特殊部隊S.T.S. 美人超能力隊員シェリル
第2章 透視

by 影法師


 シェリルは子供たちを保護して駅員に託すと、ターミナルを出てS.T.Sの本部基地へと向かった。
 腰のホルダーには、先ほどの淫玉が入ったままである。早く基地に戻り玉を浄化しなければ危険な状況だった。しかし幸いにして、淫玉をホルダーに入れ超能力で呪力を封じ込めた今は、先ほど覚えた耐え難く妖美な感覚は幾分弱まり、シェリルは落ち着きを取り戻しつつあった。
 それにしても地下鉄での屈辱を思うと、悔しさがこみ上げてくる。採取した淫玉を分析し、次の機会こそは必ずシャドウの妖術を破ってやる。シェリルは堅く心に誓うのだった。
 秘密基地は駅からかなりの距離がある。そこでシェリルは人混みから離れた場所まで行き、超能力を用いてテレポーテーションを行うことにした。
 駅前の雑踏を抜けていく。やはり自分の身体がいつもより熱っぽいのがわかる。
 (早くしないと……封印したとは言え、淫玉の呪力は思ったより強いわ。仕方ない、あのビルの屋上にでも出て……)
 そう考えて、通りかかったビルに入ろうとしたその時、雑踏の中、シェリルの視界に一人の女の姿が飛び込んできた。
 (あれは!)
 衣服から体型、容貌までシェリルとそっくりの女。そしてその女が、一群の男たちと一緒に歩いていく。テレパシーを用いて、即座にその女の気を探知すると、そこから強力なネミスの妖気が感じ取れる。
 (シャドウめ、あれは手下の化身か。今度は何を……)
 よく見ると、偽のシェリルと連れだって行く男達は、先ほどシェリルに痴漢してきた乗客たちである。地下鉄で淫らな行為を仕掛けてきた高校生やサラリーマン風の男たちが、女に従って歩いていく。おそらくネミスは、彼らをアジトに連れて行き、完全に洗脳してネミスの戦闘員化してしまうつもりだろう。
 ビルの狭間に入って裏通りへと向かう彼らを、シェリルは反射的に尾行しはじめた。しかし内心では、現在の状態で敵を追うことに対し、いささかの躊躇も感じていた。地下鉄の一件によって、超能力レベルが一時的に低下しているのが自分でもわかる。更に今は、まだ淫玉によって、弱まったとは言え淫呪の被曝を受け続けている状態でもある。ここでの深追いは身の危険につながる恐れがある。しかしネミスの悪事を放置することはできない。ここはともかく彼らの行き先だけを確かめて、外の隊員に応援を頼むのがよいだろう。
 そう決心すると、シェリルは一定の距離を保ちつつ、彼らの後を追っていった。裏通りを更に場末の方向に向かうと、次第に周囲の人通りがまばらになっていく。そうして10分ほど歩いた後、彼らはある寂れた小さな旧時代風のビルの中に入った。
 シェリルは警戒しながら、そのビルに近づいてゆく。
 (こんなところに何があるのかしら)
 ビルのエントランスから中を覗くと、奥へ向かって真っ直ぐに、かなり長い通路が続いている。偽シェリルと男達はその一番奥まで歩いていくと、地下への階段を降りたようである。
 シェリルも続いて後を追おうとする。応援を呼ぶ前に、少なくとも彼らの入った部屋だけでも確認する必要があった。ある程度近づけば、敵に接触しなくとも透視能力を使って彼らの姿を確認することができる。
 恐る恐るシェリルはビルへと足を踏み入れた。するとビルに入った途端、シェリルの鋭敏な知覚が、得体の知れぬ何かに反応した。非情に微弱だが身体全体に降り注ぐかのような重苦しい空間の波動。
 (ここに確かにネミスの何かがある)
 シェリルは直観的にその波動を、ネミスの秘密施設が発するものと考えた。これまでも通常の超能力隊員では感じられない微弱な気配を感知して、多くのネミスのアジトを発見したことがあった。ここもそれらと同様の場所だとすれば、この機会に多くの一味を退治することができるかもしれない。
 更に周囲に注意をはらいながら、シェリルは奥へと進んでゆく。地下に降りる階段のところまで来ると、下方からドアが軋んで閉まる音が聞こえてきた。しかしそれと同時に誰かが階段を上ってくる足音がする。
 シェリルは咄嗟に、通路を隔てて反対側にあった上り階段の陰に身を隠した。発見されたときに備えて、戦闘のために気を充実させ、様子を窺う。足音から判断すると上ってくるのは一人だけのようだ。
 やがて次第に大きくなる足音とともに、全身黒ずくめの男が現れた。ネミスの一員に間違いない。男は一階の通路の様子を確認し、そのまま階段の近くにとどまった。おそらくそこで、外部からの侵入者がないか監視する役目なのだろう。
 (ネミスの戦闘員ね。しかたない、少し眠っていてもらいましょう)
 シェリルはしゃがんだだまま、ブーツの中に仕込んでいた小さなカプセルから、手のひらの上に白い粉末を取り出した。少しでも吸わせれば、その瞬間から敵を5時間は眠らせることのできる即効性睡眠薬である。
 風の方向を確かめ、男との間合いを計りつつ、粉末を男の方へと飛ばしていく。サイコキネシスを用い、確実に男の方へと白紛を導いた。
 狙い通り粉末は空中を流れ、男はゆっくりくずれるように床に倒れる。
 (たわいないわね…………しかし、何かしら、この感覚……)
 サイコキネシスを用いた瞬間、はっきりとはわからないが、何か神経に直接働きかけてくるものがあったような気がする。ビルに入った瞬間に感じた波動にも似たものが、今の瞬間、身体を貫いた気がするのだ。しかしそれは、サイコパワーを用いた一瞬だけで消えていた。
 (気のせい?
