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日本人の心の謎


April.19.2004





つづき
江戸時代、日本は鎖国政策を敷いたわけじゃが……。

かおる
キリシタンの蔓延で、日本が西洋の植民地化になるのを恐れたわけですね。

つづき
一般には、そういうことになっておるようじゃな。
が、しかし……。
かおる
しかし、何でしょう?

つづき
鎖国政策が敷かれる前に、貿易等や、留学で海外に渡航していた日本人などもいたわけじゃ。
彼らは、日本人であったにも関わらず、帰国したら死罪じゃと言われておったのじゃな。
キリシタンに改宗したからという理由からでもなく、とにかく海外から帰国することは、ご法度じゃったわけじゃ。
船が難破し漂流した者も、外国から帰国しただけで罪人扱いで幽閉の憂き目にあっておった。
なぜじゃろう? とても、理不尽なように思えるのじゃが?

かおる
それは、まあ、海外で仕入れた知識や思想が、
幕府にとって都合が悪かったり、悪影響があるという考えからじゃないでしょうか?
つづき
そうだとしたら、幕府は、いったい何をそんなに恐れていたのじゃろうな?
江戸時代、こっそり海外に在住した日本人は、少なくは無いが、
幕府に影響を及ぼすほど多くも居なかったはずじゃ。

かおる
とにかく、ひとりでも、幕府よりも海外に精通した知識を持つ庶民がいること自体が、
許せなかったんじゃないでしょうか?
幕府が、庶民に向けて説明していることが、嘘だとばれるのもまずかったでしょうし、
もっと単純に、鎖国状態の日本から飛び出して外国へ渡航した者の存在自体が、
幕府に対する反逆行為であり無礼だという考えだったのかもしれませんね。

つづき
そのような幕府の愚かな行為は、日本の国際化を遅らせ、
世界情勢を見誤る要因にもなったじゃろう。
かおる
でも、現代は、江戸時代じゃありませんから、
外国から帰国しただけで犯罪者扱いになることはないでしょう。
つづき
わしも、そこまで日本が愚かとは思いたくないがの。

かおる
今は、海外でがんばって有名になった日本人は国民的ヒーローですよ。
スポーツ選手であったり、ノーベル賞受賞者であったり。
つづき
うむ。 日本人というのは、海外で実績を認められるということが、ことのほか好きのようじゃ。

かおる
外人の目を気にしすぎる傾向はあるでしょうね。
海外に行ったら、日本人として恥ずかしく無いよう、
礼儀正しく行儀よく振る舞うことが求められてるようです。
海外で恥ずべき事件を起こした日本人は、非国民呼ばわりになったりしますね。

つづき
日本人の美徳というべきか、名誉を重んじ、礼儀正しく、人様に迷惑をかけないようにと、
そういう道徳教育がなされておるからのお。
かおる
太平洋戦争後は、とくに、外国に対して、
迷惑をかけないようにという意識が強くなってるようですね。
日本から外に出て、何か騒動起こしたら、もう日本に顔向けできないとか。

つづき
悪く言えば、日本全体が村社会化しておると言えぬじゃろうか?

かおる
島国意識から抜け出せないといことでしょう。
日本の外で起こってる問題には、あまり首を突っ込みたがらないというか。
首を突っ込んでトラブルを起こしたら、首を突っ込んだほうが悪いみたいな。
とにかく、関わらなければ、恥をかくこともない、ということですよ。

つづき
わしは、日本人が、海外に対してコンプレックスを持っておる証じゃと思うのじゃ。
江戸時代の鎖国政策も、その延長じゃったろう。
海外に目を向けると、どうしても、日本人の貧しさに、劣等感を感じてしまうのじゃろう。
そして、それを打ち消すように努力した結果が、戦後の経済成長につながったのじゃろう。
日本の古来からの良き習慣は廃れ、建築物は取り壊され、近代的なビルの街並みへと変わった。
それで日本人は、外国に追いついたと感じる一方、一抹の喪失感も覚えておるのじゃろう。
日本人は、日本の誇りを、どこに持てばいいのかも、見失っている気がするのじゃ。

