「ンッ…んん…ムム……」
 途端に馴染みのない淫感が秘部に渦を巻く。フェラチオによって生じるゲルのペニス性感が反転し、自らの身体感覚として跳ね返ってくるのだ。舌で亀頭を舐めると、膨張した自分のクリトリスが舐められているような感覚が発生する。
 (こ、こんな……変になりそう……どうしよう……)
 卑猥なペニス感に呼応するかのように、股縄に刺激されている花びらやアヌスにも、これまで体験したことのない妖しい痺れが走る。
 「そ、そうだ。その調子だぞ。これから精液をたっぷりごちそうしてやるから全部飲め。そうしたら股縄でもっと気持ちいいことをしてやるぞ」
 ゲルがペニスをぴくつかせながら言う。肉柱に力が入るたびに、伝染してくる性感も高まって、シェリルは堪えきれず腰をうねらせる。
 (駄目っ、いけないわ…………でも……たまらない……あそこから何か淫らなもの漏らしてしまいそう……こんなの初めて……)
 次第に脳髄が痺れ、淫靡な射精の予感に思考が占領されていく。シェリルは絶頂への期待を込め、ペニスへの奉仕に力を込めた。
 しかしその瞬間、なぜか感覚のシンクロが急速に薄れ、ゲルの思考の内からはっきりとネミスの本拠の場所が言語化されて浮かび上がってきた。
 《デルタシティ北東地区……タリムタワーの地下15階に入り口……》
 シェリルは一瞬、淫蕩な感覚の中で、思考を麻痺させたまま陶然としていた。しかしすぐに夢から覚めたような気分になり、慌てて状況を把握しようとした。そこに闇の声が語りかける。
 『シェリルよ。よくやった。任務は完了だ。ゲルを倒してよいぞ』
 その指示に促され、シェリルははっと理性を取り戻し、淫戯を中止する。そして即座に両手を縄から抜くと、油断しているゲルに向かって強烈な衝撃波を浴びせかけた。
 「うぐっ、ああっー」
 ねらい通り衝撃波は威力を発揮し、ゲルは祭壇の向こうへ吹き飛んだ。
 「ハア、ハア」
 シェリルは上がった息を整える。見る間にゲルの姿は液状化して消えていった。
 『よいぞシェリル。こうしてわざとネミスに捕らえられ、淫らな責めを受けるのもお前の任務なのだ。考えただけでゾクゾクするであろう。新たに覚えた性感はどうだ?満たされぬままに淫らな欲望が膨らんで、フラストレーションでどうにも堪らぬだろう。よし、少し高まった欲情を満たしてやろう。教会の中で背徳の快楽に浸るがいい。少し目を閉じてみよ。次に目を開くと、お前は教会の懺悔室にいる。司祭に己の罪を告白しているところだ。ゆけ。』
 闇の声が異空間にこだました。

 一瞬目を閉ざした後、シェリルが目を開くと、あたりは一変し、シャドウの言う通り、いつしかシェリルは薄暗い懺悔室に跪いていた。
 頭の中が混乱する。まだ淫戯の記憶が鮮明で、ペニスの残像が浮かんでは消える。その上、身体はまだ火照ったままで、淫欲がじれったいほどに高まっている。しかも、乱れた服装は元通りになっているものの、衣服の下にはまだ先ほどの淫らな縄が身体に絡みついているようだ。しかしこうして懺悔室にいる状況に、なぜかシェリルは不合理を感じなかった。シャドウの思考誘導に支配されてしまっている。
 小窓の向こうに司祭がいて、シェリルに話しかける。
 「さあ、もっと懺悔しなさい。それであなたは感じてしまったのですか?」
 司祭の声には、シャドウの低く震えるような声が重なっている。
 シェリルは何かに駆り立てられるように、懺悔の言葉を発していく。
 「司祭様、どうかお許し下さい……私は……みだらな女です。ネミスの男に悪戯されて……なのに、感じてしまいました。」
 「そう、人間誰しも肉欲には弱いものです。あなたはもっと性の快楽に強くならなくてはいけない。今あなたを縛めている縄は、主が課した試練の具です。縄の縛めは逆にあなたを解放してくれる。己の身を快楽の海に投げ込みなさい。そうすればもっと強くなれる。目の前にある聖なるスティックを手にとりなさい。それがあなたを導いてくれる。」