やはりパワーにムラができているのかもしれない。とにかく地下の様子を探り、すぐに本部に連絡しよう)
 シェリルは眠らせた男を物陰に隠すとすぐ、足音を殺しつつ、地下への階段を下りていった。
 地下にはやはり通路があったが、灯りが少なくて非常に暗いので、奥まで見通すことができない。しかし通路の右側にはいくつかの扉が見え、その内の一つから、壁と戸のかすかな隙間を通して、うっすらと光が漏れていた。
 ゆっくりとその扉の前に近づいてゆく。見るからに頑丈そうな鉄製の二枚扉で、中の物音は聞こえない。だが確かに人の気配が部屋の内側に感じとれる。
 (ここね。少しだけ様子を探って……)
 シェリルは透視能力を使って部屋の中を窺うことにした。透視には極度の集中が必要である。扉の面に右の手のひらを当て、軽くまぶたを閉ざし、思念を集中してゆく。やがて暗闇の中から、次第に映像が浮かび上がってきた。
 やや薄暗く、かなり広い空間。コンクリートむき出しの壁。そしてそこに掛かっている数々の責め道具。



 (ここはネミスの拷問部屋?)
 いかにも妖しげな部屋の内部だった。そして更に集中すると、ドアとは反対側の方に人影が見えてくる。さきほどの男たちが、偽シェリルを壁に押しつけ、取り囲んでいる。やはり彼らはここにいたのだ。
 続いて聞こえてくる内部の音声。
 『どうしてほしいんだ。言ってみろよ』
 一人の男が偽シェリルに言っている。よく見ると、取り囲む男たちはみな自分のペニスを取り出してしごいている。
 『痴漢されて、もう我慢できないんです。シェリルにもっと気持ちいいことしてください』
 偽シェリルはそう言うと、艶めかしい仕草でスカートをおろしてパンティを露出していく。それを見て高校生が堪えられず、精液を漏らして床に垂らしている。
 更に偽シェリルは上も脱ぎ捨て、豊かな乳房を露わにする。すると男たちが一斉に女体にからみつきはじめた。先ほどの痴漢行為さながら、大勢の男が女体に淫らな愛撫をそそいでゆく。
 『お姉さん、ボクのものを舐めておくれよ』
 高校生がそう言いながら、男の粘液を漏らしてねとねとになった肉棒を女体にこすりつける。
 正視しかねる光景に、思わずシェリルは眼を開き、透視を中断して大きく息をついた。
 (いやらしい……わたしの身体を使って何ということを……)
 眼もとがかすかに朱を帯び、美貌がほのかに上気している。偽者とは言え、自分とそっくりの身体が見せる媚態を目の当たりにして、言いようのない羞恥を覚えるのだ。
 シェリルはどう対処したものか思考を巡らせる。これではS.T.Sに応援を頼み、他の隊員を呼ぶことができない。こんな場面を他人の目にさらすことなどできるはずがなかった。しかし今すぐ部屋に踏みこみ、猥褻な行為をやめさせ、ネミスに戦いを挑むのも危険だろう。シェリルに化身したものの他に、まだ近くに多くの敵がいるかもしれない。
 (ここは一旦退却した方が……)
 今の疲労具合などを考えると、それがよいとシェリルは思った。それにしても、一般人をも巻き込み、よりによって淫らな行為に自分の姿を借用されることに、言いようのない屈辱を覚える。これから一体どのようなことを……
 もうここを出なければと思うシェリルだが、やはり自分の姿でどんなことをされるのか気が気でない。ためらいを感じつつも、何か強い力に引き寄せられるかのように、シェリルは瞳を閉ざし、透視を再開すべく念を集中し、鋭敏なテレパシーを飛ばしていく。
 そのとき一瞬、再び何か不思議な感覚がシェリルの身体を貫いた。身体の一部に感じるというよりは、脳に何かが働きかけてきたといった感覚である。だが、それも刹那のことで、ドアの向こうの映像が次第に脳裏に浮かんでくると、シェリルにはその奇妙な感覚が気にならなくなってゆく。
 実はシャドウの企みで、ビルの内部にまるで強力な磁場のように、淫導波の結界が張られていた。その波動は通常の人間には作用しないが、シェリルのような超能力者がテレパシーを用いると、その念に同調して脳に作用し、性感を増幅させる性ホルモンを大量に分泌させる効果があった。シェリルの人並み外れて鋭敏な知覚を利用したシャドウの罠である。
