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あたまとおつむの謎


Feb.6.2004





つづき
突然じゃが。

かおる
なんでしょう?

つづき
下の言葉を聞いたとき、どんな感じを受けるじゃろうか?


「きみ の あたま は すごい」
「ちみ の おつむ は すごい」


かおる
「すごい」と、言われても、
語感的には、あきらかに、前者にくらべて、後者は馬鹿にしてますよね?
つづき
うむ。 子音や母音がちょっと変わっただけで、意味をまったく変えてしまうのじゃ。
ヤマトコトバというものは、恐ろしく意味深い構造をしておるわけじゃな。
かおる
というか、「ちみ」って、君を指す古語じゃないでしょ? 漫才じゃあるまいし。

つづき
いやいや、「ちみ」、というのは、昔からある、れっきとした蔑称なのじゃ。
漢字では「魑魅」と書く。 これは、古来より、神に対する妖怪のことなのじゃな。
かおる
「魑魅魍魎」って日本語でしたっけ?
「おつむ」も蔑称なんですか?
つづき
その前に説明をせねばならんが、「あたま」は、昔は、「かぶ」「かしら」と言っておったのじゃ。
わしは、「つ=集まる」「か=遠い」という意味を感じておったが、
「つ(ち)」は小さいという意味もあり、「か」は大きいという意味もあったわけじゃな。
遠き古代の日本語の祖語を思わせるであろう。
おつむ」は、蔑称ではないが、「幼児の頭」という意味だったじゃろうて。
それに対する語句が「おかぶ」じゃな。
」と「」には、対になる語句が多いようじゃ。
手っ取り早く表にまとめてみたぞよ。 ちと、怪しい語句もまじっちょるかもしれんが。

「か」=大、上「つ」=小、下意味
かぶつぶかたまり
かぶり
かむり
おかぶ
つぶり
つむり
おつむ
かぶす
かぶる
つぶす
つぶる
見え無くする
見え無くなる
かぶし
かぶら
つぶさ
つぶら
様子
矢の先、丸い
かむぶつむる神ぶ、瞑る
かみつみ(ちみ)神、罪(魑魅)
かちつち歩いていく、歩かない
かようつめる通う、詰める
かやつや茅(がさがさ)、艶(つるつる)
からいつらい気持ち
がらつら表面、顔立ち
かはらけつばらか大きいもの、細かいもの
かゆつゆ料理の具の有無
かまどつま広い場所、隅の場所
かまえるつかえる労使関係
かばね
しかばね
つぶね
しづむ
職業の姓、奴・しもべ
おちぶれる
かた
かれ
かどめく
かたなし
かたらう
かたらか
つて
つれ
つとめる
つたない
つたえる
つたよふ
親方、同僚
仲間
仕事の姿勢
能力がない
伝言
早い、ぶらぶら
はたらく
(かたらく)
じだらく
(つてらく)
働き方
かく
かむ
かまう
こねる
かけ
かける
かける
からぐ
かんぬき
からめる
からまる
つく
つめ
つまむ
つねる
つけ
つける
つる
つぐ
つらぬく
つむぐ
つらなる
棒を使う
歯、指先を使う
少し加工する
大きく加工する
欠け、付け
液体を使う
掛ける、吊るす
接着する
棒を通す
繊維を加工する
複雑、繊細
きるちらすちぎる
かたまるつづまる物質の状態
たまる、つまる
かしらつづしるリーダーシップの有無
かましつつまし騒音
かしるつつみ呪い、災い


つづき
「かぶ」は、「こうべ」「くび」へと変化したじゃろう。
頭の、最も古い言葉は、「かぶ」と言う事になるな。
「あたま」は、一説には「ひよめき」という赤子の頭の泉門を指していたらしい。
「たましい」の宿るところと考えられていたのかも知れぬ。

