<4>

「……にぇ……んぅ……」
肉竿を舐め尽すと、斗貴子さんはエラに取り掛かった。大きく張った傘裏の筋を、一本一本、尖らせた舌先でなぞった。
一周すると、今度は肉竿と肉傘の間を捜すように舌先を差し込み、横に動かす。きっと彼女の本能が、カリを強く刺激する命令を出しているのだろう。
「とっ、斗貴子……」
レロレロと、ピンク色の律動に曝され、俺は目の奥で興奮の火花が散るのを知った。口が強張り"さん"を落としてしまう。
「ふぅ……ん……んふ……んん……はぁあっ」
息遣いが一際苦しげになったと思うと、斗貴子さんはムスコから舌を離した。大きく息をする彼女の目は、慣れない作業による酸欠で、霞が掛かり始めていた。
「あの、斗貴子さん。そろそろ口に含んで貰っても、大丈夫だと思う」
「そっ、そうか」
またムスコへのアイスキャンディ式愛撫を始めようとした斗貴子さんは、俺の語り掛けに、ピクリと肩を振るわせた。
「カズキ……その……」
「どうしたの?」
「もう噛まないから、目を瞑っても良いだろうか……」
冷静に考えれば、「目は瞑るぞ。良いな!」と言えば済むのに、わざわざ俺の許可を求めてくる。先ほどの事故と、霊薬と、この特殊な状況が、斗貴子さんを混乱させている証拠だ。
「瞑らないと、駄目?」
「たっ、頼むっ」
悪趣味な問いをしてしまった俺に、気高い女戦士であるはずの斗貴子さんが、縋り付くような視線を向けた。羞恥に戸惑う彼女の浮かべた涙が、俺の胸をキュンと締め付ける。
――馬鹿! 馬鹿! 馬鹿! 馬鹿! 俺の馬鹿! 泣かせてどうすんだよぉ!!
「"頼む"なんて、言う必要ない! ……ごめん斗貴子さん。いま俺、ちょっと意地悪だったかもしれない」
「あっ…………」
慌てた俺の台詞が、斗貴子さんの瞳にかかった霞を、一瞬掃ったようだ。麗人に、状況を判断する能力が戻りかかる。それと反比例して、薄らぎ始めていた頬の赤みが、一気に濃くなった。
「カズキは……エッチじゃなくてエロ……」
ぐはぁ! 言い訳の仕様がない!
「まっ、真面目に"儀式"をしてくれ! ……それと万が一、私の言動がおかしくなるとしたら、それらはすべて霊薬のせいだからな!」
「おっ、俺の言動が怪しくなるのも薬のせい……にはしません。ゴメンナサイ。真面目に"儀式"します」
もはや信用ゼロな俺の宣誓に、斗貴子さんは第一次反抗期を迎えた幼児みたいな膨れっ面を見せた。それでも彼女は、二、三度深呼吸して気持ちを落ち着かせると、"儀式"続行の意思を示す。
俺のムスコ、反省の意思などどこ吹く風で直立している肉槍の先端を、もう一度軽く舌で撫でると、斗貴子さんは目を瞑り、オクチを開いた。
カトレアではなく、胡蝶蘭でもなし。
嗚呼、花に喩えるなら梅花のように儚げで清楚な斗貴子さんが、俺の本能を具現する肉塊を、ゆっくりと咥え込んでいく。
傷付けないように優しく、それでいて確り締め付けてくる口内。
濡れて吸い付き絡みつき、懸命に動く舌。
なによりも、戦士の仮面を脱ぎ捨て、一人の美少女に戻った斗貴子さんが、一心不乱に俺の怒張を頬張ってくれている姿は、視神経が焼き切れそうなほど煽情的だ。
「んふぅ……んんふ……んんっ……ぅん……」
ひと時の間、理性までかなぐり捨てる覚悟をしたのだろう。頬を真っ赤に染め、頑なに目蓋を閉じた斗貴子さんは、唇で肉竿を扱き、柔らかい舌で裏筋を激しく左右に擦る。
「すっ……凄いよ……斗貴子さん……」
 誓った舌の根も乾かぬうち、実にあっけなく、俺の顔はいやらしく惚けてしまった。鏡が無くったって、そのぐらいはっきりと分かる。
断続的に駆け上がってくる快感と、目から脳に染み込んでくる背徳感に、俺は思わずうめいてしまった。斗貴子さんを驚かせてしまったのは、前言の通り……。

『"賢者の石"を練成する第一段階として、斗貴子さんは俺の精液を飲まなければならない』とのこと。一時はどうなることかと思ったが、何とか成功しそうだ。
「んむうっ……んふぅ……んむぅうんっ!」
子猫が甘えているようにも聞こえる声を、斗貴子さんは洩らす。この人がこんな声を出すなんて、いったい誰が想像しようか!
