よみがえった友情
「ルシエン、吹雪の峠越えのこと、全部話してちょうだいよ。
みんな、あんたがものすごく勇敢だったって言ってるわ。
はじめから、くわしく話してよ。 峠では、どんなだったの?」
「ええと……。 よく思い出せないな……。」
アンネットがじれったそうに言いました。
「ちゃんと話してよ。 どんな気持ちだったの? 怖かった?」
ルシエンはしばらく黙っていました。
ルシエンは、峠でのことを、面白く話したいと思いましたが、
いざ話すとなると、いったいどう言えばよいのか、わかりませんでした。
「……そうだ、アンネット、君が、前に、雪の中で凍えていたとき、
イエス様に心の中にお入りくださいってお願いしたら、
勇気を与えてくださったって話しただろう?」
「ええ、そうよ。 それで、ルシエンとも仲直りできたんだわ。
でも、どうしてそんなこと言うの? ルシエン。」
「ぼくが、とても怖くて、吹雪の峠を前に進めなかった時でも、
イエス様は、ぼくのすぐそばにいて、励ましてくれてたんだと思うんだ。」
「そうか、イエス様は、あたしにもルシエンの心の中にも来てくださったんだわ。」
「うん、イエス様の”全き愛”が、怒りも恐れも締め出したんだよ。」
「ええそうね、イエス様のおかげね。」
「イエス様のおかげさ。」
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二人は、たそがれの薄明かりの中で、熱心にこのことを話し合いました。
どちらも、暗がりの中で話す方がよかったので、
灯りをつけようともしませんでした。
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