かおる
日本人の誇りをしっかり意識してる人は少ないんじゃないでしょうか?
だから、日本人は、他人の目を気にして、外国に対して恥をかくことに過敏に嫌い、
海外で有名になった日本人は国民総出で褒め称えるのでしょう。
日本人の礼儀正しさの裏には、恥を嫌うという意識があるのでしょうね。
今は、恥を嫌う一方で、誇りの持ちようがわからない、アンバランスな状態にあるのではないでしょうか?

つづき
日本人の、心のアンバランスさは、深刻のようじゃ。
心が乱されると、ときに冷静な考え方、対応ができなくなるものじゃ。たとえば……。
かおる
たとえば?

つづき
先日、イラクで3人の日本人が誘拐され、
無事に開放されたわけじゃが、
日本政府は、何と、開放を喜ぶというよりも、
3人の日本人を非難し始めたのじゃ。
しかも、救出費用を、負担しろとまで言っておる。
イラクの誘拐犯を断罪するよりも声高らかに、
まるで、3人が犯罪を引き起こしたかのようにじゃ。

かおる
あれは、自己責任ですよ?
イラクからの国外退避勧告が出ていたのに、勝手に入国したわけですから。
つづき
自己責任の用法が間違っておる!

かおる
何がですか?

つづき
自己責任の及ぶ範囲は、自分自身に危害が及ぶ範囲でしかないはずじゃ。
つまり、3人がイラクで誘拐され、殺害されたとしても、それは自己責任と言ってよい。
しかし、政府が3人を救出するために費やした経費は、範疇外であるはずじゃ。
それは、政府側の自己責任であるべきじゃ。

かおる
政府側の自己責任って何ですか?

つづき
政府が3人を救出するために費やした経費」とは、
つまり「政府が責任追及されるのを回避するための経費」なのである。

かおる
政府側として、「政府には一切の責任は無いですよ」ということを言いたいわけですね。

つづき
そうじゃ。 政府には責任は無く、政府の方針に誤りが無いことを、
国民に説明すればいいだけのこと。早い話が、
イラクで邦人が何人誘拐されて酷い虐殺をうけたとしても、自衛隊は撤退させない。
という政府の方針を明確に国民に語ればよいだけのことじゃ。
そうすれば、邦人救出の経費も少なくできるし、
そこで初めて、「誘拐されても自己責任」という話が出来るのである。

かおる
そんなこと言ったら、マスコミから突き上げくらうでしょうね〜。
邦人保護は、政府の義務でもあるわけだし。 命の尊さは、皆がわかってることです。
つづき
しかし、いよいよとなれば、3人の命がどうなろうと、自衛隊撤退はさせないという、
意思表明を政府はすることになったであろう。
いや、その意思表明は、今の時点であっても、するべきなのじゃ。
それが、自衛隊を派遣した政府の説明責任なのじゃ。
そこを、うやむやにしたということで、政府には自己責任があるということじゃな。
しかし、政府はいち早く、責任回避のために、誘拐された日本人3人を悪者にすることで、
責任転嫁を計ろうとしておるように見える。
残念なことに、そこを追求してるマスコミはほとんど見たことが無い。
大方「自己責任」という言葉に惑わされ、あたかも、3人がすべて悪い、という風潮になっているようじゃ。
本人達もそう思い始めているようじゃが。 嘆かわしいことじゃ。

かおる
そのかわり「誘拐犯の側は、3人に親切だった」という報道もよく見ますね。

つづき
まるで、「一番迷惑をかけたのは、イラクにいった3人」のようじゃな。
テロに対する非難声明はどこへいったのか?

ここに、川口外務大臣談話という記事があるので要約してみようぞ。
1、人質解放を、心から喜びお礼を申し上げたい。
2、退避勧告が出ている地域への渡航の自粛。
3、人質をとる行為には、屈せず毅然として対応する。イラクの人道復興支援の実施に努めて行きたい。
4、他国の人質の無事解放を強く願っている。

2、3、は、順序が逆なのではないのかの?


