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〜第十日目〜帰国そして
Dec.20.2003
03年11月14日
4:20am
昨晩は、ぐっすり眠れた。
もう首のコリも無くなったようだ。
チベットで買って食べ残していたバナナと栗を食べつくす。
後は、北京空港までに何らかの理由で熱が出ないことを祈るのみだ。
SARSを疑われたら出国出来ずにまずいことになりそうだから。
6:20am
ロビーへ降りて、現地係員が迎えにくるのを待つ。
6:30am
女性の現地係員と男性ドライバーが、ベンツに乗って迎えに来る。
6:35am
ベンツに乗って、北京空港へ向かう。
朝食として弁当とミネラルウォーターをもらう。
北京の朝は曇り。朝もやというか、どんよりとガスがかかり、街は灰色に見える。
出勤に向かう人たちで、バス乗り場は長蛇の列だ。
午前の便で帰国というスケジュールなので、北京を観光する暇もなく、ベンツはひたはしるばかり。
天安門くらいは見たかったなあ。
高速道路のゲートでも見て我慢する。
もしかして、中国ぽい観光写真はこれだけかも。
7:15am
北京空港着。
空港施設税90元払う。そのとき、ちょっと荷物を持ってもらおうと現地係員に頼んだら、
すごく嫌そうな顔をされてしまう。
7:40am
搭乗手続きの後、現地係員とお別れ。
やっと満面の笑みを見せてくれた。
なんだかほんとに中国人には歓迎されてた感じがしないのだった。
7:50am
出国審査前に、健康カードを書かされる。
このときうっかり、ペンを全部スーツケースに預けてしまった事に気がつく。
手元にあるのは、シャープペンだけだ。
消せるような字じゃ問題あるかな?と思いつつも、白衣のおばさんに渡す。
とくに何も言われなかった。
8:15am
出国カードを書く。
出国カードは、いよいよシャープペンの消せるような字じゃ問題あるかな?と思っていたが、
ちょうどテーブルの上に備え付けのボールペンがあったので、それを使う。
が、書いてる途中でちょっとボールペンを置いたところ、
横から中国人のおばさんにボールペンを奪いとられてしまった。
おいおいまだ、私が書いてるだろうが!という態度を示してテーブルを叩くが、おばさんは無反応。
さすがだ……中国のおばさん……。
それを見ていた、中国人のおじさんが、なんと自分のサインペンを私に貸してくれた。
なんと親切な! おじさんにしてみれば私にサインペンを貸す義理は何も無いのに。
おじさんだって、これから出国カードを書かないといけないのに。
中国人のおじさんはとても親切だ……ありがとう。
とはいえ、私も、おじさんに悪いと思って、すこしだけ書いて、サインペンをすぐに返す。
書き残したところは、また備え付けのボールペンが空くのを待とう。
と、思ったのが、災いしたというか、ボールペンは次から次へと中国人の手に渡り、
空く気配が無い。備え付けのボールペンの数自体が少ないのだ。
一応ヒモでテーブルにくっついているが、ほとんどはもぎ取られて無くなっていたからだ。
そこにボールペンがあったことだけでも、ラッキーだったのかも知れない。
しかし、悠長なことをしている間に飛行機の搭乗時間が迫ってくる。
出国審査には長い列が出来はじめている。
ここはもうしょうがない、書き残した出国カード欄は、シャープペンで書いてしまおう。
ということで、私の出国カードは、ボールペン、サインペン、シャープペンでかかれた、
実にアヤシイ汚いものになってしまった。こんなので中国の出国審査を通るだろうか?
書き直しを言われたら、出国審査をしてる間に飛行機に乗り遅れてしまうかもしれない!
