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お盆のぼんはボン教のぼん


Nov.30.2003





いきなりいかがわしいタイトルで始まってしまったが、つまりはそういうことでは無いだろうか?

考えてみれば、「お盆」というのは不思議な行事である。
仏教の行事かと思っておられる方も多いと思われるが、
そもそも、先祖の「霊」をお迎えするという概念は、仏教にはない。
やはり、仏教伝来以前の日本古来に根付いていた儀式、風習のなごりなのではないかと思う。

くわえて、「ぼん」という響き。これはいったい何を表すのか?
直感的にボン教を連想してしまったとしても無理からぬことではなかろうか。
古代のボン教に、夏至あたりに先祖の霊を供養する祭りがあり、
それを「ボンの祭り」=「お盆」と言い表すようになったとしても不思議ではない。
そう仮説を立てて資料を探してはみたものの裏づけになる文献は見当たらなかったのだが。
たんなるトンデモと片付けられないフシもある。

仏教寺院を意味する印章で「卍(まんじ)」というものがあるのをご存知だろう。
サンスクリット語では「スワスティカ」という。

この卍であるが、見ての通り「左回りの卍」であるが、もうひとつ「右回りのまんじ」もある。
ナチスドイツのハーケンクロイツの元になったと言われたり言われなかったりするものだ。
実は、もともと「右回りのまんじ」が、本来の仏教の印章なのである。
その証拠が、本家本元の仏教を忠実に継承しているチベットで見ることができる。



かばんにデザインされたまんじは、まさしく「右回りのまんじ」である。けして彼らはナチではない。
ただ、そのかばんでドイツに旅行に行くことだけは避けたほうが良いと進言したいが。



右回りのまんじ」は、ポタラ宮の中にも見られる。
ちなみに、地図上で卍を寺の記号に使うのは日本だけのようである。


では、日本でおなじみの「左回りの卍」がなぜ生まれたかというと、これは話が複雑になるのであるが、
早い話、ボン教が、仏教に対抗してボン教の印章として使用したのが始まりなのである。

昔、チベットに仏教が伝来する以前には、土着信仰であるボン教がチベット一帯に広まっていた。
日本で言う神道のようなものである。山岳信仰や道祖神を思わせる。
山の頂には、今もボン教のなごりだという祠もよく目に付く。



ボン教には教義というものがなかったが、後に仏教が伝わるとその論理的な体系を持つ教義に対して、
ボン教側が危機感を感じ、自分たちも教義を構築していった。
しかし、結果的にほとんど仏教の借り物にしかならなく、劣化コピーみたいな教義になってまった。
卍のマークも、仏教のそれを左右反転しただけのものになったというわけだ。
あげくに、チベットの王様が国教として仏教を採用したがために、その後ボン教は衰退していった。
後に、仏教を取り入れ再興した流派は白ボン教、古来からの自然崇拝を行う流派は黒ボン教となった。
黒ボン教というと、卍党みたいで怖い響きではあるが。

というわけで、仏教の正しい印章は「右回りのまんじ」であり、
現在の「左回りの卍」はボン教を意味するものなのである。
それぞれ、気の流れがうんぬんとか意味合いがあるが、たぶん後付だと思うので深く考える必要ないと思う。
そこで不思議なのは、なぜ、仏教とは逆の、ボン教の印章が日本まで伝来し定着してしまったのかということである。

思うに、チベットがボン教から仏教国になったのは8世紀頃だが、
仏教とボン教の接触は、もっと何百年も昔だと考えて間違いなかろう。
ボン教が「左回りの卍」を採用したのも紀元前まで遡れるかもしれない。

そもそも卍の象形自体、仏教よりはるか以前、メソポタミア文明期から存在していたのであるからして。

おそらくは、仏教の採用した「右回りのまんじ」と共に、ボン教の採用した「左回りの卍」も、
宗教儀式を司る場所の印章として、ごっちゃにシルクロード沿いに広まってしまったのではないだろうか?
日本にも、正式に仏教が伝来する以前に、ボン教とともに「左回りの卍」が伝わってきていただろう。
そしてそれが、仏教と厳密に区別されることなく、祭事の印章として定着してしまったのであろう。
仏教が、ボン教よりも先に定着していたなら、当然「右回りのまんじ」が広まっていたはずである。

仏教以前にボン教が日本にも伝播していたことは揺るぎない事実のようである。
お盆についても、仏教以前に広まっていた信仰、つまりボン教の影響が無かったとは言えないだろう。

そうすると、盆踊りのあの手や体の動きにも、ボン教の宗教観を色濃く残すものがあるのかもしれない。
古来、火を囲うように円陣を組んで呪詛を行っていたのはシャーマンであったに違いのだ。
ボン踊りには、祖先の霊を鎮めるための呪術的な意味合いがあったはずである。

あまり真に受けてもらっても困るのだが。



<続く>




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