 もっともらしく司祭が滔々と語っていく。シェリルは意識下に危険を感じながらも、そのまやかしの言葉に絡め取られてしまう。司祭の指示通り、シェリルは目の前に置かれている棒状のものに手を伸ばした。それは男根をかたどった半透明のディルドーだった。
 「さあ、スティックを見ながら思い出しなさい。あなたは先ほどどんな快感を味わったのですか」
 「そ……それは……」
 「偽らず、正直に告白するのです。」
 「な……何か……あそこが……膨らんで弾けそうな感じがして……それと一緒に…子宮の奥まで……これまで感じたことのない痺れが走って……あっ……」
 話している内に淫らな肉棒感がよみがえってきて、シェリルは思わず秘部を押さえた。
 「あなたはもっとその感覚に浸りたいのでしょう」
 「そ、そんなこと……」
 「考えただけで我慢できないのでしょう。ではそのスティックを舐めてみなさい。思い通りの快楽が与えられる」
 「………そんなこと……できない…」
 しばし考えてシェリルは躊躇する。
 「逃げてはいけない。快楽を恐れてはなりません。快楽に身を投じて、はじめてあなたは快楽を克服することができるのです。」
 司祭が誘いかける。
 シェリルは頭の中で激しい葛藤を繰り返したが、目の前の棒が何やら不気味な輝きを放った途端、激しい衝動に襲われてスティックに唇を付けた。
 「うっ…んんっ」
 紛れもなくあの淫猥なペニス感が秘部に蘇ってきた。また同時に縄が動きを再開して、シェリルの女の性感をくすぐる。
 「そう、それでいいのです。もっと舐めなさい。逃げずに快楽に身を任せなさい。」
 (ああっ……我慢できないっ!)
 シェリルはたまらずスティックを舌で舐め上げた。クリトリスの性感の上にペニスの疑似性感が重なる。
 「ンッ……ああっ…んんっ……あっ……」
 スティックに舌を這わせては喘ぎ、縄の動きに合わせてヒップを揺らす。跪いたまま、浮かせた腰を絶え間なくくねらせる。
 (ああっ…どんどん気持ちよくなっていく……)
 内腿の奥では粘液まみれの縄が女芯を擦り、スカートの中でクチュクチュと音が立つ。
 (あっ、あっ…またっ……はじけそう…)
 射精しそうな感覚が、寄せては返す波のように媚肉上で湧き起こっては遠ざかり、それを繰り返しながら、次第次第に高まっていく。
 シェリルはついにスティックの先端を口に含み、舌を使って激しくしゃぶり始めた。淫靡な射精感が急速に膨らむ。
 「さあ、そのまま快楽を受け入れるのです。私の目の前で……………………。そう、このシャドウの目の前でな。フッフッフ」
 司祭の声が突然シャドウの声に変化した。聞き覚えのある忌まわしい声を耳にして、シェリルははっと動きを止める。
 (どうして?……)
 小窓を見ると、そこにはシャドウの顔があった。しかも一瞬のうちに、ディルドーが本物の肉茎に変わっている。視線を上げると、それは縛られた本物の司祭のペニスだった。
 「お前はシャドウ!!これは一体……」
 シェリルは慌てて、ペニスから離れようとする。しかし既に遅かった。含んだペニスを抜き取る際の摩擦が最後の刺激となり、飽和点を超えたペニス性感がシェリルに反転して流れ込んでくる。
 (ううっ、だめよ!)
 内腿をきゅっと閉ざし、高まる性感を抑えようとするが、もはや歯止めがきかない。
 「そうだ。わしの目の前でイクのだ。」
 シャドウの言葉に呼応するかのように、股縄が激しく蠢いた。
 (いやあっ……いけないっ……)
 淫靡な快感が頂点に達する。司祭のペニスも脈打ちながら射精を開始した。
 (ああっ…キュンとして…何かっ、何か漏れちゃう…いやよっ……シャドウの前なのに、またっ……またイっちゃう)
 迸る司祭の白濁液を顔面に受けながら、淫らな痺れを感受して腰をブルブルと震わせる。シェリルは恥辱に身悶えしつつも、初めて体験する妖しい快楽の高みへと駆け上っていった。

 〈第4章 了〉