 そんなこととは露知らず、シェリルは超能力をフルに発揮して、部屋の中を覗きはじめた。自分ではまだはっきりと気づいていないが、淫導波を浴びて、全身に妖しい痺れが生じはじめていた。
 部屋の中では更に淫らな光景が展開されている。
 『どうだ、ここが気持ちいいんだろ』
 地下鉄でシェリルに悪戯した中年の男が、偽シェリルのパンティに手を入れて淫らに動かしながら言う。
 『おっぱいが敏感なの知ってるんだぜ』
 別の男はそう言って、豊かな乳房にしゃぶりつく。いやらしく舌を使って、ぺろぺろと乳首を刺激する。
 『ああっ、たまらない』
 偽シェリルは桜色に染まった女体をくねらせ、艶めかしい嬌声を発しつつ男たちの愛撫を受けている。
 そんな淫蕩な光景にいつしかシェリルは引き込まれていった。ドアに身をもたせかけて透視を続けながら、知らず知らずのうちに片足を浮かせてスカートの中で内腿を淫らに擦り合わせ、すらりと美しい脚線を緩やかに、そして時折小刻みに動かしてしまう。
 部屋の中では高校生が偽シェリルの耳元でささやいている。
 『知ってるんだよ。お姉さん、電車の中でイッたでしょ』
 そんな言葉も、次第にシェリルは自分自身に向かって発せられているような錯覚に陥る。
 (違う、わたしは……わたしは……)
 そんな淫らな女じゃないと心の中で呟きながら、しかしシェリルは激しい衝動にかられ、左手を下腹部へと伸ばしていった。そしてその手で、スカートをたくし上げ、パンティ越しに秘部を刺激しはじめた。
 白い精緻なレースの上にしなやかな細い指を這わせ、指先で秘肉を探りあて、回転するような動きで、官能をつむぎ出してゆく。途端に、パンティに淫玉を入れられたときの強烈な性感が女陰の奥でよみがえり、女唇からねっとりと花蜜が溢れてパンティのクロッチ部を濡らす。女の媚香が辺りに漂ってゆく。
 『あン、シェリルをもっと気持ちよくしてっ……あの、あの玉を早くちょうだい』
 偽シェリルの声が聞こえてくる。見ているシェリルも次第に頭の中で自らの偽者に一体化していく。脳裏に浮かぶ光景が、本当に透視なのか、それとも自分の想像なのか、だんだん区別がつかなくなってくる。
 『へへ、これが欲しいのかよ』
 地下鉄でシャドウがのり移っていた男が、ポケットからピンクの玉を取り出し、偽シェリルの乳房に押しつける。
 『ああっ、身体がとろけそう』
 偽シェリルが全身を震わせて、身悶えする。
 その感覚がシェリルにも伝染して、淫玉がもたらす危険な快楽が急速によみがえってきた。それとともにS.T.S隊員としての冷静沈着な思考は麻痺し、シェリルは何も考えられなくなってゆく。
 いつしかシェリルは指戯を中断し、淫玉の入った腰のホルダーへと左手を伸ばしていた。ボタンを探ってホルダーの蓋を開くと、ゆっくりとその中へ手を差し入れる。伸ばした指で禁断の玉に触れた途端、女の芯にキューンと淫靡な感覚が走った。
 『そら、お前の大好きな玉をやろう、自分で楽しんでみろよ』
 男が偽シェリルに淫玉を手渡した。偽シェリルは玉を指でつまみ、乳房や首筋を玉でなぞったかと思うとやがてそれを唇に当て、ちろりと舌を覗かせて玉を舐め上げる。
 透視しているシェリルも操られるかのように、偽者の動きに合わせ、自らの身体へピンクの玉を這わせてゆく。瞳を閉ざしたまま眉根を寄せ、悩ましい表情で淫らな行為に没頭する。スーツ越しに乳首に玉を押しつけ、肩先から首筋を玉でなぞり、そして美しい朱唇に玉を当て、ためらいがちに舐めてゆく。
 「あンっ」
 舌をつけた瞬間、脳髄に痺れるような感覚が生じ、シェリルは思わず甘い声をもらした。声が地下の通路にかすかにこだまする。
 続いて偽シェリルは、玉を持った手を下方におろしてゆく。立ったまま身体をくねらせつつ、パンティに玉を這わせる。
 『ああっ、みんな淫らなシェリルを見てっ』
 たまらないといった様子で喘ぐ偽シェリルを、男たちが囲んで見ている。
 『ほら、早くあそこに直接当ててみろ』
 男たちに急かされ、偽シェリルは玉をパンティの中へと入れてゆく。
 偽者がする通り、同じ動きをなぞっていたシェリルも、スカートをたくし上げ、指先でパンティの縁を持ち上げて、玉を中へ滑りこませようとした。ゾクゾクと妖美な感覚が走り、淫らな期待に身体が震えた。