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〜六日目〜ラサ市内観光


Nov.24.2003





03年11月10日
9:10am

今日は、ツアーのしめくくり、ラサの市内観光である。

基本的にツアーは今日で終わりであるが、私は後2日、ラサでフリータイムを取っている。
2日のフリータイムは、自分で旅行会社に要望したものだが、ちょっと後悔もしているのだった。
もうおなかいっぱいだから早く日本に帰りたいという気持ちと、
もっと存分にチベットを満喫したいという複雑な気分の交錯する今日この頃であった。
一番の問題は食欲がないということである。このままのペースで後2日食欲がなければ、
飢え死にするか、そのままチベット断食修行ということになってしまうのである。
はたして私はこの難関を乗り切ることができるのだろうか。



それはさておき、まずはポタラ宮観光である。ラサの中心にあるおなじみのところ。

この写真のようにポタラ宮を一望するには、ポタラ宮前の広場に行かなければいけないが、
なぜかツアーの車は広場に行かなかったので、後日フリータイムの時に撮りに行った。
細かいところに気を回さず、目的地をピンポイントで連れまわしてくれるのがツアーというものである。



ポタラ宮裏口。

ポタラ宮は、丘の上のほうにあるので、下から上るのは大変そうに見えるのだけど、
ツアー観光客は、裏手の道を車で上までいって、上から下へ降りてくることができるそうだ。らくちんだ。
チベット族の巡礼者は表の道を登ってくるので、逆方向にすれ違いつつ観光することになる。

ポタラ宮は、日本でいうと国会議事堂内を見学するような感じであるが、
中の様子は、仏像や経典がぎっしり壁に並べられていて、寺そのものの造りではある。

中の売店で、この寺でしか買えないと言う写真集を買う。
一応ISBNコードはついてるが、記念スタンプが押されている。

ちなみに、例によって寺の中は撮影禁止なのである。(撮影料金は高い。)




ポタラ宮から南側広場を見下ろす。

12:20pm

ポタラ宮観光終わり。

この後は、セラ寺と大昭寺観光が待っている。今日は忙しい。
ちなみにこれもどこの国でもそうだが、ツアーに市内観光はつきものなのである。
その国を訪れた観光客は、名所旧跡を訪れないといけない決まりになっているのである。
そのように経済は成り立っているのである。共産主義の中国でもおんなじなのである。

12:30pm

ポタラ宮横のお店で昼食。



チベット風肉うどんか?



ミルクティが出る。



お茶がなくなると、すぐにメイドがやってきてなみなみと注ぐのが作法らしく、一種のわんこそば状態。

1:00pm

公衆トイレで小用。



中は、くみとり式の仕切りのない感じのものだった。
お金(2角=約3円)が必要なのに気づかず、ガイドさんに借りる。

1:30pm

セラ寺観光。
ラサ市内から北に8kmくらいのところにある。
チベットでは珍しく(?)緑に囲まれた、静かでのどかな寺であった。



ガイドによると、年老いた僧が暮らす養老院的な施設もあるという。

2:20pm

セラ寺帰りの参道で、数人の子供に絡まれて物乞いされる。
私は、物乞いは外国人に対する挨拶というか人懐っこさの一種だと思ってるので気にはならない。
ひとりの子供が鼻血を出しててほったらかしだったので、ポケットティッシュをあげて拭いてあげる。
喜んでもらえたようだ。
子供の物乞いには、ポケットティッシュをあげるのは良いかもしれない。

2:30pm

中国銀行で両替。




2:40pm

いったんホテルへ戻る。

3:15pm

大昭寺観光。

ホテルから徒歩で5分くらい。寺は旧市街の中心にあり、車は進入禁止である。
そのかわりチベット中から集まった大勢の人々の巡礼で賑わっている。
もともと池だったのを埋め立てて寺を建てたものらしい。
住み家を奪われた池の竜神も祭られていた。



チベット中から様々な少数民族が集う所らしい。
行きかう人の民族衣装を見てるだけでも飽きない。
五体投地を繰り返す巡礼者もよく見かける。

4:25pm

大昭寺を囲む、八角街へくりだす。
上野、浅草といった風情の場所である。露店がひしめき、大変賑やかだ。



とある大きな土産物屋へ連れて行かれる。
ツアー最後に土産物屋に案内されるのは、どこの国のツアーでも定番であろう。
とりあえず、店でお茶飲みつつ一休み。
こういう観光ビジネスの中に組み込まれた店では遠慮はいらないと思う。
店主が出てきてなにやらおすすめの土産物の話をするが、軽く聞き流せばよい。

土産屋の造りはたいてい決まっていて、店先にならんでるのは、大量生産品の小物である。
中ごろには、小金を落としてくれる客向けのちょっと高価な工芸品、
奥のほうには、店の看板商品のようなものが陳列されているものである。

