって、耐えてるんだよ。擦り付けているのは、肉槍の先っちょ極僅かなのに……。斗貴子さんのヌルヌルした姫花が、温かく柔らかく吸い付いてくる感触……素晴らしすぎる。触れているだけでイってしまいそうなのを、両親だの妹だの(要するにセックスについて話したくない存在)の顔を思い浮かべて、必死に我慢してるんだ。
脳みそでは、こんなことを考えていた。俺の目は、少しずつ蕩けていく斗貴子さんの姿を、網膜に焼き付けんばかりに観賞している。耳は、愛しき人の痞えたり時々ウラ返ったりする声を堪能している。
心のどこかで「もう大丈夫かな、挿入ても……」などと思いながら、額に汗して腰を動かしていると、不意に斗貴子さんの声が調子を変えた。
「あっ、あっ、あっ、やぁああっ! もうだめっ、だめぇえええっ!」
「と、斗貴子さん……」
流石に腰を止めた俺を、斗貴子さんは恨みがましい目で見やった。
「ひっあっ、ひくっ……霊薬には……あの霊薬には……催淫剤も含んでいたんだぞっ! それなのに、それなのにキミは! もうっ……モウオネガイダカラ……イジメナイデ……きちんと……」
「……ごめん」
涙混じりに詰られ、馬鹿の一つ覚えな「ごめん」を繰り返す俺。斗貴子さんの細い両手首を握るのも止め、彼女の腕を開放した。
「斗貴子さん……俺……」
「カズキが……私を気遣ってくれて……ぅぁ……いるのはっ……分かる……。でも……もう限界……これ以上は……本当に私……気が狂いそうぅ」
とてもじゃないが、「媚薬と催淫剤の違いってあるの」と訊けたもんじゃない。話を逸らしている余裕は無い。
「分かった……するよ」
俺は、絨毯と斗貴子さんの背との間に腕を滑り込ませた。肘がちょっと痛いけど、この方が斗貴子さんを抱き締められる。この方が斗貴子さんの温もりを感じられる。
鼻先同士がくっつきそうな距離で、斗貴子さんが黙ってコクリと頷くのが見えた。
先端数ミリだけとは言え、肉槍は姫花に入りかかっているのだから、"場所が分からない"なんて事は無い。肉の花ビラも、先刻よりずっと柔らかくフックラしているようだ。
問題なのは……。
「さっ、さあ……何を躊躇っているっ。カズキ、今度こそひと思いにズバッとやってくれ」
薬に正気を失いかかった姿はどこへやら……。明らかに斗貴子さんの声は強張っているのだ。
――斗貴子さん……それじゃ介錯だよ。まったく本隊の阿呆どもめっ! なに考えて斗貴子さんを脅しつけやがったんだ!
これでは、いくら「力を抜いて」とか言っても無駄だろう。力むと余計痛いそうなのに……。
――普通こういうのは、刺さった矢を引き抜く時の措置だけど……。やってみるか……。
穂先が外れてしまわないように注意しつつ、俺は少し背を伸ばす。不安を通り越して"怯え"の色さえ浮かべる斗貴子さんのオデコに、キスをした。
「カズキ?」
「痛くないようにするオマジナイ」
戸惑う斗貴子さんに微笑んで見せると、ややあって笑みを返してくれた。
「まったくキミは……」
愛しい人の声から硬さが抜けた瞬間!
