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〜第七日目〜ラサでフリータイム
Nov.27.2003
03年11月11日
10:00am
ルームメイドが部屋を掃除しにきたので、ホテルを出発する。
今日はフリータイムだ。ビデオを回しつつ、ひとりでぶらぶらラサを見物するのだ。
まずは、ここから4km西にある西蔵博物館を見学、
その後、南を流れるラサ川を眺めながら帰ってくるという予定。
10:10am
ポタラ宮の前の道を西へ向かうわけだが、交差点を横断しなければならない。
歩行者用信号はあるのだが、青になろうが車は止まらない。
「わたれ」というより「走れ」と言わんばかりの信号。
車をぬっていそいで渡る。
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さっそく物乞いのねえちゃん登場。
しおらしい物腰が気に入って1元あげる。手を合わせて感謝してくれた。
10:20am
ポタラ宮前広場で、楽器をもって歌をうたってくる姉弟登場。
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一生懸命チベット民謡を歌ってくれたので1元ずつあげる。転げまわって喜んでくれた。
何か芸を見せてくれると、対応しやすいのである。元気でね。
10:30am
ばあさんの物乞い登場。
私としては興味の対象外であるが、あんまり貧乏くさくつきまとう姿が一芸に秀でてると判断したので1元あげる。
手を合わせて感謝される。
10:35am
おばさんの物乞い登場。
「ブルジョワブルジョワ」「アリガトウアリガトウ」などと、明らかに媚びて来たので無視してやった。
物乞いの側も、こちらが自然と喜捨できるように物乞い方を日々精進し研究すべきである。
相手に対する対応を見誤れば生き残れない世界であるぞ。
11:35am
その後はなんにもイベントは無く、きちんと舗装もされてごくありふれた街道を進み、
予定通り、西蔵博物館に到着。入場料30元。
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日本語の自動音声ガイド装置もついていて、とても近代的な造りであった。
中では、古代から近代までの石器、武具、仏具、民具、経典、タンカなど、貴重な資料が展示されていた。
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展示されていた機織機(奥)や、皮の船(手前)は、実際にいまでも使われている。
1:15pm
博物館をあとにする。
そばには立派なホテルも立っていた。
入り口には西蔵国際大飯店とある。上の中国電信は看板か?ビルを共有してるのか?
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このツアーで、フリータイムの延泊料金は1日11000円だったので、
どうせ金を出すなら、もうちょっと上乗せしてもこういうホテルで連泊したかったであると思ったのだった。
中級ホテルも安宿も建物が違うだけでサービスは変わらないと思ったのだった。
今のホテルときたら、お湯は出ないし寒いしうるさいし……そればかりか……。
1:40pm
朝食を食べてないこともあり、お腹が減ったのでレストランを探すものの、
通りには、地元民が利用する小さな食堂しかないようなので適当に入ってみる。
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言葉が通じないので「卵炒飯」と紙に書いてみせる。通じたようだ。
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まったく普通の卵炒飯。5元。70円か、安いねえ。
しかし、食欲がなく、半分しか食べられず。
食事をしていても、靴磨きが店に上がってやってくる。
1元で磨かせろというが、そんなに良い靴をはいてたわけでもないので遠慮した。
後になって、試しに磨かせてあげればよかったかと思う。
1:55pm
店を出て、ペットボトルのジュースを買う。3元。この時期でも日中はけっこう暑さを感じる。
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通りの向こうは、ラサ川だ。
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なにか記念碑がたってる。
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交番。暇そうに見える。
2:00pm
ラサ川。
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護岸工事もされて、そんなに期待するようなものでもなかった。
ホテル方向へ戻るべく、東へ向かう。
2:15pm
川のほとりで小休止。
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何かのアレか、女性の漢族が古風に着飾り、琴を奏でていた。
家族と思われる漢族の男が記念写真をとっていた。
そのわきで、チベット族の老夫婦がよりそって聞いている。
のどかな午後。
2:40pm
通りを渡ると、赤茶色の壁が道沿いに続く。
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チベット自治区政府の建物だった。
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私は、通りの横で、自分はなんの変哲も無い一人の外国人観光客として、たまたまこの道を通り、
偶然威風堂々たる建物を目にして、ちょっと記念にと、一枚写真をパチリと撮ってみましただけですよ、
というゼスチャーをして、なるべく相手に警戒心を抱かせないようにわかりやすく振舞ってみた。
にも関わらず、すかさず守衛が私の行く手をさえぎり、こっちへ来いと詰め寄ってきたではないか!
おかしい!私の挙動は完璧であり、どこにも何も不審な点は無かったはずなのに!
