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縄文語のヨアケ


Jan.1.2004





明けましておめでとうございます。
今回もヤマトコトバの源流を探るべく縄文語に思いをめぐらしたいと思います。



アオの謎

古代人は、最初にどのように言葉を身につけただろうか?
まず、「アー」と、声を出すことからはじめただろう。
「ア」を基本に探っていくと、よてもよくヤマトコトバが理解できる。
空に向かって唸り声をあげれば、「アー、オー」となり、「アオ」という単語が自然に生まれる。
すると「アオ」は、もともと"晴れた日の空"を意味していた単語かも知れない。



アカの謎

"明けまして"とは"夜明け"のことで「アケ」と言う。
古代の人は、その朝焼け色を「アカ」と表現した。
その時間帯を「アサ」と呼んだ。次の朝は「アス」となる。
もしかしたら、"朝焼け"の「ヤケ」は"夜明け"が語源かも知れない。
"焼ける"の「ヤケ、ヤク」とは、夜明けの陽に空が焦がされる様子を表していたのかも知れない。
"夜更け"の「フク」は"深まる"という意味らしい。
一方、「ヒク」は後退する意味なので、"夜明け"は「ヨヒケ」のほうが正しそうだが。



アメの謎

空から水滴が降って来たら、「アメ」と呼んだ。
空は「アマ」とも呼ばれるが、「アマ」という言葉は、"天"や"海"の意味がある。
空を意味する「アオ」という語彙があったとするなら、
もともと「アマ」は"海"を指していたかも知れない。
大地の盛り上がりは「ヤマ」と呼ばれ、「アマ」と対応していたようだ。
「ヒ」は"陽"、「ヨ」は"夜"で、「ヒル」「ヨル」という。「ヤミ」という言葉もある。
「ヤマ」と「ヤミ」は似ているが、夜の山に入ることを「ヨミ」と言ったのかも知れない。
昔は、「ヨミ」に対する昼間を意味した「ヒミ」という単語があったかも知れない。
そういえば、水浴びを「アミ」と言わないか? すると「ヒミ」は日光浴のことか。
「ヤミ」は山の中で、夜の「ヨミ」に包まれたの状態のことだろう。古代人にとっては恐怖だったはずだ。



シロとクロの謎

「ヒル」と「ヨル」に関連して、夜明けや、宵闇を別の言い方で、"白む"とか、"暗い"ともいう。
"白""黒"という色の語彙につながりそうだ。
ヤマトコトバの「イロ」の語彙は「アカ、アオ、シロ、クロ」が基本のようだが、
これは、空の色が変化する様子を表していたようだ。



ソラの謎

空に浮かぶ雲は、「ク+モ」と分解すると、モウモウとした「モ」が迫って来る様子が想像できる。
天気が荒れ始める様子を「クモ」と言っていたのだろう。
「ケム」「モヤ」も同じ意味だろう。

ところで、「ソラ」は、果たして"空"の意味だったのだろうか?
同じ意味で、すでに「アマ」があるではないか?「アオ」という言い方もあったはずだ。
「ソラ」「アオ」「アマ」はどう使い分けられていたのか?

実は「ソラ」は「シロ」からの変化で、"空"ではなく"白雲"のことを指していたのではないか?
天候を意味する"空模様"とは、意味的には"雲模様"と呼んだほうが正しい。
「アオソラ」とは、"青"に"白雲"が浮かぶ様子であり、雲がなければ、ただの「アオ」なのだ。
だから、「青天」=「晴天」と呼ばれるわけだ。
昔は「アオシロ」と言っており、言い安さから「アオソラ」に変化したのだろう。
後の時代になって、ソラは"空模様"="天候"を意味するように語彙が変化したのだ。
「ソラ」に"空"の漢字が当てられてからは、"雲"の意味は薄れてしまったのであろう。



ツキの謎

ところで、"日"に対する"月"の語源は何だろう?