この店はというと、壁一面に、ちょっと良い感じのタンカ(マンダラ)の画が数十種類と壁に貼られている。
みな、お坊さんが寺の中で丁寧に一枚ずつ描いてるものだという。
主人はさかんにタンカを進めてくるが、タンカについて私は目が利かないし、
物の良し悪し、値段の相場がわからず、タンカ自体にものすごく興味があるわけでもないので遠慮した。
店主は、不満そうな私の様子をみて、さらに2階の奥の部屋へ案内した。
本当に良い物は店の奥にあったりするので期待はもてるのだが、
私はチベットのお土産というものに、あまりこれといって狙いを定めていたという物は無かったので、
この店で何かを買うというつもりはまったく無かったのであったが。

2階に上がると、骨董、仏具、高価そうな絨毯などがおかれていた。
店主は絨毯を進めてくるが、私はテーブルの上のものに目をとめた。

そこにあったのは、古そうな経典の束である。
古そうな紙に、墨で下塗りをし、金をまぜた筆で経文が書かれている。
謎めいたチベット語で書かれた経典の一枚一枚は、たちまち私を魅了したのだった。ヤバイ、欲しいかもしれない。
値段を聞くと、安いもので1枚400元。結構高い。
ガイドは、これは、100年前から12世紀くらいのものだという。
と、言われても、こちらは、にわかに真に受けるつもりはない。レプリカかもしれない。
もっとも、レプリカなら版木で印刷したもののほうが簡単ではあろうが……。

ここで、現地ガイドの説明を簡単に記しておこう。
経典の古さは、行数の多さでわかるのだという。
すなわち、7行で書かれたものは新しく、100年前のもの。
8行で書かれたものは600年前、9行では7〜800年前、11行がもっとも古く11世紀のものだという。

もっとも、その間、写経が繰り返されるであろうから、ハッキリ行数が年代と一致するとは考えにくい。
しかも経典といえば寺の宝なので、店で売られてる物となると、いろいろ流出経路も気になったりはする。
文化大革命で寺が壊されたときに、奪われたものかもしれない。
そもそも、この店自体が、漢族による、チベット文化の搾取によって成り立っており、
こういう所で、こういう土産を買うというのもなんだか後ろめたいものも感じる。

いずれにしても、資料として1枚くらい欲しいと思った私は、一番古そうな経典の値段を聞いた。
すると850元(約11900円)というので、ちょっとそれは高いなというので600元(約8400円)で交渉する。
真贋のわからないものに出せるギリギリのラインである。ちなみに経文の行数は10行だった。
店主はなにやらガイドともめている。それでは売れないというのだろう。店主は750元、700元と値段を下げてくる。
まあ、私も600元以上で買うのは冒険だな、という気分だったので、後ろ髪引かれながらも店を出ようとする。
私が2階から階段を下りてまもなく、店主は、私を必死に呼びとめ、とうとう600元まで降りてきた。

そうか、降りてきたか……。

降りてきた、ということは、私の勝ち、とも一概には言えない。
もともと、その程度(あるいはそれ以下)の価値しかないものだった可能性もあるからだ。
一番よいのは、店主に呼び止められずにその場では交渉決裂することである。
値切りに応じないのは、店側も商品に自信を持ってるという証だからである。
客側も欲しければ後日あらためて店に来て、本当の交渉はそれから、というケースが一番良い。
でも、店側としては、ここで売りたかったんでしょうねえ。

ともあれ、私も600元で買うといった手前、買わないわけにはいかないので、
代金を支払い、包んでもらった。



大きさは70cm×23.5cmもある。下の1行が擦れて9行に見えるが、よく見ると10行ある。

こちらが値切ったからといって店側は損をするわけではないので、どうどうと値切ろう。
本当に損になるなら売らないはずである。
そもそもこの経典も、真贋や入手経路はどうあれ、タダ同然で店は仕入れていると思われる。
値段なんてのは、有って無いようなもの。店と客が交渉で決めるものである。

またお茶をすすめられ、一息つくと、店主は、こちらもどうぞと、天珠をすすめてきた。
値段は200元だという。高いなあ。私は天珠についても目利きではないが、
光にかざすと、模様が表面だけに塗られてる感じで、
どうにも安っぽい大量生産品の匂いがしたので遠慮した。

ほかにも、手に持って回すマニ車は、この店では20元。
表通りの露店では35元。
ホテルの売店では15元(約210円)だった。
おそらく、ホテルの売値が基準値だろう。
露店でも、値切れば15元以下まで下がると思われる。



こんな綺麗な化粧箱入りのマニ車が15元(約210円)。やす〜。
日本では、10倍出しても買えないだろう。

5:30pm

土産物屋を出て、八角街をうろつくと、露店でチベット族のラッパの土産物が目に留まる。
店の言い値は75元。私は「40元なら買う」とカマをかけてみる。
店主が困った顔をしたので、店を離れるフリをしたら、店主は手招きして、あっさり40元に降りてきた。
やっぱり、もうちょっと値切れたかも知れなかったな。マニ車に比べて高すぎ。



帰ろうとする客を店主が引き止め、値段を下げて売りつけてくるのも、どこの国でも変わらない。
店側も、あの手この手で客を乗せて物を買わせようとしてくるものである。それがまた面白い。
こういう値切り交渉を楽しむのも、観光地では旅の醍醐味だと思う。


<続く>




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