かおる
はたらく」「じだらく」の分類は、これで合ってるんでしょうか?
「はたらく」は、「はた(周り)が楽になる」という意味だと、僕は昔、聞いたことがあるんですが。
つづき
いやいや、そうでは無かったということじゃ!
わしも、表を整理しているうちに気がついたのじゃが、これは意外な発見じゃった!
かた」とは、自分で仕事の出来る人間のことじゃ。 つまり「親方」のことじゃな。
つて」とは、「仕事仲間」のことじゃ。 「人づてに仕事を頼む」と言うじゃろう。

はたらく」は、昔は「かたらく」と言っていたのじゃ。
じだらく」は、昔は「つてらく」と言っていたのじゃ。

「はたが楽をする」は、俗説だったことを、分類表は示唆しておる。
正しくは、「親方」や「仕事仲間」が楽になるという意味じゃな。
「つてらく」は、仕事仲間が楽する程度にしか働かないという意味じゃろう。

かおる
そうなんですかね〜?
どっちも近世語だと思いますが……。
つづき
さらに、「かち」とは、「かのちへ、歩いていく」という意味があるのじゃろう。
戦のために」と、言ったばあい、「勝ちに行く」と、同義語になるわけじゃな。
かおる
かのち」での戦が、「勝ち」の語源だと言うわけですね?
なんか、レヴェルの低い語呂合わせばっかり聞かされても、つまんないなあ。
つづき
何を言うか! さっきの表を見て、何か感じることがあるじゃろう?

かおる
別に、何も感じませんが? よく古語辞典調べて、ピックアップしてきたのはわかりますけど。

つづき
あ〜。 情けない。 あの表から、何も読み取れぬとは……。 ちみのおつむも、たいしたこと無いのお。

かおる
(むか!) あの表に、何か秘密でも?

つづき
よくみよ! 「か」「つ」のような基語で対比されている言葉は、
一般生活の中の、適当な語句などではないぞ?

仕事の中で生まれた、用語ばかりなのじゃ!


かおる
なるほど! たしかに……。
もっと、生活臭い語句があってもいいはずなのに、語彙に偏りがあるような?
つづき
ある仕事場の中で、「かばね」が、「つぶね(しもべ)」に指示していた言葉があったとしよう。
「語る」は、親方の言葉であり、「伝える」は、仕事仲間に言う言葉じゃな。 まったくその通りじゃ。
「つま」とは、「部屋の端」という意味じゃから、「かま」とは、大部屋のことを指していたのじゃろう。
同じ「かま」の飯を食うとは、「釜」ではなく、「同じ住居」という意味だったのじゃ。 
身分の高いものは「かゆ」をすすり、身分の低いものは「つゆ」を飲んでいたことじゃろう。

かおる
もう一度、表を見てみると、リーダー格の親方のもと、大人数の作業員をかかえた工房があり、
能力に応じて仕事を分担させ、作業をこなしている様子が、伺えるような気がします。
古代人の、仕事に対する姿勢や、ぼやきなんかも聞こえてきそうですね。

つづき
その仕事とは、どんなものじゃったろうか?
液体を「かける・つける」という作業とは、漆器かも知れぬ。
「かく・つく」など、手先を使う作業は、模様付けかも知れぬ。 ヒスイに穴をうがつ作業かも知れぬ。
「かたまる・つづまる」とは、粘土を乾燥させ、「かはらけ」を素焼きしたときに使う言葉であろう。

これらは、古代の生活の中で、ばらばらに生まれた言葉ではなく、
大勢が集まって、共同作業をする中で、はじめて生まれた言葉であったに違いない。
これぞまさしく、古代において、職業、工房と呼べるものが出来はじめた頃のもの。

縄文時代の、職人集団の専門用語なのじゃ!!


古代、世界で初めて土器を大量生産し、遠く太平洋の彼方まで縄文式土器を輸出した職人達がおった。
先達の技は、日本人の手先の器用さとして、絶えることなく、現代まで受け継がれているわけなのじゃな。



かおる
縄文時代の職人集団かぁ、ロマンですねえ〜。

つづき
かおる君! わしの研究は、ネタに終わらず、日本の言語学界に旋風を巻き起こすやもしれぬぞ!

かおる
それはない。(キッパリ)












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