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ラサという街
Nov.16.2003
かつて独立国だったチベットの首都ラサ、
チベット仏教の中心地であった、ポタラ宮というと、どのような印象を持たれるだろうか?
僧侶や信心深いチベット族が集う、神秘的な仏教の都というイメージを持たれる方も多いと思う。
ラサは、英字表記で"LHASA"といい、
私なんぞは思わずにやけてしまったりするわけだが、
そういうシャレも本当に不謹慎と思えるほどに、現実のラサもまた、
中国チベット自治区の首都として漢族の入植により、生活圏文化圏の圧縮を受けている。
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はじめてラサを訪れた私は、その小洒落た街並みに驚いた。
夕刻になるとカラオケスナックの歌声が深夜まで響く。 非常に煩い。
煩いといっても、読経のような文化的なものならまだしも、カラオケのだみ声なのだから。
ある程度、開発されているということは想像していたが、まさか、ここまでとは。
だって、どのガイドブックにも、こんな華やかな写真載ってないぞ!
その標高3650m。チベット高原のやや南よりの窪地にあり、周囲と隔絶されてぽつんと存在し、
富士山の頂上近くに街をつくってるようなものである。
ほとんどの物資はトラックが山を幾重も延々越えて運んでくるのであろう。
かつて、巡礼者や行商人が通ったその道なき道を整備して。
ラサの開発に、たいへんな労力を中国政府が注いでいるということは窺い知れる。
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ラサの象徴であり中心であり、かつてのチベットで歴代法王が行政と仏教を執り行っていた、
チベット族達の心のより所とも言えるポタラ宮も、今では、すっかり観光名所となっている。
そのすぐ周囲には、整備と補修の名のもとに、近代的な街並みが急ピッチで形成されつつある。
宮殿を保存するというより、包囲しようとしているかのようである。
(使用カメラ:CASIO EXILIM S20)
年々、ラサの街の姿は変化していくという。
開発が進み、インフラが整備され充実されてきている。 当然インターネットも通じている。
それを進めているのは、中国政府によるチベット自治区政府である。
政府建物は、ポタラ宮の正面真南に置かれている。
中国政府にとっては、他民族の文化など、原始的なもので、革命開放することが必要であり、
観光収入を見込める地帯以外において、古都を保存しようとするような概念など無いのであろう。
そのあたりは、京都の景観をぼろぼろにしてしまった日本と通じるものがある。
日本の場合は、自国の文化に対する無頓着ぶりが原因であろうから余計情けなくも思う。
失われた古都の景観は二度と取り戻せないし、文化も消滅していくしかない。
それを選択したのが、その文化を保有する民族であるなら仕方が無い事ではあるが。
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ラサの通りには、ご存知「冬虫夏草」を売る専門店が多い。
かつてのオリンピックでは、中国人選手が服用していたということで話題になった。
疲労回復、副腎機能を高める効能があるそうである。
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そもそも冬虫夏草の薬効を記した最も古い文献はチベット族のものだそうだ。
漢族はチベット族から知識や土地を「解放」し、人民共有の財産としたのだ。
中国政府は、自国内のチベット族を含む少数民族への人権問題、台湾問題を包み隠し、
開かれた中国を世界にアピールし続けた。
国際オリンピック委員会(IOC)は、ついに中国北京で2008年度オリンピック開催を決定した。
これで名実ともに、中国は先進国の仲間入りを果たしたと自負することになるのだろうか。
有人宇宙飛行も成功したことだし。
これまでは、ラサに入るには、空路とか長距離寝台バスくらいしかなかったが、
現在、ラサ〜ゴルムド〜その周囲の街を巡るように、鉄道建設が進められている。
2年後とも言われる完成後は、ラサへの人の往来はより容易になり、漢族の入植と開発は加速度的に進み、
チベット族の文化はどこまで踏みにじられていくのか想像もできない。
北京オリンピックが行われる2008年頃には、答えが見えてくるだろう。
チベットが外国人に開かれ、観光客も容易にチベットを訪れることが出来るようになったのはよい事だろう。
一方で、チベットに観光客が行くこと自体にも問題があるという意見もあるだろう。
今が、観光客がチベット族の文化に触れられる一番いい時であり、最後の機会なのではないかとも思う。
<続く>
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