『ゆにこおん(前編)』
作:毒々鰻
<序>
「ううっ!」
「え? あっ、歯が当たったのか?」
思わず漏らした俺の呻き声が、斗貴子さんを驚かせてしまった。慌てて咥えていたモノから口を離し、心配そうに俺を見上げる彼女。
「すまない……。痛かった……か?」
斗貴子さんの頬が紅色なのは、先刻飲んだ薬のせいだろうか……。それとも、いま故あって"儀式"を取り行う彼女自身の姿を想像し、羞恥に頬を染めるのだろうか……。
「だっ、大丈夫だよ。その、気持ち良過ぎて、声出ちゃっただけだから……」
「……バカ………」
怒られるかもなどと思いながら事実を告げた俺を、斗貴子さんは予想通り叱る。でも普段なら、殺気を込めて冷たく睨まれるところだ。戸惑いが先に立っているのか、今の声には力が無い。
「カズキ、そう言うなら……その……ちゃんと出してくれ。私は、おっかなびっくりしてるんだぞ」
「ゴメン。なんか緊張しちゃって……」
俺達二人以外には訪れる者も無い、深夜の廃工場。
この"儀式"の為に敷かれた絨毯の上で、俺は靴を脱いで立っている。スタンスを肩幅より少し広めに取り、靴のみならず、ズボンもパンツも脱いで立っている。因みにTシャツは着たままで、学ランは羽織ったまま……。
傍から見れば、かなり滑稽な格好をしている俺の前で、いつも通りセーラー服を着込んだ斗貴子さんは膝立ちになっていた。俺の両腰に手を当てて、膝の負担を軽くしている。
左右から腰に加わる重みが、何だか斗貴子さんに縋られている様で、とても心地良い。……なんて本音を暴露したら、俺、張り倒されるかな?
今、下半身には何も穿いていないから、俺の淫肉槍は剥き出しになっている。のみならず、言い訳できないほど"元気イッパイ"に、そそり立っている。四方に置かれたランタンの光をヌラヌラと反射するのは、唾でたっぷりと濡れているから。
――斗貴子さんは、"生まれて初めて"フェラチオしてる。それも、この俺を相手にして! 痛くしないように気を付けながら、丹念に舌で包むように……。
こっそり現在の状況を胸中で文章にした俺は、その怪しい響きに改めて眩暈を覚えた。
だってそうだろ! 斗貴子さんは「必要に迫られて、やむを得ないから」と言うけれど、俺にしてみれば急転直下で、憧れの人とスゴイ事してるんだから!
「……どうした?」
「いやその……。斗貴子さん、苦しそうだから……」
いまはちょっと小休止。
初めての行為で、息苦しいのだろう。斗貴子さんは、眦に涙を溜めていた。
――まるで……俺が斗貴子さんを苛めてるみたいだな。
上手く言えないが、申し訳ないような気分と抱き締めてしまいたいような気分にかられ、思わず俺は斗貴子さんの左頬に手を当てていた。これがホントの手当なんて、駄洒落にもならないけど。彼女の苦しさを少しでも和らげたくて。
それなのに、瑞々しい頬のスベスベした感触と右掌に伝わってくる熱とで、俺はにやけてしまいそうになる。
――薬のせいかな? 斗貴子さん……。ほっぺだけじゃなくて、躰の隅々まで火照ってるんじゃ……。
「ちょっ、カズキ! いまキミ、凄くエッチな顔をしてるぞっ」
「えっ?! そ、そんなことは……ゴホンッ」
図星を指された俺は、咳払いを一つ。
「私は、真剣にっ」
「うん。"儀式"を成功させる為に、俺も頑張るから。その……続きを……良いかな……」
「もう……。これは真面目な"儀式"なんだからな」
ヤベ。促す声に、嬉しさが入り込みすぎた。
本能剥き出しな俺を疑わしげに見やりながらも、斗貴子さんはまた、おずおずと口を開く。隆々としてビクンビクン脈打つ様を曝し、黒光りしている俺のオ○ンチンに向かって……。
――斗貴子さぁぁん。エッチな顔をしないでいるのは、無理ですぅ〜。
「んっ、んん、ゅん……」
憧れの人の可愛らしい唇が、禍々しい俺のムスコを飲み込んでいく。
必死に吸引しても、小さな口に含めたのは先端から肉竿の半分まで。それでも、亀頭や大きく張ったエラへ、たどたどしく巻きつき舐め擦ろうとする舌が、くすぐったくも俺を爽やかにしていく。そのうえ窄められた唇が、肉竿を締め付けると同時に絡みつき、彼女の頭が揺れる度に俺を扱く。
羞恥に耐えかねて目蓋を閉じた斗貴子さんは、ますます頬を紅く染め、くぐもった声を漏らした。ひたすらに"戦士"として生きてきた彼女が、今は俺のペニスへ懸命にむしゃぶりついている!
「と……きこ……さん」
温かく濡れた感触が、気持ちいい……。震える舌先で竿裏を舐められると、背筋を舐め上げられたようで、情けなくも俺の声は上擦ってしまう。
夢みたいだよ斗貴子さん。ほんの一週間前……否、ここで会う約束をした今日の夕方には、こんな凄いこと想像もしなかった……。
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