『たった一つの冴えたやり方 〜可憐の場合〜』
作:お昼     


1、

「は、はあ、ああ……」
私の胸はふいごのように上下していた。唇から溢れ出す吐息は、炎のように熱い。
「あ、ああ……あああ……っ」
喉の奥から――お腹のずっと奥から溢れ出してくる声を抑えるなんて、とても出来なかった。
呼吸をするたびに、声が溢れ出して、私の耳朶を震わせる。私の体が、私自身の声に煽られて、熱く熱くなって行く。
私にはもう、何も出来ない。ただ、その熱さにうなされながら、身を焦がされるばかりだ。
「あああ、ああ、ああああ……っ」
焼け爛れて熱で潤んだ体の芯を、つっと何かが通り抜く――痺れ。
「ひゃあああっ!」
体が反り返る。
痙攣している。
頭がくらくらする。
目の前が真っ白になって、体がぶるぶる震えている。
息が、出来ない。
これが――気持ちいい、と――いう、こと――。
「……知らなかったよ。可憐がこんなに感じる娘だったなんて」
そっと私の頬を撫でる冷たい手。
私はその言葉に答える事も出来ずに、柔らかく――楽しげに目を細めている顔をぼんやりと見詰めた。
「可憐は……エッチな子だね」

エッチ……私……エッチ……?

こんなに体が熱いのに、それでもなお、顔に血がふるふると上ってくるのが分かった。
私は唇を噛んで、少しいたずらっぽく笑うその顔から、ゆっくりと顔を背ける。
「可憐……」
そんな私の顔を優しく、でも強引に振り向かせるあなた……。
優しいキスが、私の唇を塞ぐ。
その唇は、少し冷たかった。
私の唇の合間からするりと入ってくる、滑らかな唾液。

ああ……気持ちいい……。

喉を下っていく滑らかさと、唇の熱を奪うような冷たさが、心地良い……。
でも、その心地良さは、ずっとは続かない。
私の唇をついばむように吸っていたその唇が、ゆっくりと離れようとして行く。
私は慌てて――夢中になって、その唇を追った。
追って、噛み付くように触れて、唇を吸って、舌を絡ませる。絡み合う。
閉じた瞼の奥は暗く、耳朶には互いの唾液を吸って啜り合う音――唇から溢れ出し、頬を伝う唾液の湿りに、ぬるぬると絡み合う舌の感触。
舌の先と先が、唇の中で擦れて、つるりと滑るたびに、お尻の合間がきゅんと震える。

……ぞくぞくしちゃう……。

先に唇を離したのは、あなた。
肩をつかまれて、引き剥がされるように、唇が離れて行く。
ふぅっと息をついて、私を覗き込む、あなた。
「驚いた……可憐が……こんなに積極的だなんてね」
あなたの目が、熱に浮かされていた私の心に水を注ぐ。
その目は、なんだか楽しんでいるみたい……。
私はちょっと恥ずかしくなって目を伏せた。

でもね……。
可憐を……こんなにしたのは……あなたなのよ……お兄ちゃん……。

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