緊張しながら、列に並ぶ。
だが、審査官は、とくに気に留めた様子も無く、私は無事に審査を通過することができた。
これなら、最初からシャープペンだけでも良かったのだったろうか。
8:30am
セキュリティチェックもすませ、免税店コーナーをぶらつく。
ちなみに、中国の通貨の「元」は国外持ち出し禁止ということなので、ここで使い切る必要がある。
いろいろな噂の立つ有名なパンダチョコレートとパンダクッキーをお土産に買う。167元。
8:50am
成田行きの飛行機CA925に搭乗する。
9:20am
飛行機がゆるゆると動き出す。
道路の上を渡っているところ。
9:45am
滑走路を離陸。
空から見る中国は、今日も相変わらず厚い雲に覆われ、地上の様子を望むことはできなかった。
10:15am
すこし眠ってしまっていたようだ。
ピーナッツのおつまみが出される。
オレンジジュース飲む。
10:20am
機内食。
食欲は回復しつつあるものの、日本に帰ったら、
お茶漬けとざるそばを真っ先に食べようと画策していたので控えておく。
10:40am
機内食終わり。
1:00pm
日本列島を横断して、太平洋側へ抜けたようだ。
富士山が小さく見える。
中国人や白人が窓を覗きこみ、すごく興味を示していた。
やっぱり、日本といえば富士山なんだなあ。
こうして遠くから眺めると、わびさびを感じますな。
ちなみに、富士山の近くは乱気流が多いため、飛行機はあまり近づくことができないらしい。
富士の樹海などもあり、日本のバミューダ地帯なのである。
気安く踏み込んでゴミなど捨てていったりせぬよう。
1:30pm
成田着。ここより日本時間。
1:45pm
駐機。
窓の外にみえる空港職員は、とても勤勉そうによく働いてるように見える。
日本に帰ってきた感じがする。
飛行機を降りて入国審査へ向かう。
2:05pm
税関検査。
とても勤勉そうな職員は、私の荷物を指差し開けろというのでおとなしく見せる。
が、とくに申告するものは何もないのだった。当然、国内持込みできないモノも所持していない。
勤勉そうな職員はどことなく残念だったようだ。
今後は、もっと人を見る目を勤勉すると良いだろう。
2:15pm
宅配便で荷物を郵送してもらう。
これで帰りは手ぶらだ。らくちんだ。
2:45pm
NEXで東京へ。
3:40pm
東京駅着。
中央線に乗り換え。
4:20pm
駅のそば屋で、待望のざるそばをいただく。うまい。
4:40pm
帰宅。
8:00pm
待望の永谷園のさけ茶づけをいただく。うまい。
そして、満足のうちに今日はもう寝てしまうのだった。おつかれさまでした。
P.S.
翌日、どっと疲れのでた私は、中華料理のデリバリーを注文する。
果てしなく本末転倒のような気もするが、中国にいっておきながら、
ろくに中華料理を食べられなかったからねえ。
ほどなくして、酢豚とチャーハンが届けられる。
配達に訪れたのは、まだ若い中国人のようだ。
たどたどしい日本語で「どうも、お待たせいたしました……ご注文のお品です……ありがとうございました。」
と、定型の営業トークを笑顔でしてくれた。
……私は、その姿を見てことのほか心を揺さぶられた。
感動した!
いや、マジで。もう、この感動はどう伝えられようか。
こんなに腰の低い物腰穏やか中国人は、中国ではついぞ見られなかったものだから。
漢人を世界の中心とする中華思想に基づく文化の中で育ちながら、遠い島国にやってきて、
本来蔑むべき倭人にへつらうかのように日本式のサービスを身に着けるというのは、
並み大抵の事では出来ないのではなかろうか。時にはプライドもずいぶん傷つけられたことだろう。
そのぶん給料も良いのかもしれないが、この若者の努力を思うと、私は素直に感銘を覚えたのだった。
思わず、「これからもがんばってください。」と声をかけてしまった。
私は海外にいくときは、極力他国の文化を理解し、尊重しようと努め、学べるところは学ぼうと思っていたが、
やはり、礼儀を重んじるという日本の文化は、世界の中にあってとても居心地が良いものだと感じたのだった。
日本に住んでると忘れがちになるものだが、礼儀をつくす文化は、日本人は忘れてはいけないであろう。
と、「ラストサムライ」を観て思ったのだった。
<了>
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