若き漢族のその守衛は、眼光鋭く私を睨みつけてきた。私はジャパニーズスマイルで応戦した。
が、敵もさるもの。そのような馬鹿そうなへつらい方で誤魔化そうとしても守衛の表情は微動だにしない。
私は公安に捕まるのではと、めったに無い経験にワクワクしていたところもあったが、
ここでチベット旅行でずっと愛用してきたデジタルカメラCASIO EX-S20を没収されることも覚悟した。
しかし、幸いにして、パスポートを見せ、日本人であることを説明しただけで、納得して開放してくれたのだった。
無論、ここで私が相手にケリなどいれて走って立ち去ろうものならば、
日本に帰国することすら危ぶまれる事態になっていたことは明白でろう。諸君も十分注意されるがよい。
ちなみに、門前に狛犬のように鎮座ましましているのは、チベットの霊獣雪山獅子であろう。
3:00pm
通りを歩くと、また先ほどと同じような門が現れた。
門の奥から3人の衛兵がきっちり歩調を合わせ隊列を組んで歩いてきた。
ああ、交代の時間なのだ。
交代の衛兵は、門前の衛兵と向き合い、銃を手渡し敬礼をしていた。
その様子を伺っていると、またもや脇から守衛が出てきて私を睨みつけてきた。
写真も撮ってないし、ただ見物していただけなのに!
衛兵の交代は西洋ではすっかり観光の一部であるよ。という理屈は中国では通じないようである。
私はすごすごと退散した。
3:10pm
通りの角を曲がると、もうポタラ宮が見えてきた。
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3:20pm
ホテルに戻る。
フロントからカードキーをもらって部屋へ。
カードキーを部屋のドアノブに挿すが、開かない。
開かねえよ!
フロアの従業員に言うと、合鍵で開けてくれた。
どうなってるんですかね。このホテルは。
4:50pm
ひとやすみした後、ふたたび外出。今度は旧市街へ。
5:05pm
焼き栗を買う。5元。
食欲が無いのをカバーすべく、歩きながら少しずつ食べる。
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5:35pm
昨日に引き続き、八角街周辺をそぞろ歩く。
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チベット風のTシャツをお土産に買おうかと思っていたのだが、どうもチベットにはTシャツというものは無いらしい。
露店の衣類は、みんな厚手のセーターやジャンパー、Gパンばかりだった。
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新鮮な果物も豊富に売られていた。
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VCDを売る店。
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リヤカー一杯にに日用品を乗せている。
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野菜も売られている。白い帽子は、回族(イスラム教少数民族)の人。
回族の人は、ただ商売のためだけに、この地で暮らしているらしい。
チベット族との交流はほとんどないらしい。旧市街にはモスクもある。
路地を歩いていると、子供の物乞いが3人やってきた。兄弟のようだ。
手に持っていた焼き栗をわけてあげる。小さな両手のひらに一人3個ずつあげる。
とても喜んでくれた。
物乞いの子供用に、焼き栗を持ち歩くのはいいかもしれない。
というか、物乞いの子供が、本当にお金が欲しかったのかも疑問に思う。
お金でなくても、他人から物が貰えることが嬉しいのだろう。
外国人に対する接し方を、物をねだるという以外、表現方法を知らないのだと思う。
根底には、親愛の情があるに違いない。嫌われていたら石をぶつけられるだろうからだ。
もし、目の前に珍しい宇宙人が現れて、何か美味しそうなものを食べていたら、
もしくは、便利そうな小道具をもっていたら、
きっと誰だって、ちょうだいと手を伸ばすに違いないのだ。
やがて意識が上がれば、別の挨拶表現を学ぶだろう。
それが、観光客を騙すという方向にいかずに、
素直に礼儀正しい挨拶の仕方を身に着けて育って欲しいものだ。
そういう意味でも、冷たくあしらうのは、あまり良いとは思えないのだ。
5:45pm
チベット人のおばさんの屋台からバナナを買う。
相場がわからないので、1元出して何本買えるか聞くと、1元では1本も売れないという。
というわけで、3元(42円)でバナナ2本買うことに。ケチくさい客ですまんかったおばさん。
5:50pm
昨日、Iさんに教えてもらった、大通り沿いのホテルの中のインターネットカフェへいってみる。
カフェといってもお茶は出ない。なら、カフェじゃないって。ごもっとも。
看板があるようにも見えない。知らなければ気づかずに通り過ぎてしまう。
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8畳くらいの小部屋に、6台ほどのウインドウズPCが動いていた。
東洋人、白人旅行者が利用していた。料金は1時間5元が基本。20分利用で2元だった。
地元の人も利用して、チベット問題を知ることが出来るのだろうか?
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6:10pm
ホテルへ戻る。
フロントでカードキーを受け取るが、やっぱり、部屋の鍵が開かない。
開かねえんだよ!
6:50pm
フロントに文句を言うが、他の客の応対で待たされる。
さんざん待たされた後、やっぱりフロアの従業員に合鍵で開けてもらう。
後でわかったが、フロントが、カードキーの部屋番号の設定を忘れていたらしい。
部屋に入ると、妙に寒い。
と、思ったら閉めたはずの窓が開いている。
ドアは開かないし、窓は開けっ放し。何かのいやがらせか?
なんとかならんもんかね。このホテルは。
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今日の夜食。
焼き栗、ビスケット、ピーナッツ、ジュース、お茶。
いよいよ仙人のような食生活に。
そしてこの後、私は、チベット旅行史上最悪の夜を迎えることになるのであった。
<続く>
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