ヤマトコトバを話していた人々は、月をみて、どのような発想で「ツキ」と名づけたのだろうか?
「ツク」とも言うが、やはり"憑く"という意味だろうか?
海外でも"lunatic"が語源になっているし……。

しかし、机上で語呂合わせばかりしていると、真実を見誤るものだ。
初めて言語を手に入れた古代の人は、もっと単純な思いで、月に名を付けたはずだ。

思い出して欲しい。夜、月を見上げて散歩をしていると、月はどのように見えるか?
貴方の傍に、常に付き従うように見えはしないか?
そう、"月"は、「付いて来る」が語源であることが容易に理解できるのである。
古代人のつもりになって考えれば、答えをみつけるのは簡単である。

夜が本当に闇の世界だったころ、明かりとなる月は、心強い味方であったに違いない。
ちなみに、名を付けるというのは、自分の支配下に置くという意味も、持ち合わせている。
そうして、月に「ツキ」と名付けたのだろう。

同じように、ヤマトコトバを話していた太古の昔では、狩猟や戦いで、仲間が必要なときに、
「ナ ワ ニ ツク カ?(汝、我に付くか?)」などと会話をしていたことが想像される。
「ナ」は、"汝"であり、相手を指す。また"名"を尋ねる意味もある。相手が大勢なら「ミナ」となる。
時代劇で、泥棒が捕まった時に「なわにつけ!」と言うのは、縄で縛るという意味ではなく、
「御奉行様に従え!」と言っていたのである。誰も知らなかったと思うが。私も驚いた。
よく考えたら「縄につけ」って変な日本語だよね。



タチツテトの謎

「タ」は稲作伝来前は"田"の意味ではありえない。
"岳""滝""棚""谷"の「タケ」「タキ」「タナ」「タニ」など高さを感じる場所を意味しているようだ。
「チ」は"地"を表すという解釈で間違いないようだ。
「ツ」は、それ自体で、船着場などの意味があるらしい。仲間が集合する場所の意味のようだ。
「テ」は"手"であろうが、地理的な方位の意味も表しているように思う。
上手、下手、右手、左手、が方向も意味するように。
「ト」は、そこに留まる、人が立つ様子を表してるようだ。
「タチツテト」は、土地にまつわる意味が含まれているようである。
「トテチテタ」と聞くと、大地を踏みしめて歩を進めたくなるのはそのためである。
大日本帝国陸軍は、言霊を駆使して歩兵を指揮していたのだ。



今日のマトメ

ここまでの基本的な自然現象を表す言葉を並べてみてみよう。
2音節以内で、ほとんどの語彙が言い表されていることがわかる。
太古のヤマトコトバの音節の少なさをみても、言語としての歴史の古さが伺える。

横は一音節目の音、縦は二音節目の音。
aiu
eo
ksnmyr
aiu
eo
アオアケ
アカ
アサ
アス
アマ
アミ
アメ
ウミ
イロ
kクモ
ケム
クロ
sシロ
ソラ
t



タキ
タケ
ツキ
ツク
タナ
タニ
n
hフク
ヒク
ヒミヒル
mミナモヤ
y
ヤケ
ヤク
ヤマ
ヤミ
ヨミ
ヨル
w

これらの音節はさらに分解され、一音節でひとつの意味があったのではないかと考えられる。



ラリルレロの謎

表を見てもわかるように、ヤマトコトバには「ラリルレロ」で始まる言葉が無い。
「ラリルレロ」は、昔から助動詞としてキープされており、他の語句と混同を防いでいたのかもしれない。
どうも動詞+助動詞という文法は、ヤマトコトバ形成時期から存在したようである。
「イロ」や「ヒル」には動詞として活用があったのだろうか?
"昼"に日食が起きた時には、シャーマンは太陽に向かって「ヒレヨ」とか命令したのだろう。
しかし、あまり日食の頻度が少なかったために、活用が忘れられたのだ。



なお、このコラムは実在のヤマトコトバ、縄文語とは関係ありません。




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