"錬金の戦士"津村斗貴子が、揺れる髪からチラチラのぞく耳朶まで真っ赤に火照らせ、オ○ンチンをしゃぶっているなんて、直接見た者でなければ信じられないだろう。
想像する奴も、見て知っている奴も、俺一人で充分だけどな!
「と……斗貴子さんにして貰ってるから……凄く……気持ち良いよ……」
「んぅふぁ……んんぁ……んひゅんっ……」
反論したげな目で俺を見る時も、見つめ返されるのに絶えられず再び目蓋を閉じてしまった時も、斗貴子さんは口を止めなかった。
ますます硬度を増した俺の肉槍は、いまやすっかり濡れそぼっている。憧れの斗貴子さんが頭を前後に振るたび、口元からジュプジュプと音がするほどだ。
過酷な苦行を続ける美女の口内は、淫肉棒と彼女自身の涎と、俺の分泌する先走りでイッパイイッパイになっている。否、ときおり口の端からは、淫猥な混合液が、溢れてしまっていた。液は垂れ伝って斗貴子さんの顎を汚すが、彼女は懸命に耐えていた。
ちょっと眉を寄せ、苦悶の表情を浮かべながら、斗貴子さんは俺のムスコを舐めまわし続ける。羞恥で薔薇色に染まった頬が凹ませ、懸命に肉凶器を吸う。
「うっ、うあぅっ。斗貴子さん……。激しいけど……キモチイイ……」
「んっ……んっ……んふぅ! ……んっ……んんんっ!」
情け無く仰け反った声を出す俺には答えず、外観上は猥らな行為に、ひたすら斗貴子さんは没頭する。
――まさか斗貴子さん、プッツンしちゃったんじゃ……。
馬鹿な俺の考えを、脳内で弾けた火花が追い散らした。
強靭な意志を持つ斗貴子さんが、容易く"イケナイ世界"に行ってしまうはずが無い! 前置きに時間を費やし過ぎた。これは、斗貴子さんの真剣さと真面目さの現れなのだ。「"儀式"を成功させるためには、もはや形振り構っていられない」と言うことなのだ。
「んっ! んっ! んっ! んっ!」
斗貴子さんが更に加速するのに合わせて、俺の腰では何かビリビリし始めた。
あぅ! これは、そろそろ……。
「んっ……んんっ? んふぅんっ! んっ! んんっ!」
俺って酷い奴だと思う。
俺は、両手で斗貴子さんの頭を掴んでいた。されるがままだった状態から、俺も腰を前後に動かし始めた。彼女の負担が少しでも減るように……なんてのは真っ赤な嘘。唯、本能の命じるまま、欲望のままに動くだけ。
斗貴子さんは、驚いて一瞬だけ目を開けたが、すぐまた閉じてしまった。
「ごっ、ごめん斗貴子さんっ。あと少しっ。あと少しだから!」
彼女は抵抗しない。それどころか、俺の腰を掴む両手に力を入れ、更に引き寄せようとした!
