アンネットの涙





その夜、アンネットは、ダニーを寝かしつけながら、
心の中で考えていました。

「わたしが生きているかぎり、決してルシエンを許さない。
いつか、ルシエンに恐ろしい復讐をしてやるんだわ。
絶対、許してやるもんですか。」

アンネットの心の中は、ルシエンへの憎しみでいっぱいでした。

「ぼく、ぼうチョコを食べてから寝るよ。
おねえちゃん、ぼくに歌を歌って。
"恵んでください小さい子供を"がいいな。」

「……そ、その歌は……。
ねえ、ダニー、他の歌にしない? "アビニョンの橋"はどう?」

「"アビニョンの橋"より、
"恵んでください小さい子供を"の方が好きだよぼく。」

「じゃ、いいわ。 その歌が好きなら歌ってあげるわ。」


アンネットは、ちょっとため息をついて、
ゆっくりと、少し悲しそうに歌いました。






恵んでください 小さい子どもを
今夜も まぶたを 閉じる時に

守ってください 小さい子どもを
今夜も あなたのつばさのかげに

ゆるしてください わたしのあやまち
今日の一日 いろいろの罪を

主よ けがれた小さいわたしを
素直なやさしい子にしてください








歌はとてもゆっくりでしたので、
アンネットが歌い終わる頃には、ダニーはぐっすりねむっていました。







アンネットは、おばあちゃんに教わったこの歌を、今までよく歌っていました。
歌うと幸せな気持ちになれた、おいのりの歌なのに、今は……。
自然と、涙がこみ上げてくるのです。




















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