「え?……いっあ゛……ぁああ……ぁぁあああっ!!!」
俺は躊躇いを捨て、一気に斗貴子さんのナカへと肉槍を挿入していた。
穂先は楽々と抵抗――処女膜――を突き破り、立ち塞がると言うよりも纏わり付いて引き止めようとする膣壁を掻き分けて、最奥めがけ疾走した。
斗貴子さんが悲鳴をあげたのは、"我が本能"そのものである肉槍が根元まで納まり、穂先が目的地――膣の最奥、子宮口を――に突き当たってからであった。
「卑怯者っ!! カズキの卑怯者っ!!!」
「ごめん」
一言だけうめいて、俺は斗貴子さんを抱き締め、彼女が落ち着くのを待った。
気が逸れている瞬間の一発勝負は、失敗だったろうか? 不意打ちされて逆上する麗人の腕は俺の背後に回された。爪が何度も背中に突き立ち、小さな拳骨が俺の後頭部をポカポカ打つ。だが、この程度は何でもない。斗貴子さんが味わったであろう痛みに比べれば……。
華奢な手の"嵐"は突然に止んだ。
俺の体の下で斗貴子さんは、驚いたような困ったような表情のまま、己を染める"赤"の意味合いを、大きく変えていく。"怒り"のそれから、"羞恥"と"快楽"のそれへ……。
「やっ、やだ……何で……何で……」
「斗貴子……さん?」
「カズキ……。私は……変だ……」
「そんなに痛いの」
「んんっ……違う……痛みは……ピリピリとした……ハァ……あっ……あぁあぁ」
瞬時に戦略を立てる明晰な頭脳と、強い意志を併せ持つ、"錬金の戦士"津村斗貴子。その斗貴子さんをして震撼しからしめるは、予想と余りにも異なる現実。
「あぁ! あっ!あぉ……オナカの中にキミのが……っ! アツイ……アツイの……っ!」
「痛いの……苦しいの……斗貴子……さんっ」
「ちがう! ちがうよぉ!」
自分の方が苦しそうな声で訊ねた俺だったが、斗貴子さんは気付かない。恍惚と火照り、戸惑って激しく首振る彼女に、気付く余裕は無いのだろう。
俺の背に回っていた細腕に、グッと力が入る。抱き締められるまま俺は、灼熱色をした斗貴子さんの左耳朶に、唇を寄せた。
「痛く……ないの? さっきは……あんなに……痛がって……叩いて……」
「あっ、あっ、あれは……ぁ! ビックリして……ぇああっ! いっ! あっ! ああっ……はずなのに……痛いはずなのにっ!!」
斗貴子さんは、姫壷の奥深く差し込んだ俺の肉槍を、"アツイ"と言う。けれど……。
――貴女のナカは……それ以上に熱いですぅ♪
最初こそ入口の"処女故の堅さ"に、不安になったけど……。その、「ちゃんと全部入るかのか」とか……。こうして根元まで肉槍を納めてみると、斗貴子さんの姫壷は以外に奥深いと知れた。
入口はきつく、「ギュギュッ!」と肉槍の根元を締め付けてくる。「粘液をたっぷりと含んだ真綿で、強く強く締められている感じ」とでも言えば良いのだろうか。
対して、壷の中は広い感じだ。熱くヌメヌメと……。決して、漫然と包み込まれているだけな感触ではない。無数の触手のような蠢く何か――これが膣の肉襞なのか?――が、絶えず俺の肉槍に吸い付き、そのまま扱き上げている。牛の乳搾りみたいに、揉み立てる。まるで、百人の斗貴子さんが、一度にフェラチオしてくれてるみたいだ!
――ヤバ……。入れてるだけでイッちゃいそうだ……。
斗貴子さんのココって、もしや……。あの本――「エッチでキレイなお姉さん」――で言うところの……"巾着"なのか?!
「あっ! あっ! 熱くて! カズキのが熱くてぇ!」
「斗貴子さん……動いても……いい?」
喘ぎだしちゃいそうな内情を隠し……切れたかどうかは不明だが、俺は斗貴子さんに訊ねる。このまま、何もしない内にイッちゃったら……。"男"として悲し過ぎるよ。
「んっ、んっ。いい……のに……いちいち断らないで……。カズキの……したいように……っ! ひゅあっ! あっ! あっ!」
「斗貴子さん……俺、凄く嬉しい♪」
いくら"激しい痛み"は無いらしいと言っても、斗貴子さんが初めてな事に代わりはない。
がっついてしまわないよう気を付けて、俺は殊更にゆっくりと腰を動かし始める……。
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