「にゅん! んんっ! んぁんんっ! んにゃんんっ!」
甲高く、斗貴子さんは悲鳴のようにうめいている。
「素敵でっ……うくぅくくっ!!」
嗚呼、イマラチオ……。
俺は凶悪な肉槍で、斗貴子さんのオクチを蹂躙する。一抹の怯えを含んで懸命に蠢く舌や、頬の内側を擦りまくる。貪欲なストロークは、喉の奥にまで達するほど。
「っにゅん! んんっ! ん! ぅにゅんっ! にゅんっ! んぁんんっ!」
それでも、斗貴子さんは拒まないでくれる。
「くっ! くっ! くっ! くぁあうっ!」
「んっ! んっ! んにゅぷ! にゃんんっ!」
クイッ、クイッと……。励ますような、せがむような、斗貴子さんの手の動き。
勢い付けられた俺は、快楽の階段を全速力で駆け上がっていった。
躰が……熱い……。脳味噌が、煮えたぎるようだ……。
はちきれそうな肉槍が、ビクンビクン脈動する。
そして……。
「でっ、でるっ!!」
「んぅんんっ?!」
無意識に、俺は両手で、斗貴子さんの頭を押さえてしまっていた。左手に到っては、彼女が逃げるはずもないのに、その後頭部を押さえつけていた。
喉奥まで達していた淫肉槍の穂先から、白熱の欲液を発射っ!!
「ふんぁむ……ん……むぅううっ! んむうう……」
――今まで、こんなに出したことない……。
武藤カズキは、憧れの女性であり、命の恩人でもある斗貴子さんの口内に、ドバドバと信じ難い分量の精液を流し込む。
「んっ……むぅんんっ……んむう! んんんっ……!!!」
驚愕と窒息感に見開かれた斗貴子さんの目から、涙が零れる。白い喉が、意図せず発したのは、明らかな悲鳴……。
あまりにも大量な濃縮男汁だが、"儀式"であるため、斗貴子さんは溢れさすことも出来ない。俺の注ぎ込む欲液を、コクコク喉仏を動かして、必死に飲む。
――飲んで欲しい! 飲みきって欲しい!
「うむっ、うむっ、うむっ、うむっ、むはぁあああっ!」
やっと精液を出し終えた肉槍を俺が引き抜いた途端、斗貴子さんは絨毯上にへたり込んでしまった。突っ伏してしまわないため、広く開けた膝と膝の間に、両手を着いて……。
そんな状態でなお、口内に残る粘つきを必死に嚥下している様子は、あまりに痛々しかった。
彼女の呼吸の乱れから、首を絞めるのと同等の苦しみを、斗貴子さんに与えたのだと知れた。
気付くのが遅すぎた事実に、沸騰していた俺の脳細胞が、一気に冷却する。
「……斗貴子さん……」
我に返ると、自分の仕出かした、甚だ非道な行いに震えが走りだす。どう……しよう……。
「斗貴子さん……」
頭を垂れ、肩で息をしている麗人に声を掛けると、「察して、少しは待ちなさい」の手振りが返ってきた。
これは……怒らせちゃったな……。

呼吸を整え、口元を拭った斗貴子さんが、俺の名を呼ぶまでに、不安すぎる時間が流れた。
「…………カズキ……」
「はっ、はひ!」
「どうした? "結合の儀"を続けるぞ」
叱られないのが信じられず、斗貴子さんを見つめなおして、はっとさせられた。錬金術を識る麗人は頬ばかりか、首筋までも上気させている。
「あっ、あの、斗貴子さん。いまのは……つい本能に体を乗っ取られて……」
狼狽して、わざわざ蒸し返しを口走る俺に、斗貴子さんは唇を尖らせた。いつもの鬼気迫る雰囲気の替わりに、色っぽさを上乗せした声で窘める。
「そうだな。もう少しで溺死するところだった」
「ゴメンナサイ」
条件反射で、平身低頭する俺。こうしないなら、他にどうしろと言うのだ!
「謝るのなら、この後は本能に負けないこと。良いな」
「……はい」
頷きはしたものの……。それは"無茶な注文"って気がする。
「……無茶は……承知だ…………」
「えっ?!」
斗貴子さんは、内心を見透かされギョッとする俺を、のぼせてトロンとした目で艶やかに眺めていた。
ついさっきまで俺の肉槍を扱いていた唇が、それでもその可憐さを少しも損なっていない唇が、言葉を紡ぐ。
「言い忘れていたが……。霊薬を飲んだからと言って、"結合の儀"を行う者の全てが、一時的におかしくなる訳ではない。カズキ……キミは……そんなに私を抱きたかったのか?」

Back……後編へ続く