かおる
騒動の原因になったのは、イラクの誘拐犯よりも、
退避勧告を無視した日本人3人組みというわけですね。
結局3人は日本人の恥、という流れなのでしょう。

つづき
のこのこ、外国へいって騒動を起こせば、何が原因であろうと、出て行った日本人が悪いという、
島国根性というか、村社会のみっともない部分が、見えてしもうた気がせぬか?
非常に、日本人的な、話の流れであろう。
はたして、海外のメディアはどう見ておるのじゃろうな?
もしも、日本政府が、救出費用を数千万、数億単位で被害者に請求したとしたら、
またぞろ、海外のメディアは、ニッポン人を奇異な目で見ることになるじゃろうて。
日本人が、それを望んでおるのじゃから、いたしかたないが。

かおる
人質から解放されても、イラクに残りたいと言ったことも、政府を怒らせたようですね?
救出費用請求の話は、いわば「脅し」でしょう。 これ以上、余計な事を言うなと。
つづき
政府は、テロに対して毅然とした対応をとったと胸を張って言っておるが、
このように、自国民に対し、政府のおとなげない姿を晒すことは、
政府がこの問題に、相当、神経をすり減らしていたということであって、
かえって、テロリストに対して、効果てきめんという印象を与えてしまうじゃろう。

かおる
それは、多いにありますね。
政府も、もっと冷静に対応して欲しいですよ。
3人を非難するということは、結局、自衛隊問題が政府の急所ということをばらして、
痛いところを突かれたという事実を認めることですからね。

つづき
結局、政府や多くの日本人が激怒しておるのは、
イラクに自衛隊を派遣した行為を正当化するのに精一杯で、
自衛隊派遣がイラクの貢献に繋がるのじゃという「誇り」を持つまでのゆとりもなかったということじゃろう。
自衛隊派遣は、外交上、それ以外に日本は打つ手が無い、という消極的派遣じゃからな。
3人に怒りの矛先が向けられたのは、打つ手なしという政府の苛立ちからくる、ただの八つ当たりじゃろう。
やがて頭を冷やせば、3人に救出費用を請求するなど、その愚かさに気づくじゃろうて。
イラクの誘拐犯を逮捕し、彼らに損害賠償させようという声は何故起きないのじゃ?
まして、憲法で保障されてる、渡航の自由、言論の自由までもを脅かすなど、民主国家とは思えぬ暴言じゃ。
国民は、国家の管理下に置かれるものではない。 国民が国家を作っておるということを再確認すべきじゃな。
日本は、江戸時代から、まるで変わってないようじゃな。

かおる
政治家も、マスコミも、基本原則を忘れてしまうほど、日本は切羽詰ってるのでしょう。
とうぶん、日本が誇りを取り戻すことは無理くさいですね。
イラクの誘拐犯も、あまり日本を追い込まないで欲しいものです。

つづき
ともあれ、3人が、無事に解放されたのは喜ばしいことじゃ。

かおる
とりあえず、3人はイラクでの人道支援目的や取材で来たわけで、敵対勢力ではないと、
誘拐犯にも認められたのがよかったみたいですね。
つづき
うむ、3人は、ささやかながら「誇り」を持ち、志を高くして、イラクへ向かったのであるからのお。
その純粋な気持ちが、イラクの誘拐犯にも伝わったのであろう。
かおる
日本人には、伝わってないみたいですが。
ただの自分勝手で無責任な行為ということで。
つづき
皮肉なものじゃのお。 イラクでよりも、過酷な拘束状態が日本で続くことになるのであろうか?
今、3人が抱えるジレンマを思うと、胸が締め付けられる思いじゃ。
かおる
3人の気持ちなんて、誰も気にしてないようですね?

つづき
肉親でさえもな。

かおる
それが、日本人というものですよ。









付録・年表




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